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ラーメン発見伝を読んだ

最近iPadの電子書籍サイトで漫画を買って読むようになった。
「ブックライブ」というサイトなのだが、クーポンを配ってくれるのでいっぱい漫画を買ってしまう。
そんなわけでラーメン発見伝とその続編とそのまた続編を読んだのでその感想を書く。実は葬送のフリーレンも読んだ。

「ラーメン発見伝」は僕の誕生年と同じぐらいに生まれてるっぽいのでそこそこ古い漫画。ラーメン発見伝といえばラーメンハゲ。あのハゲを見たくてこの漫画を読んだが、普通にハゲ以外の部分も面白かった。

この作品は大人気グルメ漫画「トリコ」とは全く比べ物にならないぐらい緻密なグルメ漫画なのだが、ただただラーメンを食いまくり!作りまくり!するのではなく、根底には主人公・藤本浩平のラーメン職人としての成長物語があり、それを軸にラーメンの歴史・可能性・課題を展開する構成になっている。

ラーメン発見伝が特徴的なのは、ラーメンの味だけを話題にするのではなく、経営面からもラーメン店について論じてる点だ。よくラーメンハゲが『客は情報を食ってるんだ』という画像を目にするが、そういった客の心理から店の改善をする回が少なくない。なんならラーメンの味は一切変えずに店を立て直すこともある。

こういった観点からグルメ漫画を描いてるのは、自分にとって新鮮だったので面白かった。まぁそもそもグルメ漫画自体あんま読んだことないので、ラーメン発見伝特有の要素ってわけでもなさそうだが。
あと普通に作者のラーメン論とか読んでて納得するし、藤本クンとハゲのラーメンバトルは絶対に外さない面白さがあるし、人間性が終わってるクズが沢山出てくる。

主人公の藤本クンは脱サラしてラーメン屋を営むのが夢、昼は無能会社員、夜は屋台を引いてラーメン修行をしている。
ラーメンの腕前はかなりのもので、作中最強格のラーメンハゲが初見で一目置くぐらい。しかしハゲは『優秀だがプロにはなれない』と藤本クンを評する。
会社ではカス無能だが、ラーメンの腕には自信のあった藤本クンはその評価に反発するものの、心中では思わず納得してしまう。

ハゲとの対決は何度も行われ、藤本クンも段々ハゲに一矢報いるようになってくる。そんな矢先、ある出来事により藤本クンは夢だったラーメン屋を開けるほどの大金を手に入れるのだが、ハゲは『お前には本当に作りたいラーメンがないんだよ』と決定的な欠点を指摘する。
金も入って腕前もいい藤本クンだが、この思わぬ指摘で我に帰る。店を持つには自分の原点を見つけなければ。ここでようやく藤本クンの作りたいラーメンを発見する、「ラーメン発見伝」が始まるわけだ。

店も持たず、ほぼ独学、しかも本業は会社員なのにプロより美味しいラーメンを作ってしまうという藤本クンのキャラクターは、正直鼻につきそうなものだが、彼はプロに比べると経営能力に乏しいし、自分の原点も曖昧であり、腕は良いがまだまだ未熟なアマチュアというポジションだと言える。しかもラーメンの腕でさえ藤本クンを凌駕するハゲという存在が絶妙で、藤本クンを応援したいという気持ちにさせる。

そう、ラーメンハゲは本当に絶妙な存在なのだ。
ぱっと見客のことを下に見ていて(実際そうだが)、卑怯な手も惜しまない、そんなキャラクターに見えるが、彼は非常に性格が悪いだけで主人公以上にラーメンを愛するラーメンバカなのだ。ラーメンバカハゲ。
「スープの冷めた日」という神副題のついたハゲの過去話があるのだが、彼が情熱を失った前主人公であることがよく分かる。

