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月光輝く『夢舞台』へ-主人公になりたがった少年の紡いだ「物語」

『三賢者』と敬人——方法は違えど歴史を紐解き、解釈していこうとする彼らに共通するのは『人間を愛し、可能性を見つける』ことでしょう。

- X「あんさんぶるスターズ!!【公式】」(@ensemble_stars)の投稿 より

追憶セレクション『クロスロード』から、紅月のクライマックスイベント『昇華*天地鳴動の晴レ舞台』を経て、最後に公式からお出しされた文章がこれだ。蓮巳さんを応援し続けてきた身としてはもう、言葉もなかった。

紅月の皆がESに来てから最初の1年。今イベントで語られたのは、その終盤「初年度・二月中旬」の出来事だ。

公式によると、2024年4月には「ES1年目のフィナーレとなるイベント」が予定されているそうだから、この【天地鳴動】がES1年目ラストの新曲イベントとなるだろう。

これまで『光明♦︎大空を仰ぐ三光鳥』『一戦!矜持示す天下布武』『悠久の鬼♦︎スカーレットハロウィン』の3つの新曲イベントを経験してきた紅月。その道程はまさに、ESにおける彼らの初イベントのタイトルにもある「温故知新」を体現するかのようなものだった。

さかのぼれば夢ノ咲学院時代へ、さらにはその始まり『クロスロード』へと繋がる紅月の物語。つまり私たちは今回、紅月の始まりと現在地を同時に見せられたことになる

それがあんまりにも嬉しすぎたので、この記事では蓮巳さんの歩んだ道のりをさっくり振り返りつつ、紅月クライマックスイベント最高だったよ……という話をしようと思います。本当に最高だったよ……ありがとう……。



『クロスロード』-書き損じた「始まり」の物語

というわけでまずはここから。

追憶セレクション『クロスロード』。
2017年のイベント『追憶*それぞれのクロスロード』がアニメ化されたものだが、非常に見やすい構成となっているため、もしストーリー未読の人がいればとりあえず視聴しておくことをおすすめする。この頃の蓮巳さんを知っているかどうかで、『天地鳴動』に向き合う紅月の印象がまるで違ってくるからだ。

なぜか。『クロスロード』には、蓮巳さんの加害性が詰まっている。

おまえはここの連中を見下して、どうにか更正させりゃ世界は綺麗になるなんて、勘違いしてるんだろうけど。

- YouTube「第2話「Chaos」 - あんさんぶるスターズ!!追憶セレクション『クロスロード』」より書き起こし

作中で朔間零にこう指摘されたように、蓮巳さんには元来、他人に対してやや潔癖なところがある。「真面目で気難しい」彼は、ルールを破ったり授業をさぼったりする不良たち"のせい"で、夢ノ咲学院が落ちぶれてしまっているのだと憂いていた。

敬人「みんなやる気がなく、真面目にがんばっているものは正当に評価されず…… ゆっくり全体が腐敗し衰退していく、こんな現状を看過して良いわけがないだろうが」

-  (2017)あんさんぶるスターズ!『追憶*それぞれのクロスロード』イベントストーリー「クロスロード」『Crowd/第八話』 より

もちろんその考えの裏には、「頑張っている人が評価されない」現状への憤りがあったことも事実だ。それが的外れだったとは言わない。

しかし当時の彼は、現状を変えるために「不良たちを従わせて更正させる」という手段をとろうとした。それが間違いだったのだ。

悪いものを排除し、強い力で全体を抑えつけるだけでは、改革は望めない。


蓮巳さんは、子どもの頃、天才・朔間零に出会ったときのことを「あのひとがいれば、俺なんかいらない」「己の存在価値を零にしてしまう相手と出会った」と回想している。

『クロスロード』で朔間零を自分たちの旗頭にする——その計略には、彼の「自分もこの現実という物語に必要な登場人物のひとりになりたい」という切実な願いが込められていた。

