「たんたか短歌」第43回放送分 投稿歌を読みました


一句じゃなくて 一首だよっ!

でおなじみの、ラジオ石巻で放送中「たんたか短歌」第43回放送分にて、「現代歌人の小窓」シリーズに取り上げていただきました。いやーありがたい。うれしい。同番組では題詠投稿コーナーも行っていて、番組終了後に投稿歌が一覧でわかるようになっていて、かつては僕ももりもり投稿していたんでわかるけど、気合の入った歌がいっぱい集まってくるのである。

今回、題詠のお題「文」を提供したということもあって、せっかくなので僕からも投稿歌の感想を、ちょっと書かせていただいたらなあ、なんて思った。ので、書きます。


まずは入選歌から。

返信の感謝のメールが名文であまりに速くて少し戸惑う/織部壮

「少し戸惑う」の、この主体、やさしいな・・・ってぐっときました。僕だったら「ハイ定型文~!!」って言っちゃいそうだけど、そう決めつけなくて、「もしかして・・・」を見せてもいる。疑ってる主体なんだけど、疑うことそのものがいい人をにじませている感じ。

海に向く青いベンチに陽は差して森永ミルクの文字剥げてゆく/小俵鱚太

なんか、「青いベンチ」で、読み手としての景が確定しちゃう感じがあって、そのあとそこに「森永ミルク」が書いてあること言ってくるの、ずるいな!って思うんだけど、その字がわかるプロセスを主体がゆっくり追っているから、いっしょにうっとりできますね。

漢文のような私がひらがなにひらかれてゆく秋の夜長に/長井めも

「わかる~!」のようで、漢文って別に「ひらがな」に開かれるとは限らないんだよな、むしろカタカナぽさあるよな、に、強引さがある歌だと思います。ただその強引なイメージは、印象論としての「読み下し」に近いので、やっぱり「わかる~!」

文の字を腹巻きにして電柱が歩道の真ん中えらそうに立つ/榎本ユミ

この歌のいいところは、電柱に「腹」を指示したところだと思います。だいたいそれで、「電柱の上半身・下半身」のバランスがわかる。「文」の位置、「あーそこだよね」があって、「あのへんが腹」。それは、「たしかに」。そこが面白い。

好きだって気付かされてる寄せ書きの最初に見つけるきみの丸文字/モカブレンド

入選歌的にはこれが特選かもです。「きみの丸文字」は探したんじゃなくて、見つけてしまった。「好きだって気づかされてる」は倒置ですが、その倒置が、「見つける」前から好きだった、それを自分で知らなかった、そして知った、の順番を指示できているんじゃないでしょうか。

「なつ」と打ち変換すればサーカスの絵文字が出おりそれぞれの夏/あの井

最近のスマホ、予測変換ですごい絵文字が出るな~ があるので、「出るな~」の人 多いんだろうな~ があり、「多いんだろうな~」の、ハッ、「それぞれの夏」~!!「それぞれの夏」~~!!!! って感じです。

図書館の文庫開けばぽろぽろと誰が借りたか海岸の砂/涅槃girl

「誰が借りたか」が、そりゃ「誰か」だろ・・・と最初思っちゃったんだけど、「海岸の」は、「分かってる」んだな、を思えば、「誰が借りたか」って気になるし、ある程度限定して聞けるんだろうな、と乗れました。


という感じでさすがの入選! って感じでした。佳作秀歌・投稿歌一覧からも気になったのを引いていきます。


文鳥って喋るっけ?ってなったからふたりで「文鳥 喋る」でググる/平出奔

片方でいいじゃーん、のツッコミが「ふたり」の良さを引き出すんだな、という歌のいいポイントと、「?」のあとに空白がないぶん、検索で当然出てくるとはいえ「文鳥 喋る」の空白が面白く見えてきます。

「万引きは犯罪です!」とにこやかに告げる創英角ポップ体/久藤さえ

いや、「にこやかに」は、わかるけど、主体さんあなたの裁量だからね? その誘導には乗らんからね? とこの歌にすごく反発しつつ、でもそう見えちゃうよなー、が、ずんと乗ってきてしまうので、くやしい。

スニーカー文庫がふいにあらはれてちつとも片づかない本の山/有村桔梗

意外と、「本の山」って、「なんの本かは見えてる状態」が多いと思うんですよ。からの、「ふいに」「あらはれて」は、けっこう「あるある」の中の「オッ」のゾーンなんじゃないかなと。なんか心動きました。

枠内におさまるように書く文字の七歳の名がしりすぼみゆく/三浦なつ

「おさまるように書く」って、ちゃんと言ってんのに、できてねーじゃん、というのが、短歌という形式ですごい伝わるの、面白いなーって思いました。できてる感が変にでてしまってた。

駅員が唱える呪文でやってくる電車でひかりのなかへと向かう/加藤ふと

駅員さんのあれ「呪文」って言われたの、絶対初めてじゃない気がするんですけどこの歌が初めて疑惑があって、だったらすげー。って思いました。でも電車って因果関係的に、まあ、そうやって「やってくる」よね。

ふみちゃんにお茶っこすっぺと電話して背中まるめてばーちゃん出てく/菊華堂

実は、妻の名前に「文」が入っているのでこのお題にしたというのがあって、妻がおばあちゃん子なところがあって、なんだ、正解なのでびっくりしました。妻曰く、「優勝」だそうです。

お風呂場の鏡に書いた一文は涙を流し闇に消えゆく/minmin

や、これは結句が秀逸です。「涙を流し」までなら、よくあるなーって感じの発見なんですが、そうだよな、お風呂出たら電気消すよな、の、その「消したとき」は「残ってる」それが、なんかグッときます。


いやーこれ毎回さばくの近江さん大変ですね。参加させていただいて、嬉しい限りです。再放送も楽しく聞きたいと思います! ありがとうございました。

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