見出し画像

話題になってた横文字概念への雑感

 先日、ONE PIECEで公式から男キャラ同士のペアリングが発売されることに伴って、「クィア・ベイティング」なる言葉が話題になっていた。

 「クィア・ベイティング」とは、「性的志向が曖昧な状態(クィア)であることを仄めかして注目を集める」という意味らしい。(検索してみると、過去にこれでアリアナ・グランデが怒られてたらしいことがわかる)
 今回の場合、「作中で絶対にくっつかないのにペアのリングを発売して(くっつくかもしれないという)期待を持たせて消費させるのは腐女子からの搾取だ」という感じでクィア・ベイティングだという批判が行われている。

 聞き慣れない横文字が出てきてわけわかんないよって人もいるかもしれないけど、要するにこれ「ペアのリングまで公式で出したからには作中できちんとそういう関係にしろ」と主張してるようなもんで、真面目に主張してる人には申し訳ないけど、「強火が過ぎるCP厨か?」と思ってしまった。私もそこそこ強火のCP厨である自覚はあるが、上には上がいるもんだなあと。

 これが仮に、リアコ売りでやってるアイドルや俳優とかに対して「そういう売り方をするならファン全員と実際に結婚しなければ駄目だ」って第三者が言ってるとかだったら、「いや無茶言ってるなぁ」ってのがすぐわかってもらえると思う。

 また、ペアリング発売の件を「少年誌ジャンルでは立場が弱い腐女子層からの搾取」だとして非難する声もあった。確かに、過去にジャンプでは巻末にハッキリとBL同人誌に対して苦言が呈されたことがある(なにそれ知らんって人は「オレ達はそんな変態じゃねーぞ」でググってね)。その影響もあってか、隠れない腐女子への叩きが超強かった時期は確かにある。というか、少し前まで超叩かれていた。伸び伸び発言できるようになったのは割と最近のことなのだ。

 その叩きの対象は腐女子だけには留まらず、作中で男キャラ同士の絡みを描いただけで「腐女子へ媚びるな!」と作者が叩かれる光景もよく見てきた。それに対して、クィア・リーディングという「異性愛を前提としない作品の読み解き方」を唱えて反論してきた層が、かつて腐女子を叩いてきた層と同じ「腐女子に媚びるな!」という主張を口々に唱えたり支持しているのは何の因果なんだろうか。

 以前にも、ジャンプ漫画にありがちな「エピローグで男女カップルが乱立する」という現象に対して、ジャンプ漫画はヘテロノーマティビティから脱せていなくてどうのこうのと言って批判していた道徳意識高めっぽい腐女子を観測したことがある。だが、その腐女子のpostを遡ってみると、「推しCPの片方がその男女カップル乱立に巻き込まれて、推しCPの成立する目がなくなった」ということへの鬱憤をヘテロノーマティビティ批判として発散してるように見受けられた。そういうことも鑑みると、今回のクィア・ベイティングについてもそんな感じの(ペアリング発売されている組み合わせの対抗CP者が文句つけてたり的な)可能性が捨てきれないんじゃないかな〜と穿って見ているフシはある。昨今は己の感情とか欲望を道徳とか正義とかでコーティングしたpostがバズりがちだし。

 いずれにせよ、腐女子に向けた商品展開に対して「腐媚びはやめろ」と言ってくるという行動が出力されているあたり、私はこのクィア・ベイティングがどうこう言ってくる人たちはアンチ腐女子同様に明確な敵であると認識した。

 あとこういう聞き慣れない横文字概念を「そうなんだ! 知らなかったからこれから気をつけなくちゃ!」ってすぐ鵜呑みにする人、マジで詐欺とかマルチ商法とかに遭わんように気をつけてほしい。こういうのは唱えられている理念やお題目だけでなく実際にどういう行動が出力されているかも大切なので、そこんとこも注視してほしい。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?