-  (2017)あんさんぶるスターズ!『追憶*それぞれのクロスロード』イベントストーリー「クロスロード」『Crowd/第六話』 より

結果的に、その計略は破綻する。他ならぬ天才・朔間零の手によって。


「革命」を経て-少年は再び筆を執る

もう少しだけ、学生当時の話をしたい。

改革を成すためには、悪いものを排除するだけではいけない。『クロスロード』を経てもそのことを理解できていなかった蓮巳さんは、生徒会による革命で、最終的に朔間零までもを「五奇人」として排除することとなった。

そして、TrickStarによる二度目の革命により、今度は生徒会勢力である自分自身が排除されそうになってしまう。

- あんさんぶるスターズ!『メインストーリー』第一部「第五章 Emsemble」第百三十四話『讃歌』より

だが、そうはならなかった。それはひとえに、TrickStarの「みんなで並んで、手を繋いで歌おう」という呼びかけのためだ。彼らは、自らを押さえつける生徒会勢力や、ライバルユニットたちを誰一人排除しようとしなかった

革命が果たされたのは春。蓮巳さんは、ユニットとしての停滞を経験しながらも、生徒会副会長として、必死に学院の体制を整えるべく奔走する。「中断してた物語を描こうとする」その姿は、紅月のメンバーをはじめ、さまざまな人たちの心を動かした。(あんさんぶるスターズ!『躍進!夜明けを告げる維新ライブ』イベントストーリー「新撰組」『維新の鬼/第五話』 より)

生徒会として一度目の革命のシナリオを書いた蓮巳さんは、学生生活の中で、自分が傷つけた人たちと向き合い、交流を重ねていったのだった。

季節は流れ、お正月。『太神楽ライブ』で再びTrickStarと相見えた蓮巳さんは、奇想天外な「戦法」の数々に目を丸くしながら、彼らとの出会いを嬉しそうに振り返る。

敬人:(こんな連中が出てくることを、俺たちはずっと願っていた!)(硬直し、腐敗していくだけだった夢ノ咲学院で! ずっとずっと!)(貴様らを待っていた、会いたかった!)(すべてが手のひらの上なんてつまらない、新風を吹かせてくれ! 時代を前へ前へと進めてくれ!)(嬉しいなぁ、英智! 夢が叶ったぞ!

- あんさんぶるスターズ!『太神楽!祝いのニューイヤーライブ』イベントストーリー「太神楽」『希望の星/第五話』 より

新風を吹かせてくれ」。

かつてそう願った蓮巳さん。彼は学院を卒業し、ESでさまざまな物事を経験して、テレビ番組『天地鳴動』と出会う。そして今度は自分たちが「長寿番組へ新風を吹き込み、新たな歴史を刻んでいこう」と誓うのだ。


歴史の上に立つ人々

ということで、ようやくここまで来れた。

(2023)あんさんぶるスターズ!!『昇華*天地鳴動の晴レ舞台』イベントストーリー「天と地と」『天地創造/第一話』 より

鬼龍くんが素直に卑屈さを出せるところに、時の流れを感じもする。

『天地鳴動』に関わるにあたり、紅月が何をして、その結果彼らに何が起こったのか……というのは公式のあらすじが一番わかりやすいだろう。以下に引用する。

敬人たちは、そんな番組を支える『三賢者』️️——信長先生、家康先生、秀吉先生という個性豊かな人物それぞれが紡いできた物語を紐解き、よりよい番組の成立に向かって奔走します。
そして、番組と向き合ううちに、改めて紅郎や颯馬の可能性や魅力にも気づいていく敬人。

- Xアカウント「あんさんぶるスターズ!!【公式】」(@ensemble_stars)のポスト より

『三賢者』たちは皆、キャラの立った個性派ばかりだ。だからだろうか。彼らの話を聞いていると、何かを思い出す。

例えば、自らを「道を塞ぐ重石」にたとえて「決して攻略されてはやらん」としながらも、「全力で立ち塞がる儂を、若者たちが知恵と勇気で突破する未来を心から望んでいる」と話す家康先生は、『太神楽ライブ』の蓮巳さんと重なって見えないだろうか。

