息を呑む映像美と剥き出しの感情と。(『I Told Sunset About You』感想)
この作品を賛美する言葉は、きっとたくさんあると思います。
青春の爽やかさも、エモーショナルな感情も、エロティックな淫靡さも、温かな笑いも、絵画のような美しさも、存在感のある音楽も――すべてを一皿に載せて一続きに流れるように表現している、私はそんな作品だと感じました。
美しさの中に息づく生身の感情
全5話で正味6時間半……基本、美しい画面しかありません!
どのシーンも、構図、光の陰影、家具や小物の配置、洋服の色に至るまですべてに神経が張り巡らされていて、どこをどう切り取っても一幅の絵のような美しさ。
部屋も店も街も教室も海も、本当に全部が美しい。
その中で、テーとオーエウが後半になるにつれ感情を爆発させてぐちゃぐちゃの泣き顔を晒すのが印象的でした。
顔中が涙と鼻水でいっぱいで、嗚咽が止まらなくて、その姿は全然美しくなんてない。
でもそこには間違いなく、生身の10代の姿が描かれていて、その対比がとても鮮烈でした。
二人の選ぶ道
1~2話の、感情の正体を自覚しないまま急速に近づいていく二人が好きです。
仲違いしていた数年間、隣にいなくても、お互いを追い続けていたんですよね。それによって、二人とも頑張り続けられた。
テーは……とてもずるい人ですね!
演劇を好きな気持ちを貫く強さがあって、努力ができて、でも時に鈍感で臆病で周囲を振り回す。
(そして歌ったらこんなに繊細できれいな歌声とか…ずるすぎる。笑)
こんな人と付き合ったら、オーエウはきっと苦労するんだろうと思います。バスと手を繋ぐシーンで心底そう思いました。きっとこの二人の方が、穏やかに長続きするんだろうな、と。
でも、そういう理屈をすべて薙ぎ倒してしまう運命の出会いであって恋なんだと、それも痛いほど伝わってきました。
タイBLドラマの引力の根源
セリフを極力排除して画だけで見せるシーンも多い本作。ストーリーラインもシンプルで、大きな事件は起こりません。
それでも退屈や間延びという言葉とは無縁で、演技力が高いことは大前提として、改めて役者さんたちの相性を思わずにはいられません。
相性が良くないといい作品にならないというわけでは決してなく、彼ら二人が作り上げる空気そのものが、作品の一部になっているんですよね。
お互いじゃないと引き出せない魅力というのが確かにあって、それが作品の大切な核の一つになっている。
そしてそれを、制作陣も深く理解して重要視している。
……タイのYドラマにはこの作品に限らずそういった作品がいくつもあって、言語や文化の壁を超えてこれほどまでに広がったのは、やはりその要素がとても大きいなと改めて深く感じました。
★2021年8月視聴
★画像 cr. LINE TV
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