リレー企画「あなたが愛した負けヒロイン」①

早稲田大学負けヒロイン研究会です。
今回は以前告知させていただいたリレー企画「あなたの愛した負けヒロイン」紹介をとりにく(@toriniku_wing)さんより寄稿を頂きましたので、第一弾としてそちらを投稿させていただきます。

はじめに

紅葉が色づく季節となりました。
みなさまの推しヒロインたちの頬も色づいていますでしょうか。
色づくような関係性になってたら良いですね。

初めまして。
好きな女は【重い女】【脆い女】【弱い女】、とりにくと申します。
今回、寄稿という形で今が旬であるジャンプ漫画の負けヒロインの紹介をさせていただきますが、
実は自分、「負けヒロインが好き!」というわけではなく
好きになったヒロインがたいてい負けるという、好みで悲しみを背負うタイプの人間です。
友達以上を目指して努力を重ねる女の子が好きなので、そういった子には好きな人がいるしだいたい振り向いてもらえないのですよね。悲しい。

とはいえ、それは物語の制作上の戦略に合致しているとも言えます。

昨今生まれた負けヒロインという概念、それは
「主人公とメインヒロインだけで長期の物語を回すにはある程度限界がある」
という、ストーリー制作上の問題点の解決策の結果生まれた存在とも言えます。

波乱万丈がなければ物語はつまらない。
他の相手がいなければヤキモチは焼かれない。
たった一人を選ぶには複数の選択肢がなければならない。

それ故に。

かつて時を共にしていた主人公の幼なじみだとか、
秘めた思いを育て続けても実ることはないクラスメイトだとか、
読み切り時代では存在しない、連載版で無から生えたサブヒロインだとか、

そういった存在が生まれ出ます。
そのようなキャラクターが魅力的であればあるほど、物語というものは重みを増していくのです。
その子が好きになった人間の感情は犠牲になりますが。

前置きが長くなってしまいましたが、今回紹介する女の子の話をしましょう。
今回自分が紹介する女の子、それは――。

漫画『恋染紅葉』に登場する、主人公の幼馴染でありかつての想い人。
【七里由比】ちゃんです。

作品と彼女の紹介

これを読んでいる方々の「なにそれ」とか「誰だよ」だとか「その前振りでアオのハコじゃないのかよ
だとか、そういった言葉がなんとなく聞こえます。否定はしないし僕も蝶野雛ちゃんは好きです。
とまあそれはさておいて。

『恋染紅葉』は、2012年に週刊少年ジャンプで連載された漫画作品です。
全4巻、同期は『ニセコイ』とか、『パジャマな彼女。』とかがありました。
通称ジャンプラブコメ戦国時代。本作は生き残れませんでしたが……。

読み切り版も存在しており、1巻に収録してあるので現在も読むことが可能です。
ちなみに由比ちゃんは読み切り版に存在せず連載にあたって負けるために生まれた女の子です。

原作/原案は『タカヤ』の坂元裕次郎氏、
そのアシスタントであり、後に『ゆらぎ荘の幽奈さん』で大ヒットを記録したミウラタダヒロ氏が作画となっております。 

舞台は現代の神奈川県鎌倉市。
普通の公立高校に通う、恋愛に奥手な主人公【葛城翔太】が、学校帰りに出会った女の子に一目惚れ。
ですがその女の子は、近日放映予定のTVドラマ【恋染紅葉】の主演であり、名門女子校に通うアイドル女優【紫ノ宮紗奈】でした。

そんな高嶺の花である彼女は、同時に本物の恋というものをよく知りません。
ひょんなことから彼女とお知り合いになれた翔太は、紗奈からドラマの役作り・恋愛の練習相手としてデートに誘われます。

そのデートの終盤で出会うのが、
翔太が初恋の相手であったが転校という形で恋が終わってしまった、小学校の時のクラスメイトであり、
今ではグラビア系アイドルとして活躍し、TVドラマ【恋染紅葉】の三角関係を形成する、もうひとりのヒロイン役として出演予定である【七里由比】です。

