They called her love

職場のバイトさんはおばさんが多い。おばさんたちは元気で、声が大きくて、人の話を聞かない。料理の話と旦那の話と飼ってもいないペットの話が好き。いつも、にこにこして、おばさんは自分よりもわかい私をいじるのが大好きなのだ。どこかに出かけたとお土産を渡せば誰と行ったのと勘繰るし、髪型や化粧を変えると男ができたのだと喜んでいる。おばさんたちと話していると、いつも地につかない自分の足が、気付いたらしっかりと地面に立っているような気がして、安心する。元気であかるくてうるさいおばさんたちは、美しい。綺麗だと思う。色んな、気付きや躓きもあっただろうに、おばさんたちは今日も元気だから、私は、そりゃあむかつくこともあるけれど、おばさんが好きだなと思う。

向かいに座る先輩も、その横に座る後輩も、面白い。先輩が冷たいと責めたり、お前が悪いと言われたり、後輩が嘘泣きをしたりして、私はけらけら笑う。そういうときだけ、どうしたものか、救われた気がする。どうしたものか、あんなに嫌で泣きながら呪った先輩のことも、気が利かないとこぼしていた後輩のことも、今は大好きだ。

違うグループの後輩が、「先輩はいつもいい匂いがしますよね」と言ってくれて、ちょっと笑った。汗の匂いの話をしていたのに。

仕事帰り、明日会う友人が先日誕生日を迎えていたのを思いだして、方向転換をして雑貨屋へ行った。小さな花のイヤリングとタオルハンカチを買った。車の中から見た、丸くてオレンジ色の太陽が、空をグラデーションに染めていて、あの辺りを切り抜いたら随分きれいな折り紙が作れそうだと思う。助手席で携帯が震えていて、誰かからのメッセージが届く。私に読まれるのを待っているメッセージがきている、そのことが、そのことだけで、嬉しい。

色んなものが愛おしかった。大好きだと思った。好きなものを、好きだと言い続けたいと思った。
きっと明日にはこんなきれいな気持ちもきれいな言葉もどっかに消えて、呪いばかりで、嫉妬と執着ばかりで、醜い私になるんだとしても、好きなものを好きと言い続けるように、そういうように、できていたい。辛くても、何でもない、そういうものこそを、好きであれるように。

だから、みんなのことが、大好きなんだ。