共題連作 第6回
歌人ふたりが同じタイトルで五首連作をつくったらどうなるかの企画、第6回です。
今回のお相手は小泉夜雨さん。お声かけくださってからめちゃめちゃ時間があいてしまって申し訳なかったです。
小泉さんといえば、独特の少女性をもって語りかけるようにくるポエジーが好きな歌人でして、筆者が別でやっております『あみもの』という短歌企画の陰の功労者でもあります。
今回のタイトルもこちらで決めることになり、ちょっと悪戯心を出して変なタイトルにしてみました。
「thaumaturge」五首です。これは中々骨があるだろうとほくそ笑んでいたとき、自分も作らねばならないことが頭から抜け落ちていたのは余談です。以下どうぞ。
thaumaturge 小泉夜雨
防火用カーテン そうか、永遠に窓から外へ出られないのね
補習A教室殺人事件って寝ているきみを囲む白線
ほんとうに魔法があるなら使ってよ筆記体なら書けるんでしょう
過去、未来(わたしのすべてらしきもの)ゼムクリップに収束されて
さうまとぅらげさうまとぅらげ 覚えたらどこか遠くにいける呪文を
thaumaturge 御殿山みなみ
書き込みのそれは勇者を盾にする魔法使いのような匿名
命がけで人気ゲームのキャラたちがたたかっている名前を伏せて
古本を売るときに名を書かされることに戸惑うきもちはわかる
その数秒でアフリカの子が死ぬような文法で努力をかたらせて
そういう、魔法使いは三十になるまでには卒業してほしい
いかがでしたでしょうか。ふたりの作風はこれまた違っており、そういう意味ではおたがいのらしさが出ている気がするのですが、ちょっと意外なところもありました。
「thaumaturge」というのは妖術師だとか魔法使いだとか、そういう概念を指す英語なので、ファンタジー詠の志向はしやすいのかなと思っておりました。けれど小泉さんの学校詠、筆者も現実を見ている連作ということで、逆にこうなるのかな?という思いです(ちなみに発音はさうまとぅらげではない気がします…笑)
ともあれお楽しみいただければ幸いです。一応これで予定していたお相手が終了ですので、気が向いたころに誰かにお声掛けするかもしれません。
最後になりましたが、おつきあいいただいた小泉夜雨さんに改めてお礼を。ありがとうございました。
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