評bot 4


始めます。趣旨は下のツイートをご参照ください。

なお、ご利用者様は敬称略にて失礼します。今回で今いただいている「公開分」はすべて書ききりましたので、次以降の更新は、投稿状況によって5首以下の掲載になると思います。


痛みって冷たい炎かもしれず、世界中の犬が燃えてる /あさひな

冷たい炎、には触ったことがありませんのでその感触は想像するしかないのですが、「痛い」かもなと思いました。そういう想像に加えて、「冷えてるし熱い」という概念が、たしかに「痛み」としっくりくる印象ですので、上句の提示についてはわりとすんなり受け入れられました。

下句の展開にはどきっとしますが、上句の提示で「燃えてる」を「痛みを感じている」と読み替えることができますので、そういう想像なのかなと感じます。この言い切りはけっこう強いもので、今「世界中の犬」が「そうなる」なにかってあるのかなと思ったり。「世界中で犬が」なら分からなくもないんですが。ここまで言い切りに行く主体の心がつかみにくいと感じます。

もちろん、主体の心象としての「世界中の犬」として読むほうがすんなりいくのですが、「世界中の犬」と言ってしまうと、それが「現実の世界中の犬」のことを指していると思われる責任からは逃げられないと思います。その中で、そこまで言いたかったですか? が、私には計りかねた印象です。インパクトは素晴らしいんですが。申し訳ありませんが、ちょっと雑に殴られたような感覚は否めませんでした。

ご利用ありがとうございました。


ふつつか酔いでごめんね あなたがランプに見えるよ /温

まったく57577でない歌を「短歌」だとして提出するということを、私は「57577のものさしを当てられながら読まれることに覚悟ができた歌」だと考えています。遠慮なく当てさせていただきましたが、初句か三句が欠落したような印象です。とはいえそう読まれてほしければそれに相当する字空けをすればよいだけなので、そういう意思は感じませんでした。

ともすればルール違反の韻律をどこか許せるのは、酩酊の歌だからというのもあるでしょう。ろれつが回っていない状態での短歌だ、という気がします。奇妙なのは、そこでも理性はバリバリに働いているように見えるところです。

「ふつつか酔い」という言葉は「二日酔い」を噛んだようでもあり、「不束者」のイメージをかけた言葉遊びのようでもあります。後者なら、とても理性的です。また、「ランプに見える」というのも、光って見えると単純に書くよりもより詩的でイメージにあふれているすぐれた表現でありますが、それを言語化できる程度には理性的であるとも思います。この、韻律は定型という理性をはみ出ながら、レトリックの理性は手放していない感じ、個人的には「あるな」と思ってノれたのですが、人によってはそう思わないだろうなという予感もあります。

ご利用ありがとうございました。


目に裸体うつして見つめるさみしいよ糸杉の深く燃やされる夜 /渡邉知博

どことなく鏡で自分の裸体を見つめているように感じたのは、「目に裸体うつして」とわざわざ書いているからだと思います。鏡なら、その様子もわかりますし。そのあとの「さみしいよ」もしっくりきます。鏡的なものがなければ、わざわざ「見つめる」ことを回りくどく描写していることになります。これもいいなと思うんですが、そうして眺める「裸体」があれば「さみしい」なのかなと思うところはあります。

下句ですが、「糸杉」というとよくありそうな木なので、「燃やされる」ということにあまりリアリティを覚えず、心象で燃えているのか、はたまた縦に長い木ですから、煙が上がっているように捉えているのか、そういう心の中のそれでとりました。私の上句の読みだと、どこか主体自身がぽつんと立っている感じがあるので、下句のさびしい感じとよく合っているように感じ、その限りでいい歌だなと思いました。

とはいえその読みでいいのかな? と、(私は迷いながらもこう読むわけですが)思うところはあり、この歌を通じてちゃんと主体とコミュニケートできたか自信がありません。「糸杉」というとゴッホの絵がありますが、絵画的な文脈で読んだ方がいいのかな? とか。ただ、私には今の読みを超えて魅力的に思える絵画文脈の読みが、心には現れませんでした。

ご利用ありがとうございました。


力こぶばかりまぶしい先生が地下鉄のあっちからこっちまで /袴田朱夏

これはいい歌だと思います。「先生」が「地下鉄」の「あっちからこっちまで」移動するっていうのが、ふつうの移動でも読めるんですが、やっぱり遠足の景を思い浮かべるのです。電車で小学生たちが校外学習なり遠足にでかけているときの、メチャクチャたくさんいるときの。みんな騒がしくしないように先生は大変だと思うんですが、その「先生」っぽく思います。

そういう「先生」ってちょっと怖いイメージもあるんですが、実際そうなんでしょうけど、「力こぶばかりまぶしい」の「力こぶ」はそっちを担ってて、「まぶしい」でどこか頼もしい感じもあって。これを見ている主体は子供なのか乗り合わせた人なのかわかりませんが、どちらかというと大人目線に感じます。

こういう景って迷惑に感じる人もいるのかもですが、「そうじゃない」視線が注がれているのが心地いいのかもしれません。優しい世界みたいな。すいません、普通にいい歌なのでかえって短くまとまっちゃいました。

ご利用ありがとうございました。


姿見が不細工を写す 笑うのもしんどい朝 わざと歪めた /無縁

書いてあることから、景は過不足なく受け取れる歌だと思います。自身を「不細工」と思っている主体が、今回は笑って流すこともできず、変顔的なものをして、という感じの。悩みがストレートに伝わってきますし、こういう状況を思うと心が動くところがあります。

その上で、「笑うのもしんどい」は、実は書かなくても伝わるところだと思います。全く省くと伝わらなくなりますが、ここまでストレートに描かなくても、「朝」の様子をそのときの自分の心情(つまり「しんどい」だと思いますが)で見えたように描いたりできるのも、短歌という詩形のいいところだと思います。また、「わざと」も、こういう状況でゆがめたら「わざと」なのは伝わりますので、どうゆがめたのかの描写に振ってもいいと思いました。

また、四句「しんどい朝」は六音で字足らずです。ここの字足らずは、言葉に詰まっている印象を受けるため、このままでもいいようには思いましたが、定型にすること自体は簡単だと思いますので、特段のこだわりがなければ定型に仕向けるよう、整えてもいいのかなとは感じました。

ご利用ありがとうございました。


今回は以上です。



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