情報の取捨選択

自分がまだ医大生だった頃、いわゆる遺伝カウンセリングに対して、結果を聞かないという選択をとる患者さんのことがまったく理解できなかった。
聞かないと、聞くという二つの選択肢があった時に、後者の方が情報量の分得をしているのだから、後者を取った方がいいに決まっているだろう、と無意識ながら思っていたのだ。
特に、例えば将来がんになりやすい遺伝子変異を持っている、など情報が大事なものであれば尚更情報量の価値は大きいと考えていた。

もう少し人生が経ってから、思い返してハっとすることがあった。それは自分にもたらされる新しい情報のせいで、悩む時間が増えたり、余計な不安と戯れる時間が増えたのだ。

そこで、考えた。もしかして情報を得ることで不幸せになることもあるのではないかと。

むしろ人間とは本来幸せであるにも関わらず、不必要な情報に晒されて、自分の中でのキャパをオーバーフローすることで不幸になるのではないか。

確かに情報をお金に置き換えれば、貰わないよりも貰っておいた方がいいに決まっている。しかしこと情報に関しては、所持量と自分の利益が比例して増えていくようなものではないのではないか。
やはりそこには情報の取捨選択が非常に重要だ。
幸せになる秘訣は、自分にとって幸せになる情報を取り込み、幸せにならない情報を取り込まないという事だ。
当たり前に聞こえるかもしれないが、実践できている人はいったいどれくらいいるのだろう。

ようは初めて見るコンビニの商品と同じで、パッケージだけで、それが美味しいのか地雷商品なのかをある程度推察しなくてはならない。
情報に関しても同じで、自分の中に取り込む前にある程度それが自分にとっていいものなのか、悪いものなのかを判別しなくてはならない。
よっぽどAIにやらせたい、と思う。
人間というのは学習しない生き物だ。

あの頃よりも苦い経験が増えた今なら、「結果を聞かない」という選択をとる人達のことをより理解できるし、賢いとすら思う。

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