話下手

今月末に職場の先輩の結婚式があるので、シルクのワンピースドレスを買ったのは良いものの、靴とバッグを持っていないのでそれに合わせて今日は都会へ探しに行った。昔は百貨店の洋服売り場なんて怖くて通過するだけでも冷や汗をかいていたのに、今ではそんなに抵抗がなくなった。色々、諦めたかもしれない。綺麗になることや、自分が女性である、ということ。そういうもろもろのこと。まあ、綺麗になれるならいつでもどこでもないりたいが。

土曜日だったけれど、思いのほかゆっくり見れた。バッグも靴も少々値の張る買い物だったように思うが(靴に至っては店頭になく取り寄せを待っているので実際には買ってない)、でも、これもまた女性らしさを味わえた気がする。色々、気になる服はあったけれど、今日の至上命題は靴とバッグを決めることだったので、手は出さなかった。たぶんどうにか遂行はできた。靴が手に入ればの話だけど。

地下鉄から降りて地上へ向かう間にエスカレーターに乗った。私の前には高校生ぐらいの女の子。推測するに、同じ中学校で、別の高校に行ったように見える。結構な大きな声で話をしているので後ろにいる私にも内容が聞こえてくる。右側に立つ女の子が、自分の学校だかクラスだかにいる「嫌われている子」の話をしているのだった。ものすごい一生懸命、マシンガントークで、左側に発つ女の子に話す。「だからね、その嫌われてる子がね、でも●●ちゃんは裏切るとは思わないじゃん? でもさ、そこでさ」と間髪入れずに話している。でもその間髪の間髪に左側の子が「え? それって嫌われてる子が?」と聞き返す。一度ならまだいい。でも、右側の子が大体一文ぐらい話すと「え? 嫌われてる子が?」と聞き返す。後ろで聞いてる私でも、失われた主語は「嫌われてる子」だとなんとなくわかるのに、左側の子は毎度毎度聞き返していた。そして右側の子は「そう、嫌われてる子」と何度も答える。もういっそ、嫌われている子の名前も左側の子に教えてやればいいのにと、私は思うのだった。でも、左側の子はきっと嫌われている子の名前を知らないだろうから、右側の子なりの配慮なのかもしれない。しかし、●●ちゃんは、嫌われている子が裏切るなんて思わなかったのだろうか。嫌われてるんだから、裏切ることも簡単に予想できたのではないのか。人に不誠実という点で嫌われているわけじゃないのかもしれない。じゃあ嫌われてる子はどこが嫌われているんだろう。ものすごく複雑な嫌われ方をしてるかもしれない。複雑な人の話をするとき、右側の子が話下手じゃなくても、左側の子のように聞き返すかもしれない。

もう少し聞きたかったけれど、彼女たちはエスカレーターを下りて私とは逆方向に行ってしまった。私も、このnote、話下手になってなきゃいいけど。