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犬王を観ました

今日はシン・ウルトラマン観て犬王観よう!という予定だったので観てきた。本来行く予定の映画館を調べたら、観る前から満員になってしまったので、わざわざ川崎市の映画館まで来たぞ。

予告で内容は少し知ってたけど、鎌倉だったか室町だったかで、犬王ってやつと誰かがロケンロールするんだなぁ、ぐらいの事前知識しかなかった。犬王の時代背景とか申学(なんか曲に合わせて踊るやつ)の知識とかまったくありません。

えー、バカほど面白かったです。みんな今すぐ観たほうがいい。
けどな、できれば日本語字幕付の方がいいかも。というのも、ただでさえ古い言葉は耳で聞くだけでは理解しづらい上に、犬王たちの歌がたくさん登場する。歌詞とか見ずに何を歌ってるか理解するのって難しくない? そこだけちょっと後悔してます。

以下、何百字かはただのあらすじです。感想はその後。

犬王という少年は、まるで人間とは思えないほど不気味な姿で生まれ落ちる。枯れ木のように黒ずんだ肌色。足は犬のように短く、左手は顔の横に付いていてまるで耳のよう。無くなった左手の腕の部分をくっ付けたかのように長い右腕。目も口もあるべき姿にない。そんな彼は周囲から忌み嫌われ、飼い犬どもと同じように餌を与えられ生きている。

おおよそ人間らしい扱いをされなかった犬王だが、申学の才能は飛び抜けていた。今までの伝統とその形式を嘲笑うかのような舞を、彼は誰に教えられるでもなく踊ることができた。観客もいないのに、独り踊る犬王。彼の両足は急に輝き出し、なんと人間らしい両足へと変化するのだった。

友魚は壇ノ浦の村で生まれた漁師の息子である。ある日、京から来た侍が、源平合戦が終着した地である壇ノ浦に、平家が沈めた三種の神器の一つ・天叢雲剣が眠っているので引き揚げてほしいと友魚の父親に頼む。実際その天叢雲剣は存在したのだが、その鞘を抜くと光が一閃。父親は一刀両断され、友魚は目を斬られてしまう。平家の呪いである。

盲目となった友魚は、亡霊と化した父親と恨みに取り憑かれた母親に言われるがまま、平家の物語を探す旅に出る。その旅の途中で彼は同じく盲目の琵琶法師・谷一に出会う。谷一に心を寄せた友魚は琵琶の技術を教わりながら、一緒に旅を続ける。2年ほど旅をして、二人は京に行き着く。友魚も立派な琵琶法師となり、谷一の所属する一座にて、「友一」という名を頂戴するのだった。

そしてある夜、彼らは出会う。友魚が曲を奏で、犬王は踊る。彼らはあっという間に仲良くなり、親友となる。そんな二人は亡霊の声を聞くことができた。犬王の異形は平家の亡霊達が取り憑いているからだと考え、彼らを成仏してやるべく、誰も知らなかった彼らの物語を大衆で披露する。今までにない斬新さを備えた犬王と友魚の舞台は、瞬く間に都を風靡し、彼らは時代を築いていく。

あらすじ説明もここまでにして、感想らしい感想を書こう。
なんか頭を整理しときたくてあらすじ書きました。

まず、目を引く映像表現が多かった。水を含んだ白い絵の具に浸した筆で、線を引いたような雨とか、盲目の友魚が観ている世界の描き方とか、犬王の舞台を支える仕掛けの数々とか、自分好みな映像表現が多くて、見てるだけでも楽しかった。

そして音楽、友魚が奏でる音楽は当然として、作中で流れるBGMも古来の音楽様式と現代的なミュージックが融合していて、聴いててまったく飽きなかった。琵琶で鳴らす音楽とかって、ずっと聴いてると正直眠くなってくるタイプなんすけど、そういうの皆無。

