評bot 16

今回も始めます。趣旨は下のツイートをご参照ください。なお、ご利用者様は敬称略にて失礼いたします。


ぴかぴかのどろだんごみたい約束を約束のまま撫で続ければ /はとサブレ

「ぴかぴかのどろだんご」ってなんだよ、と思った後、「あるじゃん」と思えたこと、が、この歌のいいところなんだろうなと思いました。泥とぴかぴか、って、両立しますよね。たしかにすごく表面をつるつるにしたら光ります。この「ぴかぴか」を読んだ瞬間から「あるよな」と腑に落ちる人より、僕の方がオッとなる感じで、そういう意味ではこの歌のいい読者なのかもしれません。

下句にかけてのイメージの接続も上手くいっていると思います。おそらく果たされなさそうな約束で、手元でいじるしかない、そうすると表面だけはきれいになってくるわけですね。「ぴかぴかのどろだんご」って綺麗ですけど、「それどうすんの?」ってなっちゃう。この「それどうすんの?」が、下句にオーバーラップしていると思います。

しいていうなら、「約束」と「どろだんご」自体はそんなにオーバーラップしないな、という気はするんですが、そこはもういいんじゃないかなあと思います。そんな感じです。

ご利用ありがとうございました。


ギターケース背負えばバンドの人になりバンドの人は乗客になる /ysd

わっおもしろい! と直感した後に、うーんなんか惜しいなあ、がある歌だと感じました。上句、絶妙にいけてますよね。どっちも雑な把握でフィットしています。「ギターケース背負えばバンドの人」って、確かにそうで、「バンドの人」ってめちゃめちゃ雑ですよね。ただこれ以上言うと言いすぎになりそうで、このレベルの把握が面白いです。

で、この「バンドの人」が電車かバスかに乗れば「乗客」なんです。そうなんです。ここは面白いです。だって「乗客」だろうと「ギターケース」持ってるんですから。「バンドの人」で、「いつづける」場合はあると思うんですね。それが負けると。「ギターケース」背負ってようと「乗客」なんだと。ここの把握。面白い。

ということで、四句の「バンドの人は」は、これ「電車に乗れば」とかでいいんじゃないだろうか、と思いました。そのほうが構成としてもバランスがいいですし。あえて「バンドの人」をリフレインさせなくても、その人の属性が連綿と移り変わっていくように読めると思います。

ご利用ありがとうございました。


餃子を口に入れっぱなしにしたい深い眠りにつける巣穴で /サトハン

なんで、餃子なんでしょうというのはともかく、「餃子」なのは面白いですね。口に入れっぱなしにしたいかなあ。美味しかったらそうかもしれないですね。下句を読む感じでは、この歌の裏返しがこの主体にとっての現実で、安心して深い眠りにつくことができないものがあるのかなあということを逆説的に感じます。その上でイメージが面白いな、はあります。

上句の韻律が、個人的には好きでない破調です。下句がきれいな77なので着地は決まっているかと思いますが、上句もしっかりリズムに乗っていったほうが、この歌はうまくいくんじゃないのかなと思っています。「餃子を口に」まで初句七音で大きく取って助走をつけてみるとか。

これ、やっぱり「入れっぱなし」なのへんで面白いですね。いっぱい食べたい、とはまた違った、ぜったい唾液はだらだらだろうなあというか。それができるのって本当に安心できるところなのかなというか。この「入れっぱなし」は効いているなと思います。

ご利用ありがとうございました。


今回は以上です。


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