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エキシビションマッチの選手運用

1. はじめに

先に言っておくと、ほぼ野手運用の話です。本noteの主張は2.項にまとめました。それ以降は主張を補完するデータの紹介に過ぎないですし全部読むの多分大変なので、2. 先に結論(野手構想)だけでも読んでいってください。

さて。エキシビションマッチでは、前半戦にはなかった斬新かつ意外な起用が複数あった。井口監督は後半戦にどんな戦い方をしようとしているのか。今回のnoteではエキシビションマッチでの戦い方から、そこに切り込んでみました。

なお、これは毎月の二軍noteでも一貫していることですが改めて2点。
・筆者は試合の映像はほとんど見ておらず、スコアや記事から追える内容への言及のみに終始しています。
・主な注目は『出場機会』です。一部を除き、打率や守備率、防御率などといった結果の数値にはほとんど触れていません。

2. 先に結論(野手構想)

(1) 和田・山口の成長に賭けている
前半戦は出番の限られていたこの2人への出場機会の与えっぷりがすごい。おそらくマーティンの出遅れが早々に確定していたであろう中、ライトは和田がメインとなった。また山口も外野に再挑戦し始め、出場機会に幅を持たせている。マーティンは8月中に復帰予定と報じられているが、それまでこの2人の力で乗り切る意気込みを感じた。ちなみに厳密にいうと藤原も2人と並列で語られるべきレベルで出場したのだが、今やすっかり主力なので割愛。

(2) 安田の第一線からの後退
もうネットから消えてしまったのだが「復調を期してエキシビでも二軍でも起用する」旨の記事がエキシビ前に出ており、この時点では安田がエキシビ強化選手の筆頭だと思っていた。だが終わってみるとそうでもなかった。エキシビではスタメンは11試合中4試合にとどまり、前後の二軍戦ではスタメン出場を続けていることから、一軍舞台の第一線からは現状後退気味という印象を受ける。ただこの五輪期間中からファーストにも挑戦しており、出場機会を増やす試みが並行していることも見逃せない。

というわけで出場数では安田がエキシビの主役とは言い難いのだが、安田を無理に使わないことが起点で野手全体の様相が変化していると感じたので、あえて主役として本noteのヘッダー画像にしました。

(3) その他の野手事情
(三)藤岡 (遊)エチェバリアの起用方針が鮮明に。
荻野はエキシビで一度もセンターを守らなかった。全部レフト。
・荻野に替わるセンターは藤原。世代交代が見事に成功している。
加藤は第2捕手として十分な経験を積ませられた印象。
セカンド。前半戦は中村奨が全イニング守ったが、エキシビでは小川を2番手とする方針が見えた。
・和田のスタメン起用により、替わる代走枠には小川が入った。ただし結果は芳しくなかった印象。

以下からは、これらの結論に至った各種データを紹介します。また9,10項では投手運用11項では森遼大朗と植田将太について書きました。

3. スタメン

まずは守備位置別で11戦のスタメン一覧を。

スタメン一覧

中盤までは新鮮な起用(高濱 鳥谷 加藤 小川のスタメン)も散見されたが、終盤3, 4試合では現実路線に戻った印象。

以下はスタメン出場数ランキング

スタメン出場数

特筆すべき点として2点。
・藤岡・和田・藤原がスタメン出場数トップタイ。とくに和田は前半戦スタメン0試合だったので、今回メイン起用が貫かれたのは注目ポイント。
安田が4試合に留まった一方で藤岡10試合、エチェバリア9試合。

7.項にて各ポジション別の統計および考察を行っておりますので、詳細はそちらで。

4. 打順

まずは11戦の打順一覧。

打順

以下に、打順別での統計も取ってみた。

打順別一覧

・最も固定されたのは2番藤原の10試合だった。
1番荻野 2番藤原 3番中村奨 の並びは後半戦も固定と言って良い。 

5. 打席数

打席数ランキング

打席数イコール期待値である。そういう意味で、上位の若手3人(藤原 和田 山口)にチームの後半戦スタートダッシュを託したと言っても良いかもしれない。
・一概に「打席数イコール疲労度」とは言えないものの、中堅以上の主力には適度な起用に終始できた印象も受ける。

