雨模様
最近は雨ばかりだ。梅雨なのだから当たり前かもしれない。浜松は岡山に負けず劣らずの晴れの国だと聞いて越してきたのだが、それは冬に湿気を含んだ風が南アルプスを越えられずに全て雪と化し、残ったからっ風だけが浜松に届く、ということらしい。
医者として日々働いていると、患者さんに学ばされることが多い。医学的な側面はもちろんだが、もっと広義に生命について。
自分の患者さんが最近緩和ケアへ入ったのだが、よく窓の外を見ている。こないだも病室へ訪れると、「今日も気分は晴れないね。最近の空模様と一緒だ…」と呟いていた。
確かに梅雨入りしてからは何週間か晴れ間を見ていない気がする。
せめて彼がまだ空を拝めるうちに、一瞬でもいいので浜松に晴れ間が戻ってきて欲しいものだが、天気予報を見る限りだと絶望的だ。
今まで僕らは、晴れの日も、雨の日も変わらずに無意識に享受してきたが、いつ見た晴空が最後になるかなど誰にもわからない。
神も仏もあったもんじゃないな、と最近よく思う。
俺は現在進行形で幸せだから特段問題ないが、せめて彼にもう一度晴れ間を見させてやってくれないだろうか。
あるいはKOHHが以前歌詞でこう歌っていた。
「今生きてる俺らが神様だし、全部に感謝しても何かが足りない」
彼も直接的に「生命」を感じる出来事に直面してきたからこそ、こういった観点に立てるんだろうな、と改めて感心した。
自分も職業柄そういった機会は多いが、生命について学ばさせていただける機会に心から感謝している。感謝の対象はもちろん患者さんだ。
またこのような機会に医学的な知識だけを学んでいるようでは、何とももったいないように思えてならない。
再度確信する。
俺は医学ではなくて生命についてもっと学びたい、と。
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