lose my way

迷ってばかりいる。なんでも、なんででも。そうあることが当然で、正しい答えも目の前にあって、なのに、迷ってばかりいるのだ。迷ったからといっていい選択ができるわけじゃないのに、だのに、そうして人は、迷うのだろう。

迷子になった記憶はあんまりない。でも、隣にいるのが母親だと思って話しかけたら違う人だったことは、たくさんある。そうして気付いて、遠くにいる母親に追いつく。あのときの心細さや驚きや絶望は、いつも胸の奥にあってひょんなことで蘇ってくる。不意に、本当に不意の瞬間。

迷子になんかはなりたくない。迷うのなら、知っている場所で迷いたい。薄い上澄みのように美しい場所で、じっと泳ぎたい。そうしたらきっとどこにも行かないから迷子にもならない。

だけど、本当は、もっと遠くに行きたい。迷ってもいいから、どこかの場所に、辿りつきたいと思う。迷ってもいい。時間がかかってもいい、その場所へ、行けるのなら。でも、怖い。迷って辿りつかなかったらと思うと、そりゃ、怖い。だけど、行きたい。矛盾だ。

小さい頃に、もっと迷子になっておけばよかったんだ。