お医者さん

毎月通っている病院がある。
ついでにアレルギーのお薬も出してもらう。

半年くらい前に担当医が変わった。
前の医師はいつもヘラヘラ笑っているような
顔だった。でも目は笑っていない。
本人に罪はないし中身は普通の良い医師だった。向上心のある都会人という感じ。

新しい担当医は、会うごとに〝？〟があって
不思議で気になる存在だ。

きちんとしているが、うっかりちょっと髪が
乱れていたりする。どこか抜けている
フランクで朗らかな雰囲気。
そして謙虚で上から目線ではない。
ルールは無視する時もある。
イケメンではない。

まず、患者が診察室に出入りする時
立ち上がってお辞儀をしてくれる。
素晴らしい。

そしてなんとなく洗練されていない。
ここも都会では高ポイント。

机の上は、彼ルールで置かれているのだろうが
医学書がぐちゃっと山積みになっている。
何か聞かれた時に一生懸命調べたのだろうか。

彼はとてもコミニュケーションが上手い
タイプだと思う。計算ではなくそういう人。
なんだかいつも嬉しそうだ。
いつもご機嫌さん。

何か聞きそびれたり、ちょっと不満があっても、彼がニコッとすると「まあいいか」と
どうでも良くなってしまう。憎めない人。
これって人として最強だ。

そんな風に思っていた先日
「花粉の時期も過ぎたのでアレルギー薬を
弱いものに変えたい」と相談した。

〇〇というお薬を耳鼻科では出して
もらっていたんです。と話すと

真剣だった顔をくしゃくしゃっとして
笑顔になり

「〇〇は良いですよね！僕も好きです。」
「よく飲みます。なんて言うか…良いですよね」
「なんか、美味しい？？美味しいですよね！」

身振り手振りを加え、良さを彼なりに伝えようとしていた。

ぽかーんとしてしまった笑
え、錠剤って味分かるっけ？
混乱。

なんだか分からないが、次の来院日を決めて
帰ってきた。

本当は訳のわからないことを嬉しそうに
話す彼にキュンとした。

あ、危なく恋に落ちるところだった。
私はああいう謎タイプの人に弱い。

バカなの？とは思わず
チャーミングと思ってしまう。
私もちょっとおかしいのは知ってる。

こんな楽しくて可愛くて会ったら嬉しくなる担当医がいなくなったら
私はさみしくて泣いてしまうかもしれない。

毎日、薬を飲む時に味わって飲もうと思う。