第3回 関根史織ファンクラブ

予告

2020/10/14(水)に配信予定のsticoのライヴを視聴予定です。

正確に記すならば、青山 月見ル君想フで開催されるパラシュートセッションVol.88「stico × ヨシダダイキチ+松下敦」のこと。

こちらを視聴後、【第3回関根史織ファンクラブ】として、ライブレポートを投稿する予定です。※この記事に更新をかける(追記する)形で行う予定。(⇒10/18に更新をかけ、ライヴレポートを追加しました。)

(sticoのライヴ動画。関根嬢は、BaseBallBearでのポジションと違い、ベースではなくチャップマンスティックを操り、フロントマンとしてバンドアンサンブルをリードして演奏する。パラシュートセッション当日のsticoは、過去にもサポートギターとして参加した西田修大を迎えて編成される予定。)

ライヴレポート(前半)

※出演者の名前は敬称略(関根嬢以外)とさせて頂きました。

※[00°00'00"~00°00'00"]はおおよその演奏時間。曲名に不明なものがあったことと併わせて、レビューを書くためにも便宜的に記録しました。アーカイブス動画のタイムバーと時間表示に基づくおおよそのものです。また、曲の切り替わりも厳密には切れてないものもあり、その辺も含めて投稿者の独断によるので参考までに。

青山 月見ル君想

2020.10.14.水.

【配信】パラシュートセッションVol.88「stico × ヨシダダイキチ+松下敦」

01.stico「変な棒」[19'20"~27'04"]
sticoから演奏。sticoのアンサンブルというのは、フロントマンの関根嬢がチャップマン・スティック(以下、スティック)で演奏するリフが半分ギター、もう半分ベースと例えられる2声の旋律を反復(堆積)させながら進行していくのですが、そのリフの少しずつの変化に合わせてオータのドラムビート、tatsuのボトムベース、今回は更に上物として西田のギターが加わって発展していくというもの。

ただ、そもそも「第3の楽器」ともいうべき関根嬢のスティックが基軸になっているだけあって、それぞれの役割がところどころ入れ替わっていて、アンサンブルとしてとても面白いものになっています。

1曲目では、このようなバンドの持ち味が存分に発揮されるバンドの顔/音楽的なイントロダクションとしての内容でありつつ、ゲストの西田はいきなりポリリズムな裏メロを弾くなど、3人編成とは一味も二味も違う自由度の高さを象徴します。ワクワクするオープニングです。

02.ヨシダダイキチ+松下敦[27'04"~32'21"]
エレキシタールという楽器を主に使う演奏を聴くのは初めて。パッと聴きの第一印象としては、エレキギターに東洋的なフレーズ/エフェクトを用いたものと大差ないかと思います。

投稿者はメタルやHR/HMも好きなので、例えばメタリカのカーク・ハメットとかLOUDNESSの高崎晃さんとか、挙げればキリなく、東洋的なフレーズを用いるギタリストは多いのですが、率直に、それらのジャンルやフレージングが好きな人にも好まれるのではないかと。

しかし、よく聴いてるとわかるのですが、通常のエレキギターではここまで多声の音楽に聞こえません(奏者によってはそういう演奏する/できる人もいますが)。

主旋律の他にベースのような低音や、さらに主旋律と別のギターのような伴奏が被さっているように聞こえますよ。(たぶんベース音を担う弦だけ一本違うものを使ってるのも大きい。)←この辺は後々、シタール+ドラムスのデュオをさらに大きく、強靭に、強化していく演出になっていきます。

このような、ソロ楽器としての特徴があるシタールに、ドラムビートを合わせてデュオ演奏するというのは、本来、緊張感の極致だと思います。(割と自然に演奏して(るように見え)ますが、かなり玄人技かと。)

