土台をつくる

2017年9月23日に発表のネプリ『土台』に収録しました短歌連作です。

すべり台の先の砂場のたのしげな声に押されて逆から降りる

得意げにミッション・ポッシブル並べ今日も楽しくないなあなんて

もう次のジャンプが並ぶコンビニで焦りを忘れたいレッドブル

年下が活躍しだす　年上は活躍してる　不景気なのに

ばあさんに割られるまではいつまでもただ台本のない桃太郎

会社員めでたしめでたし　そう思う僕とあくびを殺してる僕

若者のテレビ離れに反論もできないままにテレビをつける

表現力とはなんですか興味ない球団からのレフト前ヒット

台形の回転体としてプリン　言葉で微分できない甘さ

甘くない覚悟で甘い言の葉を紡ぎつづける人たちの椅子

自意識の重さにおじけづきつつもそっと砂場のはじっこに立つ

台風の目が多すぎて外周をたらい回しに飛ばされている

一回の勝ちで点く火があぶりだす白紙にしてた負けの数々

伸びかけてくすぶっときます　その心はどっちつかずの名ぞ駆ける欲

ヒット＆ラントライ＆エラーキャッチ＆リリースだけはしてたまるかよ

うつむいて土台をつくる　こっそりと笑顔の練習だけはしている

へんなことつまらないこと誰もしないこと続けてた君だけの武器

化粧台に映るおとこが弱そうでジャブうってみる　やはり弱そう

地下鉄を上がったときの青空がずるい　やる気になるスニーカー

踏み台になって未来をみおくって過去になりうる今をひらきたい