6. 走塁

前述の通り和田がスタメン。また岡大海も故障でエキシビは全試合欠場したことで代走枠が空いた。そんな中でもエキシビでは代走起用が11戦で6回あった。その内訳を以下に。

小川 5回 (7/31, 8/1, 8/3, 8/8, 8/10)
髙部 1回 (8/3)

ではこの2人は和田・岡級の代走として頼れるのか。次に示すのは、エキシビでの全選手の盗塁成績。

盗塁数

こうして結果を並べると小川・髙部の代走としての能力に疑問符がつくのが正直なところ。
(にしても、やはり和田と藤原は別格だなってのと、加藤いけるやん...w)

8月11日、岡大海はファームで実戦復帰したので、後半戦も岡を代走要員としてベンチに置けると考えれば和田がスタメン出場しやすくなったと言える。このように、あまりに走塁面(あるいは守備面でも)での貢献度が高すぎるあまり、和田をレギュラーとして出世させようにもチーム事情に引っ張られがちな側面がある。本項で言いたかったのはこれでした。

7. ポジション別

本項では、各ポジションのスタメン選手の一覧表および途中出場選手の一覧表を掲載し、ポジションごとで後半戦の選手起用を予想していくものです。

キャッチャー

捕スタメン

捕 途中

加藤のスタメン抜擢数の多さが目立った。佐藤都はエキシビ中も二軍漬けだったことから、第2捕手として加藤にかかる期待を感じる。また、植田も7月27日~8月5日のビジター遠征に帯同し9戦中8戦で試合途中からマスクを被った。中途半端に一軍帯同させたのではなく一軍経験を積ませる明確な方針があったと言える。

次に盗塁阻止率も調べてみた。

盗塁阻止率

n数が少ないとはいえ、全員50%超え

ところで後半戦も田村が正捕手なのは間違いないものの、加藤が第2捕手だとしたら特定の先発投手の専用機になることもあり得る。以下はエキシビで加藤がスタメン出場した計4戦でバッテリーを組んだ先発級投手の一覧。

加藤スタメン時

以上から今回のエキシビで特定の専用機化を試みたというよりは逆に多くの投手とバッテリーを組ませたと言える。ロメロの入団会見でも元同僚の加藤に期待する旨の発言が井口監督から出ていたし、今後第2捕手としてどのように田村と併用されていくかも楽しみの一つ。

ファースト

一スタメン

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山口のスタメンが総試合数の約半分を占めた。また途中出場に目を向けると安田の名があることも見逃せない。

現状、ファースト争いは好調が続くレアードを軸に、山口・安田・さらに二軍で復帰した井上のスラッガー4人で構成されており、数年前のことを思えばファーストは嬉しい悩み状態と言える。

セカンド

二スタメン

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前半戦は中村奨1人体制だった中、エキシビでは多くの選手がセカンドを守っており、中でも小川が2番手として据えられた印象。一方でエチェバリアは依然としてセカンドでは(サードでも)起用されておらず、やはりショートでしか使う気はなさそう。

サード

三スタメン

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スタメン数で藤岡>安田となった。途中出場数に注目してもこの2人以外に守ったのはレアード・高濱のみ。鳥谷小川らをサードで起用することは無かった。

藤岡は前半戦のラスト7試合連続でもサードスタメンだった。エキシビでもその流れを汲んでおり、後半戦もこの起用が続くと考えるのが自然。

ショート

遊スタメン

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約半数の試合でエチェバリアがスタメン。サード藤岡と同じく前半戦ラスト7試合もこの起用だった為、後半戦もショートはエチェバリアがメインになりそう。

