第一回笹井宏之賞応募作品『E hito』
『ねむらない樹』vol.2が発行されましたので、応募作品を公開させていただきます。
選考過程において、最終選考候補作という形をいただきました。ありがとうございました。上誌に十首抄録いただいています。
今後もがんばっていけたらいいなと考えています。どうぞよろしくお願いします。冒頭の画像のテキスト版を、下記に掲載します。
E hito 御殿山みなみ
抵抗の始まりとしてかなしみは第一楽章から冬でいい
読むうちに同じ名字のひとが出てほどなく蠍に刺されて死んだ
檻とも呼べる自販機に入れた十円もきっと今ごろ誰かのおつり
それはもう みたく文庫のひとつ売れ私信のように揺れるPOPよ
さっきの良いなぐさめ方も原作に忠実である気がしてそして
ひとりにはしないでほしいドトールのコツを教えてくれたのだから
新年を電話で祝う罪として実家のプラモデルの埃は
望むのは世界のすべてどうしても監視カメラにうつる世界の
忙殺と書いてめちゃくちゃ生きているひととおんなじ靴をはいてた
まちあかり溶けこむほどになじめない消費税なら含まれてない
ていねいに暮らしの隅に隠されるお役ごめんの胡蝶蘭たち
駅前であっとスマホをしまうのが春の再現ドラマのような
持っている小銭に合わせパンを買い 軽くてやだね財布もパンも
声優が死んでしまったキャラたちを逃がしてみたいプラネタリウム
あやまることを許されぬままゆるされて桶屋が儲かってから吹く風
クレジットカードに鋏を入れるたび少し傷つくひとでありたい
とんがりが足りていなくて千羽からはずれた鶴がこれだとしたら
それが胸の高鳴りだから花札の藤を藤だと覚えなくては
鯉にえさあげて生まれるあぶくからいけがにおってこいですよ、こい
蟹かまのかまのやわさを何ひとつ知らぬフォークのぶんまで知った
神さまにいちばん近い職業がひよこ鑑定士ではないこと
不景気が生まれたときにすでにある 雨天中止になるあまやどり
天罰がほしいよ選手宣誓に舌っ足らずをさがしてしまい
パインゼリーの思いがけない炭酸にすでにきている夏のまたくる
線路なら続くんでしょう国産を疑わないでいるあいだだけ
いいひとで終わってしまい涙です脇の下からしたたるそれは
鳥と、止まる木と、先にて咲く花に、一方的についてる名前
図書館の静けさ誰がひとりごと同盟にいる仲間なのかな
街路樹を根こそぎ倒しまた戻す超能力にまだ目覚めない
笑えない嘘はさながら光さす広場のこわくない距離の蜂
「皆様」に含まれている毎日の 全方向から開けにくいヨーグルト
初野球観戦らしき知らぬひとのそんな日焼けをしてみたかった
連絡の手段がありすぎているね万年杉ってこの高さなの
物言わぬソフィストになり終点で降りられず降ろされて折れてく
トイレットペーパーからから回しいいんだよヘリコプターで迎えにきても
食欲の秋の牛乳おきざりに腐って去ってってくひとばかり
親権のからむ離婚をおもいだす大失敗の割り箸だった
うつくしいおはぎになって眠りたい見せる誠意がお金のときに
側面もばれないようなはりぼての塔の裏側から照らす街
バスがゆく 三原則の一角をあなたで埋めてゆく バスがくる
にせものの悪意が聴こえてくるでしょう粘土の貝を耳にあてたら
枝豆のどっちかわからんほど酔って、笑われても口には持っていく
どちらともとれる言葉でその本の父か母かになっていいですか
ぱらぱらとすぐにザビエルだとわかる棒人間の踊るノートの
黙読のだいたいどこかわかるから頬をつっつくのはやめとくね
大人になったら開けていい箱の包装の影のいつまででも蝶結び
トイレから帰ってきても双六が自分の番でないさみしさは
頃合いのジェンガのように日没の鬼ごっこが崩れてハグになる
スクラッチ削って予想通りだとうれしい違うともっとうれしい
決闘で負けた帰りにいいひとがいいひとらしく払わない雪
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