お手紙ください

11月が好きだ。11月に生まれたかったがそれはかなわなかったので、せめて11月に死にたい。良い月だ。冬を迎え入れる、唯一の美しいひと月だ。

11月になると、誰かに手紙を書きたくなる。手紙が好きだ。相手にどうやったら自分の思うことを伝えられるか一生懸命考える。言葉を選ぶ。手紙を書くとき、私はとても「書くこと」の根源に立ち返ることができる。同じ様に、手紙を読むのが好きだ。相手の筆跡や言葉づかいや行間すらも相手をイメージさせるものになる。相手を形どるものを並べて想像する。「読むこと」の根源に立ち返る。手紙を書くのも読むのも純粋に楽しむことができる。貴重な時間だ。相手のことを思って何かを書くというのは、とても愛おしい。

誰かに好かれたいなあと思う。ほぼいつもだが、とはいえ、誰かに好かれても満足しないこともわかっている。そういうときは、手紙を読む。純粋に私に向けられた思いだけが、私を満たしてくれる。そういう寂しさに、愛されている。そう、思える。

お手紙、ください。あなたの、気持ちを、私にください。