藤本クンとハゲの決着は、ラーメン発見伝のベストバウト。
料理の腕前を比べるという本来の趣旨から外れているのでは?という疑問も少しあったが、「自分の全てを注ぎ込んだラーメン」というテーマにはカッチリハマっているし、その上でこれ以上ない決着のつき方だったので、やっぱこれがベストバウト。

そして最終話は本当に感動した。藤本クンは最後に自分がすべきこと、僕がして欲しかったことを分かってくれたし、ハゲはハゲらしい締め方をした。特に副題がキャラのセリフと読者にもかかっていて、最後のページもまた読者を意識したものだと思った。今まで読んできた漫画の中でも屈指の最終話だった。

と、ここまでがラーメン発見伝の感想
その続編、「らーめん才遊記」も全部読んだのでこっちも感想書く。
なぜラーメンの表記を変えたのだろう。

らーめん才遊記は発見伝と地続きの世界ではあるが、主人公が汐見ゆとりという女になり、ハゲの営むフードコンサルティング会社に入社するところから物語が始まる。つまりハゲは味方として登場するのだ。

この汐見という女、マジでイカれてる。
新卒設定は流石に失敗だろとしか思えないほど発言が幼稚、しかも笑えないレベルのアスペルガーだが、ラーメンの才能はハゲすら軽々と凌駕する。とにかく料理スキルにリソースを極振りしたキチガイだ。

この女がハゲの元で皆無だった経営スキルを磨いてくという感じの導入だったので、発見伝でちょこちょこフォーカスされた「ラーメン店の経営」をどっぷりやってくのがらーめん才遊記!と思ってたけど、そうだったのは序盤だけで最後の方は結局単純なラーメンバトルになっていた。よーわからん。

正直発見伝ほど熱中しなかったし、汐見というキャラがあんま好きになれなかったので微妙かも…。ハゲもそんな出んかったし。
あと、なんかやけに女ラーメン店主を推していたのは、ラーメンという文化が男性だけでなく女性にも親しまれるようになったとかそういう時勢を取り込んだものだったのだろうか。

でも最終話だけはそんな悪くなかった。あるキャラがいつ出てくるか楽しみにしていたのだが一番理想な形で出てきたし、なんかまるっと収まった感じで読後感は割と悪くなかった。

最後に今も連載中の「らーめん再遊記」。
まだ4巻しか出てないが、すでに才遊記より面白い。
なぜなら主人公がハゲだからだ。

敵キャラ、主人公の上司と来てとうとう主人公になったハゲ。タイトルに「再」とある通り、本作はハゲが再出発を図る物語だ。ハゲのおっさんが一度ラーメン業界から離れ、図書館に行ったりサウナに入ったりする。しかしなんだかんだいって頭の中ではラーメンのことばかり考えているし、次第とラーメン関係のイベントに首を突っ込んでいく。

「業界トップのカリスマ店主が地方にてラーメン無双する!」みたいな「なろう」っぽい展開で話が進むのだが、ハゲがそれをやるだけで無条件に面白くなってしまう。しかしハゲも無双したくて今の地位を捨てたわけではなく、壮大な計画のために再出発に乗り出したのだ。

ハゲが今目指している目標とは「万人に共有されるラーメンの形式」、要するに「醤油ラーメン」とか「味噌ラーメン」のような一大ジャンルに並ぶ、あるいは超えるような「???ラーメン」を生み出すことだ。豚骨ラーメンは偶然から生まれた奇跡の産物、と作中で言及があったが、そのレベルのラーメンを自分の手で作りたいというのだから、中々ロマンの溢れる目標である。

ハゲの目標が果たしてどのような形で実現されるのか、それともされないのか。その軸から読んでもこの作品は面白いが、やはりあのラーメンハゲが色々やるというのがこの作品最大のセールスポイント。ハゲが駆け出し時代のライバルと数十年振りに再開して、キャッキャ言いながらラーメンバトルしてるとことかマジで面白かった。

というわけでラーメン発見伝シリーズの感想は以上。
ありがとうございましたっ!!

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