うたの日 落ち穂拾い
ウェブサイト「うたの日」。毎日出されるお題に17年10月現在だと150人以上が参加して歌会を行うというとんでもないところです。
かくいうわたしもほぼ毎日、投稿と選に参加させていただいております。
うたの日の選の特徴は、特選一首をハートとして選び、他に好きな歌を音符として何首でも選べるところにあります。そして最多ハートを獲得した歌が首席として、薔薇マークがつきます。
反面、ハートも音符もつかないと「どんまい!」と表示されるのですが、これをとると凹みます(笑)スベってしまったわけです。
……が。どんまいの歌だからといって悪い歌かというと、そうとは限らなかったりします。なにせ、一つのお題に30首集まるのは当たり前、多いと余裕で50を越します、どうしても一首あたりの読みの時間は限られ、後で読み返せば「あれ?なんでこの歌に音符つけてないんだ?」と思うこともしばしば。
それはもう、運や巡り合わせと割り切って臨むしかありません。一方で、この歌どんまいだったんだ、と意外に感じる歌はやっぱりあるのです。
ということで、2017年4月以降に投稿された短歌で、これはいい!と感じたどんまいの歌を、勝手ながら以下に引かせていただきます。
しかしさすがはうたの日ですね。全部は追いきれません。とりあえず見られる範囲で見たぶんなので、まだまだ眠っているかと思います。ひとまずの薔薇ならぬ落ち穂拾い、お目通しいただけましたら幸いです。
※時系列順でもなんでもないのでご容赦ください。書きたい順です。加えて敬称略もご寛恕を。
だけど今ほrびゆく都市をテレビジョンで眺むrぼくへ咲きほこr花(宮本背水 6/28「だけど」)
かねてよりわたしの好きな歌です。これは探さずとも知ってました。ラ行を子音で壊し、画面越しに(テロリズムなのか戦争か)終わりゆく光景と通信途絶のようなイメージが重なるいい歌だなあ、と思います。
すれ違いざまのため息 あの子供、怒られてると思いませんように(笠和ささね 5/2「ため息」)
なんかわかるーってなりました。他人のそういうところを自分に向けられてるような感覚。子供の時そうだったな、って主体の感覚。それをもつからこそ、あの子供がそうだったらどうしようと恐怖してしまうのですね。
豪華客船貸し切ってもし何かあっても行方不明者は二人(多田なの 8/7「船」)
大仰な景から一気にさびしげにひろがります。二人で貸し切ったんかい!この、もし何かをしそうな心意気がいいですよね。二人しか乗ってないんだからいいでしょ、みたいな。
朝焼けの異変に俺は気付けずに上半身の裸を晒す(堂那灼風 5/7「異」)
寝落ちした歌、ととってもいいと思うんですよね。気づいたら朝で、そりゃ朝焼けは異変です。ぼんやりしてて光に気づかない裸体。好きです。不穏なSF物語を想像しても面白いなあと思います。
廃ビルに春風は吹き仄暗い窓の向こうの脚を揺らした(きつね 4/19「廃」)
結句でぞっとしました。窓から見えるのが足ってことはやっぱ吊られてるんですかね?廃ビルという雰囲気がただただ不穏です。いい感じで急転させてくる歌だと思います。
好きだよと言いかけて言ったさよならに君は愛とか感じたのかな(街田青々 5/24「だよ」)
言えなくて言った、ならまだしも、言いかけて言ったのだから気づいてくれてもいいよね、みたいな気持ちを感じました。甘酸っぱいけどせつないですよね。
もう止めて!!うんこは流し台でせずちゃんと便器に流してよ!!ねえ!!!(社会適合者 8/30「止」)
これは音符を入れるのも覚悟がいる歌ではあるけど、わたしは好きです。勢いがあってぷっと笑ってしまったんですが、現実こんなことはないのか?と自問すれば、わたしはなぜこれで笑ってしまったんだろうと肝が冷えるのです。
失って大人になった春休み通学定期プロレスごっこ(静ジャック 5/20「プロレス」)
これ好きですね。春休みも通学定期も、夏休みとか通勤定期とか、失いつつもなにか連なるところがあって、ではプロレスごっこに連なるものはなんだろう、なんてポジティブに読めるのでした。
ヒロインの手を握る彼の両頬の斜線部アの意味を求めなさい(棚笠 8/12「斜」)
問題文風でして、でも求めるのは面積とかじゃなくて意味なんですよね。マンガチックな表現で、こういうヒロインって結構鈍感だったりして、わかれよ!ってツッコミにもなってるなあって思います。
唇にアイスコーヒーにじませてくるりと舐める合図に気づいて(知己凛 7/29「アイスコーヒー」)
うたの日ウケなるものがあるかはさておき、この歌がどんまいなのはちょっと意外というか。なんの合図かはっきりしないんですけど、まったくの疎通がないわけじゃなくて、二人の関係が愛らしいです。
好きな人はじめて部屋に入れた日はしおれた花さえ隠しておいた(こたきひろし 6/8「部室」)
これは多分、お題との微妙なズレがどんまいにつながっただけかもしれませんが、かなりいい歌だと思います。しおれた花さえの言外に含まれる、アクティブな隠されたものが浮かび上がりますよね。
人生論にしたくはないがこの桜も冬の寒さによく耐えたです(照屋沙流堂 4/9「耐」)
上の句がめっちゃよくわかるんですよね。会社の朝礼当番で、なんか仕事に絡めて言っちゃいがちなやつ。そういう利用の外で桜を讃えたい。気持ちよくしてくれる一首です。
いや探すと出てくる出てくる。
個人的所感としては、定型からのズレに厳しめかもなあというのがあったり。
しかしうたの日、薔薇歌を探すのは簡単なんですがどんまい探しは大変です。絶対漏れてるし、というか半年ぶんしか見てないし。
ということでまた挑戦するかもしれません。わたしもこれからどんどんどんまいをとって、Twitterで凹もうと思うので、みかけたら心の中で親指を立ててやってくださいませ。
それではお付き合いくださりありがとうございました。
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?