さやか へ
Sayaka
彼女はそう呼ばれた
Sayakaは量産する
光とも、陰とも言えない青色に潜むのが得意で
いつも光になろうとしていた
彼女はSayakaだった
Sayakaは彼女になった
一人の特別な固有名詞になった
Sayakaはそして人が生んだ音に好かれていく
みんなSayakaを彼女として崇めたい
暗い海を背に立ち尽くす彼女の背中を
綺麗な真っ白な布で覆いたかった
ウェディングヴェールに。
Sayakaは背景になるのが得意だった
白を纏う自信はどこにあるの?
青色が得意だったはず。
私は月
あなたに被せた綺麗な布は最初で最後の贈り物です
月は言う
いつでも側にいるよ と
暗い海に浮かぶ溺れかけたクラゲ
ヴェールを捨てた彼女だと知った私は
なんて言うだろう
身の程を知らずに、知りたくもないくせに
泣くことは生まれつきの才能があった