それ以外の注目としては、スタメン数で小川>藤岡だったこと。これは小川への期待とも取れるし、藤岡サードメイン化のいち側面とも取れる。

レフト

左スタメン

左 途中

荻野の割合が最も高く、次いで髙部の守備機会が多かった。山口も3試合で途中からレフトに就いた。

センター

中スタメン

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ほぼ藤原の独壇場だったと言って良い。荻野はとうとう一度も守らなかった。前半戦でも(中)藤原が途中で下がって和田に譲る試合展開があったので、今後もそんな起用法が示唆される結果となった。

ライト

右スタメン

右 途中

マーティンの穴は主に和田が埋めた。山口もスタメンで1試合、途中出場2試合を記録。ところで地味に気になっているのはラスト2戦で(右)角中だったこと。前述の代走問題もあり、仮に岡の一軍復帰が遅れるあるいは小川の代走起用に不安が残る等の要因がある場合、ライトは角中に託して和田はやっぱりベンチなんて選択肢もあるかもしれない。

指名打者

指スタメン

とくに固定的な起用はなく、レアード・エチェバリアを中心に日替りで起用。

では後半戦から誰がDHなのか。候補としては前半戦の通り角中か、あるいはレアード・山口あたりかなと思われる。(安田は二軍でもDHをやっていないので候補から除外)

注記:指名打者に関しては途中出場の表は省略しました。理由として、エキシビ特別ルールでDHと守備位置は無限に入替え可能で、DHを「一時的に守備に就かないだけの選手」という本来とは違う立ち位置で多く使われた為です。

8. 野手個人別 (小川 安田 藤岡 山口 和田 荻野)

もうだいたい言いたいことは言えてるんですけど、本noteの主張を補完する意味で上記の選手別に視点を変えて、起用された守備位置(スタメンおよび試合途中からの出場試合数を表として掲載)データをメインに紹介します。

小川 龍成

小川

守備:出場はセカンドかショート。どちらでもスタメンあり。
打撃:エキシビでの総打席数は22 (チーム9位)。
走塁:代走出場5回はチーム1。

ちなみに前半戦は一軍公式戦ではまだ出場無しだが、エキシビでこれだけ使われたら後半戦スタート時に一軍入りする可能性は高い。フレッシュオールスターで優秀選手賞を受賞するなど最近は打撃面でもアピールできているが、まずは内野UTおよび代走での役割で期待がかかる。

安田 尚憲

安田

前述の通り、前半戦にはなかったファースト起用が始まった。以下、注目範囲を拡張し、二軍も含めた五輪休暇中の全出場記録をまとめた。

安田戦歴

エキシビ帯同を軸としながら前後の二軍戦でもしっかりスタメン出場しているので、2.(2)項で紹介したの記事内容の通りではある。ただしエキシビではメインを張ったわけではなかった。現状、安田はフォームの試行錯誤も続いている印象で、井口監督としても中途半端に第一線で使う気はないと予想。もしかすると後半戦は二軍降格も...?

藤岡 裕大

藤岡

ショート起用の色が薄いと前述したが、上記の表からもそれはよく出ている。エチェバリア獲った本当の意図ってこれかと。藤岡にライバルを与える意味かと思っていたが、実は「去年みたいには安田と心中する気ないですよ」って意思表示だったわけか。

山口 航輝

山口

一、左、右さらにDHスタメンありと、幅広く起用された。ちなみに外野起用は前半戦において一軍でも二軍でも一度もなくエキシビでの再開だった。打席数36はチーム3位。さすがにこの流れで後半戦も二軍なんてことは無いと思うけどなぁ。

和田 康士朗

和田

エキシビ全11試合中8戦でライトスタメンだった為、ポストマーティンの筆頭と呼べそう。守備の名手なのにDHスタメンの日もあったほど、このエキシビにおいて和田に打席経験を積ませることが井口監督にとってエキシビの大きなテーマだったとさえ言えそう。

