自選三十首ver.3
短歌の人として自己紹介用に自選三十首をつくっています。前回のものから半年たってますので、ちょっと差し替えたりして更新します。ご笑覧ください。
自選三十首(2019年11月7日時点)
運転手さん前の車を追いかけて そのまま抜いて海へ向かって
番号で呼ばれてはいと言えた日のぼくはすごく すごく人間です
シャワー超よわくしたらさ 超よわいお湯でてくんの 穴ぜんぶから
寝袋で定義している寝室にあした冷蔵庫がきてしまう
折り鶴のあまりとがってないほうを頭に変えるあやまりながら
鏡も見ずにくちびるの下のひげを抜く指のなんたるOKサイン
最後だけ百万点の問題になってあなたをささえていたい
好きな曲ばかり流れるウォークマンに好きな曲しか入れてなかった
乗客を一掃すれば終バスはきのうを乗せるだけののりもの
深夜だけテレビに咲いている花をわたしは朝礼で話さない
幸せが歩いてこない 吉野家の並はこんなに早く来るのに
コーヒーをごくごく飲んで立つきみがこれから会いにゆく誰かさん
会えたから見落としていた「着いた」ってメールに今日があふれだす帰路
玄関と廊下の照明スイッチを間違えちゃってたのしい帰省
歩道橋の下で待ち合わせをしたらどれかがきみの降りてくる音
起きたときわすれてしまうよい夢のひとつひとつにはさまれる羽根
戦犯はぼくらしいのでそれはもうよい戦争があったのだろう
想像のなかでも猫とおじさんは傘をささずに走っていった
夢で見たあなたの腕を数えたら二本だったが数えたのだそれを
バスがゆく 三原則の一角をあなたで埋めてゆく バスがくる
薬局にすこしはみ出るじゃがりこがしまわれてゆくのを夜と呼ぶ?
トイレから帰ってきても双六が自分の番でないさみしさは
ごはんだと断言したいわけですよごはんですよのかかったものを
ふいにあの歌詞がわかってメールだけ届く転職サイトを抜けた
だとしてもぼくはこうして錯覚で短く見えるほうの棒です
ぎゃく向きに乗ってしまった電車から降りなかったら学校だった
たったいま気づいたんだがくぐりうる 風が平均台をくぐりうる
二軒目で箸の袋を折りながら語ったほうの夢がほんとう
ばか安い自販機を背にやってないジェンガの話でも盛りあがる
雪は口にふしぎと入らないままにどうでもいいことを話してる
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