遺骨の機内持ち込み

(前回の「ご遺体の空輸搬送」の続きで今回は遺骨の機内持ち込みです。)


そもそも、「機内に遺骨は持ち込めるのか?」なんて考えたこともない方がほとんどですよね。私もこの仕事をしていなかったら、気にも留めないことだったと思います。

でも、飛行機ってただ人やモノを運ぶだけじゃないんです。
そこにはいろいろな方の「人生」も運んでいます。
ご遺体だって遺骨だって運びます。

まず全ての航空会社に確認を取ったわけでは無いのですが、基本として遺骨は手荷物として機内に持ち込めます。(JAL ANAはOK)
ご利用になられる航空会社の予約センターに電話をして確認されるのが1番確実かと思います。

遺骨の機内持ち込みにあたり、まず遺骨が入っている骨壷のサイズが機内持ち込み手荷物の規定サイズ内であること。
尚且つ、急な揺れなどで倒れたりしない安定した容器に入れられ、他の乗客への配慮からバックや風呂敷で包まれていることが必要です。
(飛行機にはいろいろな国籍やバックグラウンドをお持ちの方がいますので、骨壺に対してすべての方が好意的とは限りません。)

特に関東圏では火葬した後の遺骨を全部拾い骨壷に入れるのに対し、関西では主要な部位(足、腰、胸、腕、喉仏、頭)を拾い残りは斎場で引き取って供養するため、骨壷が関東は大きめ、関西は小さめに作られています。

そしてこの骨壷ですが、空港のエックス線検査に通らないチタンや金属類が入ったものは検査できず最悪の場合持ち込み不可となることもありますので要注意です。

次に国際線の場合についてですが、遺骨を持ち込むまたは持ち出す国によって変わるためその国の大使館や航空会社に問い合わせが必要となります。

国によりますが火葬証明書、死亡証明書、火葬許可証、埋葬許可証等の書類が必要な国もありますのでその辺は確認が必要になります。

また海外へ散骨する目的で日本から粉骨した遺骨を持ち込む場合は、念のため粉骨証明書等を英訳して持っておくと空港の検査などで粉状態の骨を不審に思われ誤解を招くような事態も防げます。

なお海外在住者で外国で亡くなられた場合、外国で火葬された遺骨を日本で納骨しようとする場合は、改葬許可申請が必要になるそうです。各自治体にある改葬許可申請書に記載をして改装許可証が発行されれば日本に遺骨を持ち込んで納骨できるそうです。


前回の「ご遺体」を日本に搬送するよりは少しハードルが下がるかと思います。

また航空会社によって空いていれば座席における場合と、頭上の棚に収納しなければいけない場合などバラバラですのでその辺りも事前確認されることをお勧めします。

今ではペットの遺骨や故人の遺骨をペンダントなど収納して身につけたりする方もいらっしゃいますよね。

16年乗務して一度だけ遺骨を機内持ち込みされたお客様がいらっしゃいました。
国際線だったので、赴任先に行かれるのでお持ち込みになられたのか、散骨のためか、ご旅行かは分かりかねますが、改めて色々な想いを抱えて乗られている方がいらっしゃるんだなぁと感じました。


これはCAに限らず、どんな職種でも言えることかも知れませんが、長くフライトしているとついお客様をすべて同じように見てしまいそうになることがあります。「飛行機の乗客」と言っても、一見旅行や一人旅のように見えるけれど、実はそうじゃないことだってあるんです。


長年連れ添ったパートナーがお亡くなりになられて、生前二人で行こうと話していたベトナムへおひとりで向かわれる方。
海外赴任中で突然の家族の訃報で、急ぎ日本へ戻るために乗っている方。
ご両親が離婚され、日本へ(ベトナムへ)帰国されるお子様。
ベトナムにいる家族を養うために日本へ出稼ぎにきたけれど、病になり余命宣告を受け、母国で最期を迎えるためにベトナムへ戻られる方。

長年、日本とベトナムの間を飛んできて、様々な人生のワンシーンを見てきました。私たち乗務員も気が付かないだけで、きっと飛行機の中にはもっと多くの方が胸にその想いを秘めて乗っていられます。


今はまだ、ベトナムは1年以上に及ぶ国際線運休で空に戻ることはできません。(国内線は復活しているので旦那さんは飛んでます)
いつか空に戻れたら、初心を忘れず、目の前の一人一人のお客様を”見て”接客していきたいなと改めて思います。

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