松下のドラムスは、ZAZEN BOYSでライヴ演奏を何度か聴いているものの、今回のよりシンプルな編成の中で、その確固たるビートがさらに鮮明に響きます。

stico側のオータと比べてドラムセット自体もかなりシンプルで、手数の多さより、洗練された確たる拍感と推進力のプレイスタイル。その緊張感は、休符ですら、しかと刻まれてるのを感じますね。

(オータは、リズム隊がtatsu、関根嬢という実質他2人もいる中で、より自由度が高く、演出的なドラミングが可能という感じ。)

これらの観点から、スティックとエレキシタールという多声を表現する楽器が中心にある2バンドを組み合わせてのセッションは、かなり的を得たキュレーションだと思います。

ミニマル/シンプルなはずの編成が大きなアンサンブルへと変貌していく様。そして、stico同様、ヨシダ+松下側でも、この後に続くセッション(今回のライヴ全体)を象徴するようなオープニングでした。

03.stico「象と話す女」(関根vo.)[32'21"~39'10"]
イントロ部分のスティックとベースのリフは、どこかKing Crimson(「Flame By Flame」などアルバム『DICIPLINE』あたり)をデフォルメしたようでもあります。

イントロに添える西田のギターは、硬質な音とピチカート奏法を使ったパーカッシブな響きでオータのドラムシンバルと共鳴しているかのよう。「弦」と「打」が交錯します。

早くも関根史織ファンとしては一つのハイライトで、関根嬢がスティックを演奏しながらヴォーカルを披露します。スティック奏者自体がレアな存在ですが、「スティック弾き語り」はBaseBallBearでもやってない新境地。ベボベファンで聴いてる人がいたら、『小出裕介さんのような立ち位置の関根史織』を目の当たりにしてる気持ちじゃないかな?

曲も歌詞も当然、小出裕介さんによるものでないはずなので、よりsticoオリジナル、関根嬢オリジナルとしての曲。BaseBallBearでは、ロック、J-ポップ、バラード、パンク、ダブ・レゲエなどの曲の様式と、歌詞の世界観/キャラに合わせたヴォーカルを披露してると思いますが、sticoでのこれは、個人的には田渕ひさ子さんのtoddle的な仄暗さと薄明を感じます。

歌詞は関根嬢なりの「エレファント・トーク」であり、「ガールズ・トップ・シークレット」という感じ。

関根嬢vo.で、スティックのフレーズがより典型的なリフワークに切り替わる反面、tatsuのベースはかなりメロディアスで、部分によってはむしろギター以上に裏メロ。西田のギターは途中、チャイナスケール的な語彙が出てくるなど、インストバンドらしい多彩な音とニュアンスが聴けます。

04.ヨシダダイキチ+松下敦[39'10"~44'19"]
再び打ち鳴らされる松下のドラムビート。松下がスティックを振り下ろすだけで、場の空気がタイトにピリッと締まる。そこにヨシダのスラー(滑らかに次の音へ繋げる技術/プリングオン・プリングオフ)が多用される東洋的なリフが加わります。

「エレキシタール使ってるから東洋的」という解釈もあるのですが、このリフ自体に休符(間)があらゆる箇所でとられており、ドラムスも含めたこの「間」(ため、一瞬の静寂)がエッセンスになっていて、クセになります。そして渋い!

この曲ではsticoからtatsuがセッションに加わっていて、「1曲ずつ交互に演奏する」というスタンダードから、早くもより自由で刺激的なコミュニケーションへ。

05.stico×ヨシダダイキチ+松下敦[44'19"~53'14"]
カメラはstico側へ向けられ、演奏が交代するのかと思いきや、ヨシダのシタールの響きが残り続けます。月の登ったアラビアンナイトを彷彿とさせるエキゾチックなムードに会場が支配されます。シタール・ザ・ワールド!このセクションはリラックスした雰囲気があり、民族音楽+環境音楽/ヒーリングミュージックのような趣でしょうか。

その後、明快な曲間が空くことなく再び高鳴り始めるシタール・サウンドは、静寂を破るかのようなコード感の太いサウンドへ。静と動、柔と剛、sticoが加わった6名でのグランド・セッションへと拡大していきます。

