嘘をつかない

三連休に東京に行ってきた。たくさんの人がいて、たくさんの命がうごめいていた。渋谷なんかは、本当に、まるでジオラマの中のおもちゃみたいに安っぽいほどの人がたくさんいた。夕方の電車に乗ると、少し空いた車内では一人一人の人生があって、それぞれの人生の家へ帰るのだなあと感慨深くなることもあるけれど、渋谷のようにあんなに人がたくさんいると、みんながおもちゃに見えてくる。偽物のようで、ほとんどの人がぜんまい仕掛けで動いているのではないかと思うし、なんだかんだ、みんな色んな方向を向いて口々に好きなことを話しているので、自分が透明になったような気がする。知り合いなんかいるわけもないのに、あんなに多くの人がいても知っている人がいないという状況がうまく把握できていないのかもしれない。我ながら。自分の考えの及ばないものが集団になると、ちょっと怖い。人が多いところはいつもそんな感じがする。

文学フリマという、同人作家さんの即売会にも行ってきた。好きな文章を書く人と直接会えるから好きだけど、同時に嫌いだ。小説のことは好きだけど嫌いだ。いつもそんなことを思う。素直であることは難しい。

新幹線に乗って帰ってきて、ぼうっと車窓を眺めていた。日がくれるのもずいぶん早くなってきて、ビルに灯りが灯っている。遠くまで、たくさんのビルが見え隠れする。誰かが一生懸命働いているんだろうね。それはとても尊い。尊いなあ、と思ったら、なんとなく、嘘をつかないで生きられたらいいなあと感じた。我慢しないとかわがままを言うとかじゃなくて、嘘をつかないで自分に素直でありたい。でも、できない。でも、そうありたい。逆接ばかりを繰り返してしまうから。