見出し画像

『Outro:Wings』でJ-HOPEさんと出会い直した

『Outro : Wings』、おまえだったのか

何の話かといえば、数年前、まだBTSさんをあまり知らなかったころ、たまたま視聴して強烈に印象に残っていた「歌声」の話である。

屋外ステージ、観客席をふたつに割るようにまっすぐ伸びた白い道。その上を、これまた白い衣装に身を包んだふたりの青年がハモりながら歩いてくる。その歌声が、本当に晴れ晴れとして、爽快で、希望あふれる歌声だったのだ。ふたりとも身体を大きく使って、全身からステージに立つ喜びがあふれていて、それが観客席に伝播しているのがわかった。たしか30秒にも満たない動画だったが、どんなメロディーだったか忘れてしまったあとも、そのとき感じた高揚感が時々よみがえってドキドキした。

きっとご存じの方も多いだろう。そのパフォーマンスこそ、2019年の『LOVE YOURSELF:SPEAK YOURSELF』で披露された、『Outro:Wings』だったのである。

『AMA2021』の『Butter』、そして『MMA2019』の『Dionusus』を経て、「BTSさんってもしや有観客ライブが主戦場なのだろうか」「BTSさんの有観客ライブを見なければならないのでは」と、違いもわからず購入したのがこのDVDだった。

まさか、それでこんな再会を果たすことになろうとは...…。

公式から出てないかなあ...…と調べてみたら、2017年の『Outro:Wings』が出てきた。件のハモリは4:30あたりから聞くことができる。こんなに小さなハコで声を張り上げていた時期もあったんだなあ。

何を隠そう、『PERMISSION TO DANCE』からBTSさんを知り始めた人間として、J-HOPEさんは本気で「ボーカル担当」だと思っていた時期があったのだ。

全員がボーカルを務める『PERMISSION TO DANCE』だが、皆さんそれぞれに歌が上手で驚く。ボーカルの皆さんは言わずもがな、掠れて甘酸っぱいナムさんの歌声も味わい深いし、ユンギさんの歌声も渋くてちょっとワルでかっこいい。

ただ、当時はメンバーの顔の見分けがつかなかった。JINさんの顔しかわからなかった。だから「7人ともちゃんと違う声に聞こえるなんてすごいなあ」なんて思っていた。「このノンブレスのボーカルお兄さんとかめっちゃええなあ」と。

わたしはこのCMがきっかけで『PERMISSION TO DANCE』を聞くに至ったから、わかった。ノンブレスのボーカルお兄さん、この人だ!

ところが他の動画を見ていてもボーカルお兄さんが見つからない。JINさんのお顔だけはわかったので、JINさんを追いかけつつ、『BU Contents』の存在を知った後はそれも追いかけつつ、ようやく「昔のMVでよく寝てる人=ホソクさん」という認識が定着することになる。

同時期リリースということで、もちろん『Butter』もよく聞いていた。実は最後まで顔が見分けられなかったのが、まさにユンギさんとJ-HOPEさんだったのだけど、ユンギさんはラップを聴けばすぐに聞き分けることができた(わりと早い段階で”Agust D”の存在を教えてもらえたことも大きかったと思う)。

ボーカルお兄さん、いないなあ...…なんか知らないラップの声もするし...…メンバーの入れ替わりがあったとか? などと勝手に落ち込んでいたが、その人こそJ-HOPEさんだったのだ。というか、そもそもホソクさんとJ-HOPEさんは同一人物だ。なんとそこからの問題であった。

まあでもこれは結びつかないかもしれない。

今となっては笑い話だが、『Outro:Wings』と再会したことで、当時のことが懐かしく思い出された。たしか初めて『PERMISSION TO DANCE』のMVを再生したのは7月だったはずだ。ワクチンの副作用で寝込んでいたとき、一日中サジェストされるままに眺めていたのがBTSさんのMVだった。その流れで『BU Contents』を知った。

8月5日、『Butter』を買いに電車に乗った。人に会う用もないのに髪を巻いて、うきうきしながら外に出た。ずっしりと重たい『Butter』の箱を抱えて、「韓国のCDってこんなに大きいのか?」と考えていたら足がもつれて転びそうになったこと。そのとき初めて、『Butter』のことで頭がいっぱいで、朝ごはんも昼ごはんも食べ忘れていたことに気づいたこと。

笑い話のつもりでそれを友達に報告したら、彼女はちゃんと笑ってくれて、そしてこう言った。「それはもう好きってことやん」。

そうか〜。

BTSさんを好きだと口に出すのが恥ずかしいと、今でもよく思う。だけどこの記事を書いた日から、自分なりに本も読んで、調べ物もして、なんとかギリギリBTSさんの作る音楽やコンテンツを楽しんでも大丈夫だと思えるように努力している、つもりだ。今感じる恥ずかしさは、当時感じていた恥ずかしさとは、種類が違う。

『SPEAK YOURSELF』のDVDを一緒に見てくれたARMYの友人は、「ARMYに資格なんていらんで、名乗り始めた瞬間からARMYやで」と言ってくれた。ただ、簡単に名乗れてしまうからこそ簡単には名乗りたくなくて、後ろめたくて、かといって今の追いかけ方もなんとなく誠実じゃない気がして、悩んでいた。

けれど、先月とうとうファンクラブに入会した。「一番好きなメンバーは誰ですか?」の設問には、「J-HOPE」と回答した。まだJ-HOPEさんのことを全然知らないし、他のメンバーについても知らないが、今ひとり上げるなら彼だなと思った。

出会いは点と点を繋げてくれる。線が引かれて初めて、「そんなところに点があったのか」と気がつくこともある。J-HOPEさんに、わたしはもう随分前に出会っていたんだなあ。

そんなことを思い出しながら、『PERMISSION TO DANCE ON STAGE – SEOUL』に沸くTLを追っていた。今回は残念ながら見られなかったが、次があったらそのときは、今の彼が歌う『Outro:Wings』を聞いてみたい。



(余談だが、『Outro:Wings』のハモリ上パートを担うジョングクさんの歌声も、楽器のようによく響くので好きだ。一時期『Still with you』を聞きすぎて耳が痛くなって、しばらくイヤホンをはめられなくなった。彼の歌声こそ生で聞いたら全然違った音圧で響くのだろうな、と思う)