犬王と友魚のスタートは、ある橋の上で始まるのだが、まるで現代のロックンロールのように琵琶・笛・太鼓を鳴らしまくる。そして犬王の舞はマイケルジャクソンのダンスようにポップなリズムを感じさせる。いやマイケルのことあんま知らんけどね。

これが京の人々にバカ受けするわけだが、最初はただ聴くのに徹する観客が、舞台を重ねるごとに手拍子を刻み、踊り狂い、自らも舞台の一部だと言わんばかりの大きな声で合いの手を入れる。観ていてこっちも参加したくなるし、犬王と友魚が認められているんだとしっかり分かる。応援上映あったら楽しいぞ〜。

「一つとして同じ舞台はない!」と彼らが豪語する通り、舞台ごとに仕掛けが一新される。ちなみに「仕掛け」ってのはミュージカルに出てくる舞台装置みたいなやつだ。これもまた面白い。個人的には金環日食すら仕掛けに組み込むという発想に度肝を抜かれた。なんか日食って昔は不吉な現象だとか言われてなかったっけ。それを舞台の照明のように扱ってしまおう!ってのが凄い、良い。

そして一新されるのは仕掛けだけでなく、音楽もだ。最初にロックンロールみたいなことするから、この形式で一世を風靡するんだと凝り固まった思考をしていたので、将軍の前で披露した舞台「竜中将」が、オペラのように美しい歌声で始まった瞬間衝撃を受けた。そうか、犬王と友魚は常に新しいものを生み出す天才なのだと漸く理解した。彼らは自分達が積み上げたものを一旦捨て、挑戦できる者たちだった。

これは個人的な印象だが、どうも犬王と友魚の作る音楽は、あの「Queen」をモチーフにしているのではと考える。だってロックで始まるし、手拍子を求める曲とか「We Will Rock You」っぽいし、「竜中将」とかもろ「Bohemian Rhapsody」じゃない? Queenのことそんな知らんけどそう思いました。

単純に五感で楽しむ映像作品として100点。そしてドラマの部分もちゃんと100点でした。湯浅監督すごいっすね。

普通の人間の道から外れた犬王と友魚が、実力で成り上がっていく過程で得られるカタルシスとか、その成り上がりを阻止したい将軍の陰謀。
なぜ犬王は呪われた姿で生まれたのか、彼の父親が所持する禍々しい仮面の正体は、全ての謎が「竜中将」の舞台を通じて解かれていく快感がたまらない。

特に、平家の亡霊の真実がとても良かった。あんま言うとネタバレになってしまう(もうほとんどネタバレしてますけど本質じゃないんで)が、グッと込み上げるものがった。

そして最後のシーン。なぜ現代から過去に遡るという表現で映画が始まったのか、無意識に記憶されていたそのシーンの意味をとうとう理解する。最後彼が無事成仏できたのは、我々視聴者が彼の物語を最後まで聴き終えたからだと思っている。平家の亡霊が、自分達の物語を知ってもらうことで成仏したように、彼もきっとそうだろう。

正直ハッピーエンドとは言えない終わり方だが、時代を鑑みるとそうならざるを得なかったのだろう。それでも犬王と友魚の物語はこの時代に継承されたわけで、悲しいけど納得できる終わり方だった。

あと、厳島神社とか実際に自分が行った場所が出てくるとさぁ、またそこに行きたくなっちゃうよね。ここで琵琶法師たちが音を奏でてたんだなぁとか想像しちゃう。

ていうかさ、金閣寺とかの有名な寺、観賞用にすんじゃなくてライブの舞台として使おうぜ。だってもったいねぇ〜〜よ〜〜。犬王があの金閣寺っぽい舞台で踊るとこ観て、昔の貴族はこんだけ良いもん観れたんだな〜って嫉妬しちゃったもん。歴史的価値とか知ったこっちゃねぇよ。

以上、犬王の感想でした。
見届けよおぉぉおおぜぇ!!!

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