荻野 貴司

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11戦中9戦でスタメンだったものの全てレフト。途中出場や守備位置変更も一切なし。レフトしかやらないエキシビとなった。センターを若手(藤原 和田)に譲るチーム方針が鮮明になっている。

9. 先発投手

ここからは投手事情について。以下はエキシビ11戦の先発投手の登板実績一覧。なお30日, 31日だけは岩下 小島が2番手で投げたのでそれらも記載。さらに現状出ている記事内容も踏まえて13日以降の後半戦6戦の先発予想も赤で付しておきます。

先発カレンダー

特筆すべきは佐々木朗が中6日登板したこと。既出の記事で今後も公式戦では中10日以上空けるとされているが、入団以降システマチックに段階を踏んで育成させている中、新たなステップアップにエキシビを利用したのはいかにも佐々木朗の育成方針らしい。

また、美馬がこの五輪休暇の間にしっかり再調整を済ませられた価値も高い。

続いて先発投手陣を通算投球回数順に並べたもの。河村が8月1日と8日に5イニングずつ投げた結果、チーム1の投球回数となった。後半戦も河村に先発としての役割を期待していると見て良さそう。

先発 ランキング

10. リリーフ

下記は先発も含めた全11戦の継投一覧。

投手継投

期間後半で田中→佐々木千→益田の勝ちパターン形態が見えてくるまでは、成田 小野 横山 土居 東妻の若手陣にゲームメイクさせていた。また国吉も8月8日でエキシビ初登板となった。後半戦に間に合う形で調整できたと言えそう。

下表はリリーフ陣の登板数ランキング。

リリーフ ランキング

最多登板は土居で5。エキシビ期間中約半分で登板したことになる。先発候補の小島 岩下を除けば12人にリリーフのマウンドを踏ませたことになる。

ちなみに現状問題なく投球できるのにエキシビに連れて行ってもらえなかった投手を挙げると東條 山本貴 南 ハーマン 土肥 永野 大嶺 原 小沼 森 原 アコスタ 佐藤奨 (ここは先発 リリーフの垣根を越えて列挙)。とくに東條 山本貴 南あたりは春先から二軍で投げているが陽の目を見ない支配下選手なだけに現状厳しい立ち位置と言わざるを得ない。(石崎もエキシビ初戦で投げただけなのでほぼ同列という印象はあるが) ハーマンに関しては一時帰国も関係してのことだし8月11日に二軍戦で登板したので問題なく後半戦は一軍合流するはず。

11. 残る支配下2枠

2021年は新外国人の獲得・トレード・育成選手の昇格の期限が8月末まで。ロッテは支配下が残り2枠。注目は森遼大朗と植田将太が支配下昇格なるかという点。

森は7月に二軍で無双し、一気に支配下昇格の機運が高まった。吉井コーチから8月3日という具体的な日程付きでエキシビ登板が示唆された記事もあった。

しかしその後、7月28日の二軍登板を最後に行方不明となっているので、なんか焦げ臭い気がしてます。

植田に関しては、森より支配下の可能性が高いと思う。現状働ける支配下捕手は田村 加藤 佐藤都の3人しかいない。宗接も捕手登録だが実情は二軍で外野メイン。上記の3人の誰かに何かあったら一軍で捕手3人体制を組むことすら満足にできない。なので今回のエキシビで一軍舞台を経験できた植田の昇格は現実的に全然あり得ると思う。ただし江村の復帰も噂されているのでこことの兼ね合いでもありそう。

12. さいごに

後半戦スタート前日のタイミングでのnoteとなりましたが、
・目下の注目は、マーティンの穴埋めとして和田 山口がどこまでやれるか。
・長い目で注目したいのは、安田がこの先どう扱われるか。

厳選すれば注目はこの2つになる。
首脳陣側としては理に適った種まきはできた五輪期間だったと思うので、思惑通り花が咲いてくれたら嬉しいなと思います。

なお、6. 走塁の項の一部データはsyouさん(@nasuyamanasuta2
)からいただきました。ありがとうございました。

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