見出し画像

「サーキットの狼」の再来!?悲運のスーパーカー『ロータスヨーロッパS』 その2

その1

 前回は前置きだけが長くて、全く本文(本車)について書けませんでした。が、いよいよこの車について迫っていきたいと思います。

まず、最初に
このヨーロッパSとはなんなのか。果たして、「初代ロータスヨーロッパ」の再来なのか。エリーゼとどう違うのか。それらをサラッと流していきます。
まず第一に、この車は「ラグジュアリーモデル」としてリリースされました。
現在のロータスのラインナップは「エリーゼ」、「エキシージ」、「エヴォーラ」ですが、この車がリリースされた2006年時点ではまだ現行としては「エリーゼ」「エキシージ」しかありませんでした。

ロータス・エリーゼ

超軽量アルミシャーシにレスポンスの良い小排気量エンジンをマウントし、文字通り「カミソリの様な」鋭いコーナリングを「比較的安価」で実現している『ロータスエリーゼ』。現在も見かけることが一番多いでしょう。
ロータス・エキシージ

エリーゼと同じ軽量シャーシとFRPボディを使いつつ、エンジンはよりパワーのあるものに(現在は3.5LのV型6気筒スーパーチャージャーを搭載)。そのパワーをボディサイズや重量ではなく「空力」で抑えこむためにエアロパーツを装備した『ロータスエキシージ』。
エリーゼ以上にサーキットライクなこの車は、まさしく「スパルタ」でしょう。

この2台の車のより「上級モデル」としてカタログラインナップされたのが「ヨーロッパS」という車です。
コンセプトは3つ。
・想定競合車は「ポルシェボクスター・ケイマン」「アウディTT」
・「簡素な内装」のエリーゼ、エキシージの上位モデル
・スポーツカーではなく「GT(グランドツーリング)カー」


柔らかいサスのためロールが大きい

まず一つ目のコンセプト。これについては現在もよく比較にされますが、主に「新車価格」「駆動系」の2点で比較されやすく、特に「ポルシェボクスター・ケイマン」については同じMRということもあり、車雑誌でも比較されることは少なくありません。しかし、そのオチは大抵が「キャラが違う」「単純比較はできない」で締めくくられるでしょう。それらに対して新車価格670万円と、いよいよ避けられないプライスでリリース。走行性能も0-100加速で5.3-5.4秒と真っ向から対峙する形で「ヨーロッパS」はリリースされました。

LX タンレザー内装

2つ目のコンセプト内装。ご多分に漏れず、「ポルシェ」も「アウディ」も内装としては流石この価格の車だ、と多くの人々を納得させうるものになっていますが、「エリーゼ」「エキシージ」は恐らく「軽量化」の為か「簡素」というよりは「質素」な内装であり、ドリンクホルダーも無く、果てはフロアマットも無い冷たいアルミパネルに脚をつけるのは内装に拘りたいオーナーからすればマイナスポイントでしょう。それに対し、フロアマットを標準装備し、コンソール部分やトランクルームにポケットを設置。ドリンクホルダーはないものの、屋根の内張りまで全てが本皮仕様の「ヨーロッパS」の内装はまさしく「上級モデル」として相応しいと言えるでしょう。

ロータス世田谷さんのブログ
内装がキレイなLXというモデルです。
https://www.autocar.jp/specialshop/2017/03/17/211482/

エキシージと比べ柔らかい印象を持つデザイン

3つ目のコンセプト。そうこの車は厳密には「スポーツカー」ではなく、「GTカー」。つまり、サーキットでタイムをコンマ1秒を削っていく車ではなく、長距離を高速巡行する為の車(ロータスは「ビジネスグランドツアラー」と呼称)なのです。
その為、直進安定性を向上させためエリーゼよりもボディサイズ、ホイールベースを延長。また足回りのセッティングも変更され「エリーゼ」と比べて大味な乗り味に調整。より多くの人々に運転しやすいよう方向転換された乗り味は、当時のモータージャーナリスト達を唸らせました。



https://autoc-one.jp/lotus/europa/report-21620/

https://www.google.com/amp/s/www.webcg.net/articles/amp/9497

https://www.google.com/amp/s/www.webcg.net/articles/amp/10511

https://www.google.com/amp/s/www.webcg.net/articles/amp/11045

以上3つのコンセプトから「エリーゼ」「エキシージ」とは差異を持たせつつ、さりとて軽量コンパクトな「ロータスらしい」GTカーとしてリリースされました。

振り返ってみると、トヨタ製のエンジン、2006年当時ですと8000回転まで回る「トヨタ製VTEC」の異名をもつ2ZZ、現代では1.8Lながらもスーパーチャージャーを装備し220馬力を出す2ZR、そしてV6の2GRといったエンジンに対し、2Lターボながらも200馬力と控えめにも感じるGMオペル製「Z20LER」を995kgの車重にMRマウントされるこの車は、「どこか余裕を感じさせる」優雅なロータスと言えるでしょうか。

また「アルファロメオ4C」「アルピーヌA110」と現在大絶賛されている「軽量MRスポーツ」に対し、同じくエアコンを装備しながらも100kg近く軽いというのも、この車が現在でも色褪せることのないまさに「スーパーカー」と言える点でしょう。

惜しむらくはリリースされた当時は人気が無く、世界でも456台しか生産されず、日本には100台程しかないということです。生粋のロータスファンからは「重い」「面白味に欠ける」とされ、お金持ちからは「スパルタン」「上質さに欠ける」(サイドシルはエリーゼと比べ低くはなっているものの乗り降りはし辛い)とどっちつかずが結果に終わってしまった。商業的には「失敗」した車となり、ひっそりと姿を消しました。

ヨーロッパSとエヴォーラ デザイナーは同じ

同様のコンセプトで作られた「エヴォーラ」はデザイナーも同じ人物であり、まさしく後継機と言えるでしょう。キャラクターは全く違いますが、あちらは長くラインナップが続いていることから「成功した」形となるのでしょう。今後の展開に期待です。



この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?