見出し画像

バントは有効な戦術か?(2021ロッテ ver.)

1. はじめに

すみませんいきなりですがこのタイトル、半分詐欺です。もちろんバントについての言及は行いますが、そこを皮切りに途中からは「藤原・荻野もっと頑張れ」という話に発展していきます。先に結論を言っておけば話が頭に入ってきやすいかと思いまして。それでは宜しくお願いします。

2. 2021年ロッテのバント事情

まず4月18日終了時点で、ロッテの犠打数はリーグトップを記録している。

チーム犠打数ランキング
ロッテ  14
西武     13
ソフト  12
オリ     12
日ハム  10
楽天       9

バント戦術については古今東西問わずその有効性を議論されて久しいが、『この1点をつかみ取る』ロッテにとって、バントはちゃんと1点に結びついているのだろうか。と思いませんか?
という具体的な検証から入ってみようと思う。

3. バントした後、得点につながっているか?

先ほど紹介したロッテの14犠打。
記録選手の内訳は以下のようになる。
田村 6
藤岡 3
奨吾 2
髙部 1
藤原 1
菅野 1

ここでシンプルかつ的確な着目ができるよう、ダントツトップの田村の場合のみを例に検証してみることにした。
以下の表は、田村が送った全6回が結局得点になった(○)or ならなかった(×)で示したものです。

バントは有効か?-コピー_1

得点率50%、となります。この数値で持つ感想は人それぞれでしょうけど、個人的には素晴らしすぎる結果と解釈して、バント戦術は至極有効であると捉えます。
でも、ということでめでたし終了とはならないんですねぇ。贅沢かもしれないが改善と指摘の余地があります。

4. 9番 藤原と1番 荻野の勝負弱さ

要は、誰が帰してるかって話なんです。
ちょっとここで打順を思い出していただきたい。
今年の主なオーダー
7番 藤岡 鳥谷あたり
8番 田村
9番 藤原
1番 荻野

2番 マーティン
3番 中村奨
4番 安田
先ほどの表の通り、田村が送ったランナーをバットで帰したのは2番マーティンと3番中村奨ということになる。荻野も帰してはいるが押し出しで半分棚ぼた。つまり2番以降の中軸以前の2人(藤原・荻野)は、田村が送ったランナーを満足に帰せていないことになる。得点圏打率がそれを物語っていて、藤原・荻野ともに1割台前半(4月18日時点)。つまり本noteの冒頭で申し上げた「藤原・荻野もっと頑張れ」ってこれなんです。だって田村が犠打で送ったらすでに1死なわけで、2人のどちらかが出ないと無得点でイニングが終わってしまうから。上記の表の通りマーティンや中村奨で帰せたパターンは、藤原・荻野が四球などで後ろにつないだ結果生まれたものであり、藤原・荻野のどちらかにでももう少し決定力があれば田村の犠打有効率は50%からさらに上に伸ばせられた、と言ってもいいわけである。

5. ではなぜ藤原と荻野を起用し続けるか

これは2人それぞれで事情が違うと見ます。

まず藤原。

これは教育やろなぁ。もともとオープン戦の時期は打順1番に置いて可能性を探り続けていた。結局公式戦が始まると9番固定になったが、能力の高さは去年実証済みだし、将来主力を担うことを約束された立場だし、松中臨時コーチもいるし。色んな意味で浦和へ簡単に行かせるよりは一軍で使いながら勝負強さの成長を促すものかと思われます。だから田村が送った直後の打順で頑なに固定し続けていると見るべきかと(そういう意味では福田光輝とも事情似てるかもね)。ましてやチーム全体の状態が良い今ならなおさら。(とか言いながらここ数日は岡大海がスタメンを奪ってレジェンドと化してしまったので面白い展開にはなってきたが)

次に荻野。

先に言っておくと、もうこの項はもはやバントとは脱線した話になりますのでご承知おき下さい。たしかに荻野は打点を上げる能力が現状低い。でも荻野にはそれに補って余りある得点能力(自分自身がホームに帰ってくる能力)がずば抜けて高い。まず分かりやすい証拠として、荻野の得点数17はリーグトップ(4月18日時点)。本塁打0でこれはなかなかエグい。次に少し観点を変えて、誰が荻野を帰したかでも見てみる。以下の表は荻野以降の2~4番打者が打点で誰を帰したか、というものである。

バントは有効か?-コピー_1

2番マーティン (パ・リーグ打点王2位)

3番中村奨 (パ・リーグ打点王3位)

4番安田 (パ・リーグ打点王)

5+5+7=17。なんと荻野の全得点17はこの3人で全て叩き出されていることになる。ちなみにもっと言うと、マーティンが帰した岡大海×3のうち、2回は荻野への代走としてであり、出塁したのは荻野だから実質的な荻野の得点数はさらに+2と見ても良い。つまり1番荻野が現在リーグダントツトップのチーム得点数に大きく寄与していると見て良いと言えるわけです。たしかに現状の荻野は前述の通り自ら打点をあげる能力は低いが、本来の1番打者としての働きっぷりには文句が無い。でもロッテがさらにスローガンに忠実な野球をやろうと思ったら、荻野にもチャンスで打ってほしいよね、という論法にはなる。

6. 以上より、バント戦略で大事なこととは?

これはズバリ、バントする後ろの打順の勝負強さと言って間違いない。じゃなきゃバントする価値がない。今年のロッテは古典的な2番バッターの役割を8番田村に託していると見て良さそうなので、その後ろの9番・1番に勝負強さが付けば今年の千葉ロッテさんは今後も継続して安定した得点力を維持できる打線になると思いますよ。今はそれを目指した我慢の時期と割り切った起用としている(とくに藤原)という見方で良いのではないのかなという個人の見解を述べてこの辺にしたいと思います。

あ、もう一つだけ。「下位打順がチャンスメイクして1番で帰す理想」これは二軍でも継続的に試していると見ます。平沢大河。最近ずっと1番。じゃ下位打順は誰か。ここらへんは前noteの福田光輝編をご参照ください。

7. まとめ

・4月18日現在、チーム1の犠打数を誇る田村送った全6回のうち得点になったのは3回。得点率50%。バントの効果は十分あると見てひとまず良さそう。

・バントの有効性を評価するのに必要な指標は、その後ろの打者の勝負強さである。

・なので、田村の直後の打者にもう少し勝負強さがあればさらにバントの有効性は高まる。現状、田村の直後の9番藤原・1番荻野は勝負強さに乏しい。

・現在ロッテはリーグトップの得点数を誇るが、要因としては荻野の出塁が着実に得点につながっていることにある。ただし、今後も打線の好調を維持するには、9番1番の勝負強さの向上が一つのカギになる。

・というわけで今日レジェンドと化した岡大海。2人がウカウカしてられない恐怖の9番or1番打者になるかもね。

以上、ありがとうございました。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?