ちなみに彼女はその後すぐに翔太が通う学校の同じクラスに転入し、その時から過去に自分も片思いしていたという情報を開示してきます。
敗北のフラグの蓄積が早すぎる。

そんな彼女ですが、性格はマイペースな掴みどころのない女の子であり、
登場タイミングの関係で翔太と紗奈の二人の練習関係という関係も知っていたので、ドラマに沿ってもうひとりのヒロインとしての練習相手として翔太を指名します。
その後も事あるごとに翔太を誘ったり紗奈と合わせて3人でデートしたりし、自分の存在を翔太にアピールしていきます。
だからなんだよその典型的な敗北ムーブは。

過去の由比は内気で無口な暗い女の子でした。
照れ屋なだけで上手く話せない、優しい彼女の一面を知った翔太は由比のことを好きになり、
性格ゆえにいじめられがちな由比を守っていることもありました。
そんな男の子のことを好きにならない女の子は居ません。
ですが、由比の転校という形で彼の/彼女の初恋は言葉もなく終わりを迎えます。

翔太の知らないところで彼と再会し、その時の自分を変えたくて今のグラビアアイドルという道を選び、
再びクラスメイトとなって同じ時を過ごす中、初恋の感情が燻り続けていた由比。

彼女は、地元の秋祭りである紅葉祭りにて、翔太に一つの言葉を伝えます。
その内容は、そしてこの恋路の行く末は――――。

なんとなく察しがつく方もいらっしゃるかもしれませんが、
結末は電子書籍、ジャンププラス等にて知ることができますので、ぜひともそちらでご覧ください。

私が愛した彼女の魅力

主人公とヒロインの関係性が進展していく中、
同じ役者、あるいは同じクラスの仲間として、基本的に彼女は近い場所にいることが多い女の子でした。

明らかに相手のことが好きだけど矢印としてはつながっていない、いわゆる『両片思い』な二人。
そんな二人のかりそめの関係を知っているがため、自分も便乗しての「恋の練習相手」という関係を自分も獲得しようとした、『2番手としては』かなり上手い動きだと思っています。

由比本人も周囲の空気をよく読み、一般人とアイドル、あるいは別の学校の生徒同士、
という想い合いだけではどうにもできない接点が薄い二人のアシストをしつつも、
結構積極的に本心をアピールしているところも非常に良いです。
なんせ、掴みどころのないマイペースな女の子が明らかに恋の矢印向けてるのです。こんなのめちゃめちゃ好きになる。

マイペースで自分のことを好いている女の子。
かつての幼なじみ。
デカい胸。
男の子が好きになる要素の詰め合わせのような女の子に、まあ鋭くぶっ刺さった自分は好きになりましたが……。

先も書きましたが全4巻。
当時のジャンプはラブコメ戦国時代とも言われる強烈なラブコメ対決の真っ最中。
あえなく人気を勝ち取ることなく終わりを迎えることとなりました。
キャラクターの絵のタッチも鋭く刺さり、一途な幼なじみ要素にやられた当時の自分は深く嘆いたものです。

それでも、翔太、紗奈、そして由比それぞれの恋路に一つの区切りを迎えたことには感謝しています。
実は3人目のヒロインが出た瞬間に打ち切られたので3人目のツンデレ系ヒロインなんかも居るのですが、まあそれは置いておきましょう。

10年近くも前の打ち切り漫画故に知名度もないこの物語ですが、少なくとも追いかけていたあの一瞬の時、自分は彼女を深く愛していたと思います。

完全に自分の自己満足とはなりましたが、
平成で深く残った心の傷跡を、令和で解き放てて本当に良かったです。

再度告知しておきますが、本作『恋染紅葉』は全話ジャンププラスで配信中です。全31話、一瞬読むだけなら28×30コイン=約840円で全話読むことが出来、
単行本のデータ購入でも1700円程度あれば全話読むことが可能です。
高校生の恋路と儚く負けたヒロインの姿が気になる方は、ぜひともご覧いただけますと幸いです。

最後に。

蝶野雛もきちんと区切りをつけて終わりを迎えることを願っています。

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