06.Stico〈タイトル不明〉(関根vo.)[53'14"~01°01'51"]
スティックがシンセのような音色(役割)で空間に浮遊していく、歌もの2曲目。インディ・ロックなとってもあやしい曲(笑)。病んでるイメージの歌詞が聞こえてきます。

ドラムスの細かい強弱やベースラインが、部分的にダブっぽくもあるかなと。ギター・ソロは完全に電磁波ノイズで、ほとんどシンセな出音。

07.ヨシダダイキチ+松下敦[01°01'51"~01°04'05"]
これ、実はヨシダ+松下側のオープニングにあたる02.で使っていたリフパターンに似たものへ回帰してますね。

曲間もほぼ空かずに大きなアンサンブルが続いたので、休憩前(一旦セットを切る前)のクールダウン的な意味合いも含まれるかと思います。前半セットの締めとしても、全体の構成としてもかっこいいです。

「オレたちは本気を出しきってない。まだこの後も続くぜ!」感あり。

-休憩-[01°04'05"~01°15'30"]

月見ル君想フ(お月見休憩)

ライヴ配信のライヴレポートを書いてみているので、せっかくなら、会場の【月見ル君想フ】が加えているカメラワークなどの演出についても書こうと思います。

まず、最近導入したという「クレーンカメラ」を使って出演者を頭上から狙ったアングルの演出がかっこいいです。

かつてリアルで月見ルを訪れた際に、2階から両バンドを俯瞰しつつ鑑賞した思い出がありますが、そのような空間性を引き継ぐ印象と、出演者たちへ空中から「寄る」、機械設備ならではの視点という感覚が両方得られました。

また、ライブハウスというのは、屋外フェスや大きなホール/アリーナと比べると、機能上、必然的にある程度「狭い」し、「クローズド」な空間なのですが、そこに、通常の身体感覚ではなかなか感じにくい、「大きな(広い)スケール」が与えられてるとも思いました。

カメラマンによる撮影も、出演者にかなり接近した位置や、真後ろからの撮影、あるいは、通常はオーディエンスのための客席スペースからも狙っているなど、有観客ではオーディエンスに譲る/オーディエンスの視界に入らないように遠慮するような面白いビューポイントからのショットを楽しめます。

さらに、会場内の設備照明の色彩や明度調整に加えて、画面全体をモノクロームに統一するなど、視聴の妨げにならないところを狙ってヴィジュアルエフェクトをかけてますね。

他にも、二重に映像を重ねていたり、画面のアンダースキャン(配信画面まわりの黒く見切れている部分)を利用して、砂塵や波のようなエフェクトを表示するなど、「リアル」では出来ない、配信ならではの演出を積極的に仕掛けてます。

リアルな動員が難しい状況のなかで、ただ代替としてとりあえずライヴ配信ということでなく、その会場としての配信のやり方/あり方を模索して提供してると思いました。

ライヴレポート(後半)

08.ヨシダダイキチ+松下敦[01°15'30"~01°22'25"]
後半はヨシダ+松下から。東洋的というよりもハードロックなシタールリフが中心の曲。LED ZEPPELIN'のImmigrant Song 東洋ver.(あるいは、ZAZEN BOYSのRiff Manにもこういうリフを使うセクションが一部ありますね。)インスト然としたコードが、ドラムスの刻々たる変化とシンクロしつつ、どんどん厚みのあるメロディに変わっていきます。

この曲では、西田とtatsuが演奏に加わってます。(終わり間近に少なくともこの2者が演奏に参加していると分かるカットが一瞬映る。)