(2023)あんさんぶるスターズ!!『昇華*天地鳴動の晴レ舞台』イベントストーリー「天と地と」『天地明察/第二話』 より

他にもある。学生時代は「変なやつ」と煙たがられていた秀吉先生を評価し、学者として光を当てたのは家康先生だ、という話だ。夢ノ咲で浮いていた鬼龍くんや颯馬くんに出会い、アイドルの才能を見出したのは蓮巳さんだった

ただのこじ付けかもしれない。けれど、この『天地鳴動』をめぐる物語には、そんな「これってもしかして……」が沢山散りばめられている。まるで、『天地鳴動』自体が今が歴史の積み重ねでできていることの象徴みたいで、わくわくさせられる。

そんな『三賢者』たちと触れ合って「凹み、染まって変質していく」紅月は、だんだんと「らしからぬ」姿を覗かせるようになる。紅月の長所でもあり、短所でもあった、安定からの脱却だ。


主人公になりたがった少年の紡いだ「物語」

「安定」は紅月の欠点であると同時に、『天地鳴動』の最大の欠点でもあったと蓮巳さんは語る。彼はその現状を打破すべく、秀吉先生のアドバイスを受け、番組に物語性を取り入れることを決めた。

漫画家や脚本家に物語を紡いでもらい、自分たちはその愛される登場人物となる。『ばんぱいあ将軍』で朔間零とやってみせたことの延長だ。全て、蓮巳さんがアイドルになったからできたことである

だが、ストーリーはこれで終わらない。時代に合わせて柔軟に変化し続け、立派な大人になっていこうと蓮巳さんは語りかける。

紅郎「あの先生方を見習って、か?」
敬人「先生方の良いところを見習って、だな。悪いところは真似しなくていいぞ 否、清濁すべてを飲みこんで、泥のなかにて蓮は咲く そんな花々を無数に増やして、この世界をもっともっと愛すべきものにしていこう」

- (2023)あんさんぶるスターズ!!『昇華*天地鳴動の晴レ舞台』イベントストーリー「天と地と」『エピローグ』 より

力強い「否」が効いている。今の蓮巳さんはもう、悪いものは排除しなければならないと息巻いていた、あの頃の少年とは違う

まさに「泥中の蓮」だ。それが、『フラワーフェス』で花道を彩る花を「流れた血を肥料にして咲き誇る罪深い花々」と皮肉っていた自分自身をも肯定する言葉になっていることに、彼は気づいているだろうか。

彼のもつ潔癖さ、真面目さは、彼が人間の可能性を信じていることの裏返しでもあった。もっとできるはずなのに、もっと輝けるはずなのに……そんな憤りを周囲にぶつけ、時には歯向かわれ、否定されながらも、決して諦めずに己を変化させ続けてきたから今がある。それがでないならなんだろう。

ここに辿り着けたのは、紛れもなく、彼自身の功績だ。

敬人「うむ。人に歴史有りだ。そして、教科書に載らないようなそんな無数の歴史も等しく愛すべきものだ 魅力的で輝かしい、無視されるべきではない物語だ

- (2023)あんさんぶるスターズ!!『昇華*天地鳴動の晴レ舞台』イベントストーリー「天と地と」『エピローグ』 より

失敗を繰り返しながら、柔軟に成長し続けた彼の人生模様が、このような形でひとつの「物語」となったことを心から嬉しく思う。かつての蓮巳さんが焦がれた、魅力的で輝かしく、無視されるべきでない、愛すべき物語に。

『昇華*天地鳴動の晴レ舞台』、ありがとうございました。彼らの『夢舞台』に光が多くありますように。


公式による『ストーリー注目ポイント』が本当に良くて、これ以上書くことなんてあるまい……と思っていたのだけど、やっぱり書きたいことが色々あったのでnoteを開いたのだった。嬉しいなあ……本当に本当に良かったなあ……。


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