Saturday Night Magic

土曜日の夜が好きだ。いつもより遅い時間に風呂に入って、のんびり肩までつかって洗顔で泡パックをする。白いもこもこの泡に包まれた自分の顔はまるで13日の金曜日だが、洗い流せば毛穴が目立たない。ちょっとしたぜいたくをした気になる。泡パックは偉大だ。化粧水をつけて保湿クリームをなじませる。なんだかちょっと、明日の化粧乗りが楽しくなる。土曜日の夜は偉大だ。

今日は久しぶりに父の呪詛に付き合った。誤解のないように言っておくと、私は別に父のことを嫌いなわけでもないし、悪いところもあるけれど良いところもある。偉大な父親だと思っている。けれども、彼は呪いの塊だ。言葉の八割に呪いが込められているので、身を入れて聞いているとこちらがやられてしまう。だから、あんまり耳を貸してはいけない。が、耳を貸していないことを悟られると余計に呪いに力が増すので、それもよくない。わかってはいても、私は母ほど心得がないので、今日はうっかり泣きそうになった。今日の父の呪詛は、家族に向けられたものではないけれど、呪いは呪いなので聞いているだけでも体に悪い。父はそれが家族への呪いになるとも知らないで、純粋に言葉を吐くので余計にたちが悪い。彼の心の闇の深さを知るのだった。いつか、父のことを小説にできたらよいと思うが、それはきっと私が彼の呪いから解き放たれるときだ。そんな日、くるだろうか。父が生きている限りは、いや、たとえ死んだとしても呪いは私の中で生き続けるだろうから、どうかな。でも、呪いを受けているのは私だけでなく、たとえば母や姉や、私の友人、好きな人、上司、後輩、そして父も、どこかしらになにかしらの呪いを持っているのだろうと思う。それはもう、きっと彼ら自身の一部になっているだろうから呪いから解き放たれるというのは、無理なのかもしれない。そういうことを思うと、思い出は呪いのようだと思う。良い思い出も悪い思い出も、誰かを縛るものになりえるんだろう。

ちょっと愛しいし、ちょっと悲しい。土曜日の夜は大体いつもこんな気分だ。