カメラワークの効果もあり、ベースとギターの出音は、シタールともはや渾然一体となっていて、全部でひとつの楽器が鳴ってるかのようにも聞こえますね。トランシー。

09.stico「一人暮らし」(関根vo.)[01°22'25"~01°31'00"]
このライヴにおいて、sticoの演奏ではすべての曲に前奏が加えられています。静かな即興/コンテンポラリー風に、ポツポツと呟かれる、あるいはひそひそとささやかれるような楽器の独白から、やがて明快な旋律が描かれていくようなイメージ。ここにヨシダ+松下も加わる等、各曲の前奏だけでも、ほんとに聴きどころたくさんです。

前奏後、スティックによるイントロのリフパターンを追って、レゲエ風のギターリフが軽快に刻まれる3曲目の歌もの。

これはキーの設定やバンドアンサンブルも含めて、BaseBallBearが好きな人や、インディ的でない、いわゆるJ-POP的な歌ものを求める人にも受け入れられそうなキャッチーさがあります。基本はインストバンドなsticoですが、こうした歌ものが折々に挟まれることで、インストもさらに映えますね。

10.ヨシダダイキチ+松下敦[01°31'00"~01°41'40"]
シタールは複雑なアラベスク状のパッセージ。タイトなドラムビードと強く絡まるよう。これは東洋的というより、もっと限定して「中東的」だと思います。ヨシダの鬼気迫るシタールソロにひれ伏すしかない。

そこにtatsu、オータ、さらに西田はピアノフレーズで加わってきます。関根嬢も加わり、イントロからはもはや別世界/別次元へトリップ。ルーツ民族音楽のデュオが、現代音楽のセッションへと開花する様を体感しましょう!

11.stico[01°41'40"~01°47'15"]
今回のstico側の曲では、最も疾走感のあるもの。全体像はニューウェーブ。スティック中心のアンサンブルでニューウェーブをやるとかマジで最高。投稿者の好みとしては、今回一番好きなアレンジの曲でした。この編成でリアルで聴きたい。この編成でレコーディングしてくれ。

(ちなみに下手すると誰からも共感ゼロだと思うけど、初期のL'Arc~en~Cielがインストバンドだったらこんなだったかもなとか思ったり…。中音域が豊かで高音域と低音域を往き来してたり、ところどころ役割が入れ替わる感じとか。)

ここでスティックは、エレキギターの和音リフのような仕事もしており、西田との上物パートがツインギターのような仕上がりです。途中、ミュートぎみの弱音セクションを介して、よりオルタナティブな世界観へと広がります。参照および語彙はより広く、より豊かに鳴らされる。そして10.とは逆に、終盤ではヨシダと松下が加わってエッセンシャルな職人技。

12.ヨシダダイキチ+松下敦[01°47'15"~01°58'23"]
11.のsticoに応えるかのようなアップビート。よりスパイシーに、テイスト・オブ・インディアの香り高く。

後半プログラムでは、もはや当たり前にターン制の話はどっかいって、「stico×ヨシダダイキチ+松下敦」を実現してます。カメラワーク的には、ターン制に基づいてメインの演者側を映しているものの、ほぼ常に全員参加状態です。

途中、長いブレイクも伴う緊張感の高いキメの応酬は必見。

一旦、テンションが落ち着いてトーンダウンしてからは、stico側から演出的なフレーズが散りばめられます。シタールとドラムスの会話を聞き入りましょう。

一曲の中で、多くの表情/ドラマを見せながら、次第に高まり、最後にはシューゲイザー的な世界観へと至ります。強い解放感を伴う着地。

13.stico「沼」[1°58'23"~02°09'48"]
エンディングへ向けてのチルなムード。そして、12.のエンディングと呼応しているかのようにシューゲイザーな高まりも内包しています。中間部ではトーンダウンしてミュートぎみの繊細な音使いのセクション。

途中、スティックのリフが前半1曲目の「変な棒」と似たものになっていて、始まりへと回帰してきた感じも。ジャズ・ロック、フュージョン、シューゲイザー、それらの様式感が溶けた官能的なアンサンブルでもありす。

