おいしい作り物

先輩が、大福を買ってきたというのでいそいそと職場へ行ってきた。ちょっと風変わりな大福だったので、コーヒーを買って行ってきた。大福は、微妙だったけど、無駄話をした一時間が楽しかったので先輩にささやかな感謝をささげる。

帰り道にはたとケーキを作りたくなり、材料を買い込んだ。ネットでスフレチーズケーキの簡単な作り方を見ていつか作ってみたいと思っていたのだった。コーンスターチやらチーズやらナパージュ用のアプリコットジャムなんか買うのは久しぶりでちょっと心が躍った。

うちには電動泡だて器がないので、自力でメレンゲを立てていたとき、ホイッパーの柄の部分が折れてしまった。それでも一生懸命メレンゲを立てたら手のひらに小さな穴が開いて血が出た。皮も剥けて非常に痛かったのにちょっと笑えて、そしてまたひたすらにメレンゲを立てた。我が家は三温糖を愛用しているので、メレンゲは少し茶色くなった。湯煎に手間取りながら50分、焼く。

何かを作って、できるまでの過程を眺めるのは楽しい。ケーキが膨らむ様や表面に焼き色がつく様はとても魅力的だ。料理番組が好きなのは、そういうのを延々と見ていられるからいい。作ることの楽しさを、出来上がることの楽しさを知っているというのは、やっぱり財産になる。素直にそう思った。小説だとか絵だとか、何か一つに絞られていなければと、たとえば自分がギフテッドだと信じたいからといって、そういうのはやっぱり苦しい。普通の、背伸びをしない、作ったら出来上がる喜び、というのはとても、大切だと思った。

ナパージュも塗って、綺麗にできたと思ったけれどさっき齧ったら底の方がゆるゆるだった。焼けていたはずだけど、やっぱり湯煎焼きがうまくできなかったのかもしれない。次回からは型をつつむアルミホイルをもっと頑丈にしよう。それに甘さが控えめだったからもっと砂糖を入れよう。もっともっと、おいしい作り物を知っていきたい。