ところで、フロントマンの関根嬢と、バンドの中心軸ともなる楽器がスティックということもあり、そのレファレンス(あるいは先入観)としてトニー・レヴィンや、King Crimson等のプログレにまず行き着く場合が多いと思います。

その一方、sticoというバンドがそのようなプログレ志向かというと、違っていて(部分的にはそういう時もありますが)、より広大な視野で、なんでもやるぞというバンドだと思いました。

既存のジャンル名などでは、とても包括しきれないイメージの音楽を、一度のライヴで一気に表現してる。

14.ヨシダダイキチ+松下敦[02°09'48"~02°15'31"]
13.の余韻からヨシダのシタール、松下のドラムスがフェードインして、エンディングを迎えたかに思えた13.が再び蘇るような演出。13.14.は大きな1曲のセッションと捉える方が相応しいかもしれません(約15分)。この曲はチルではないですが、stico側は13.からのアンサンブルを引き継いでるような印象。ラストに相応しいエモーショナルなエンディングを迎えます。

(会場の【月見ル君想フ】店長さんのtwitterアカウントから引用。ヨシダダイキチさんと関根嬢。)

(こちらは「パラシュートセッション」のtwitterアカウントから引用。出演者の揃ったもの。改めて豪華な共演。)

※青山月見ル君想フでは、いわゆる「投げ銭」(カンパ)による支援を募っており、任意の金額(¥500~)を投げ銭できます。(投稿者も微力ながら支援しました。)

このようなライヴ配信が実現するのは、出演者はもちろん、視聴者、そして間に入っている主催者や会場スタッフあってのこと。もちろん、+αの支払いについては、それぞれの考え方で良いと思います。協力できる状況や、やり方を選びつつ、盛り上げていきましょう!

(月見ル君想フから「デジタルカードの購入」という形で支援ができます。)

(最近開設されたsticoのHP)

投稿者だより

改めて断るまでもなく、この【関根史織ファンクラブ】シリーズは、1ファンが勝手にそういうタイトルを冠しているだけのものであり、ご本人や関係者とは(残念ながら)繋がりはないアンオフィシャルなものです。あたかも、そのようなファンクラブが存在しており、いわばその「会報」のような感覚で読める記事として投稿をすれば、同じ関根史織さんのファンにとっては興味が持てたり、面白いと思えるものになるんじゃないかという筆者の願望・アイデアに基づいています。

で、、、実は、前回の【第2回 関根史織ファンクラブ】の時点で、関根嬢が出演しているライヴを聴きに行く予定があり、その後ライヴレポートを投稿しようという計画がありました。具体的には、the pillowsのフロントマンとしても有名な山中さわおさんのソロ名義ツアー【ELPIS TOUR】(日程によって関根嬢がサポートベースとして参加)でした。また、今年のBase Ball Bearの全国ツアーも恒例行事として聴きに行く気持ちはありました。

...が、どちらもある段階で会場へ観客動員する「リアル」なライヴは中止が決定されました。理由は、皆様もご存じの通りの状況下によるものです。

(【山中さわお】ソロアルバムリリースツアーは、残念ながら全公演中止に。サポートベースでいつもは違うベースパート弾いてる関根嬢を体験したかった。)

(2018年時点では、関根嬢はthe pillowsのサポートベースを担当している。また今年、【山中さわお】ソロツアーは実現しなかったものの、山中さわおさんが内田万里さんと【さわおとまり】名義で通販限定リリースしている「さよならマクレガー」に参加している。)

このような当初の狙いが実現しなかった中で、山中さわおさんのライヴを聴きに行こうとしていたことについて、もう少し書きます。

筆者はthe pillowsも山中さわおさんのソロライヴも過去に聴いたことがなく、音源もあまり聴いてきていないです。

しかし、そういった状況でフラっと、いきなりライヴを「まずは聴いてみる」こと(それができる状況であること)が個人的にはひとつの豊かさであり、もし仮に、行ってみたけど、あまり楽しくなかったとか、良いと思わなかったという結果だったとしても、それはそれで関根嬢がサポートベースというポジションでどんな音楽をやったかを体験することはできるし、逆にとても良い印象を受けて、the pillowsや山中さわおさんソロにも関心が高まるなら、関根嬢も含めたミュージシャン側にとっても良いことに違いないという程度のモチベーションです。

その意味で、投稿者は常に限りなく「にわか」的な感覚で音楽を聴いたり聴かなかったりしています。

文章にして何かものごとを整理して書いてしまうということは、ある意味でそのような「気軽さ」が失われてしまう(かのような)側面もあり、その意味でも尚のこと、リアルでフラっとライヴ/コンサートへ行く行為は尊いものだなと思います。

レビューにせよ、ライヴレポートにせよ、ファン同士の交流や普段は意思疏通が全くない人たちが持つ共感や共通認識にせよ、そしてもちろん、普段は直接関わりのないミュージシャン側への共感も、それらは、まず「その場」「その演奏」「その音楽」があってのものだと思います。

さて、2020年以降、日本だけでなく世界的に感染症の対策下にあり、リアルのライヴの代替手段、あるいは新しい形式としてのライヴ配信を多くのミュージシャン/アーティストが行っています。

今回、sticoの参加するパラシュートセッションシリーズは過去に一度だけリアルで鑑賞したことがあり、オオルタイチ+ウタモ×吉田ヨウヘイgroupでした。(この時、吉田ヨウヘイgroupに所属していた西田修大のギターを、今回はsticoで聴くというのもまた楽しみなところです。※ちなみに過去にsticoへゲストギターで参加していた時、一度聴いてます。)

(西田修大は、インストバンド「Ortance」のギターの他、君島大空、中村佳穂、安藤裕子、ものんくる、など多数のミュージシャンと共演しており、映画「ザ・ファブル」劇伴にも参加している。)

パラシュートセッションでは、通常の「対バン」とは違い、どちらかのバンドが演奏した後に転換(機材等の入れ換え)があって、次のバンドが演奏を行うのではなく、最初からどちらのバンドにも、機材等がセッティングされており、1曲ずつ交互に演奏を行うなど、可能な限りリアルタイム/アクチュアルな出演者たちのコミュニケーションを目の当たりにでき、その意味で刺激的なものになります。

sticoとセッションするヨシダダイキチは、投稿者も初めてライヴ視聴することになりますが、民族楽器シタールの奏者です。海外での音源リリースや海外公演、いくつかのバンド結成といったキャリアがあり、世界的に活躍されています。そして松下敦はZAZEN BOYS、Buffalo Daughterで有名なドラマー。ZAZEN BOYSで何度か聴いてますが、ストイックかつフィジカル、正確で骨太なその印象は、まるで野武士のようなです。このような音楽界の前衛で活躍しているミュージシャン2人の共演、そしてsticoとのセッションという前情報だけでも、ワクワクしますね。

(ヨシダダイキチはインドでシタールについて学んだ後、国内外で数々の演奏や録音を実現しています。※この辺の詳細は公式のプロフィールから。)

(ZAZEN BOYSから放たれるキレキレでバキバキな演奏は定評がありますが、Buffalo Daughterではまた違うアンサンブルの中のドラミング。ヨシダダイキチとの演奏ではどんなプレイを聴かせてくれるのか。期待。)

また、会場の青山月見ル君想フ側でも、ごく最近、クレーンカメラを導入しているなど、配信ライヴを想定しての新しい試み/バックアップ体制を整えています。その上でのライヴ、楽しみですね。

長くなりましたが、【第3回 関根史織ファンクラブ】をわざわざ[予告編]からアップしてみるのは、以上のような状況・心境の中での試みです。新しいライヴ形式に対して、新しいファン側のリアクション(新しいファン側の鑑賞スタイル)のきっかけになればと思います。

他の関根嬢ファンの皆々様におかれましても、健康で豊かな音楽生活を楽しまれることをお祈りします。

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