ネプリ・トライアングル(シーズン3)第三回 感想
サンドウィッチマンの動画をおすすめにされているのも弟らしさ /橙田千尋『通常営業』
YouTubeの「あなたへのおすすめ」動画はそれまでの動画閲覧傾向からファジィに割り出される。サンドウィッチマンばかり観ていたらそりゃ出るだろうし、たとえば別のお笑い動画などを観ていてもなんだか関連されたり。そんなときの「そのひとらしさ」には含みがかなりあって、自分ではなく弟のそれをみて弟の生活を想像するのがとてもおもしろい。
連作は連休の間の帰省を描いており、時間をあけて帰ってきたがゆえの実家に対する今の想像だったり、なにか見つけたものを点描して出てくる面を読者に想像させるようなつくりだなと思った。間口をしっかり整えられていて、作品世界にのめりこまされたような。
友人はお酒をやめた エレベーター うどんにぼやく別の友人 /同
セブンイレブンのお箸ばっかり増えていく合間合間で乗る観覧車 /水沼朔太郎『泡のゆくえ、ぼくのゆくえ』
観覧車の「合間合間」感のなさと、むしろ買ってついてくる箸の「合間合間」感のギャップに心を惹かれた。へんな表現なんだけど、短いスパンで観覧車に何度か乗ることがあれば(それはほんとに偶然なんだろうけど)、それだけで不思議な感慨があるだろう。むしろ日常の細かなことでも継続的にあることに挟まれる。非日常の頻度がまあまあ高いレトリックがたのしい。
氏の発表歌はだいたい読んでいて今回思うのは言葉選びにかわいいものの傾向が強かったこと。「行かないと」の名詞化や「ぽこぽこぽこぽこ」、「なんだかすごく」に七音を使うなど。接続も比較的わかりやすくしている気がした。その代わりにあるものは、きみ、そして主体自身に向けられたある種の素直さだと感じる。
車一台ぎりぎり通れるトンネルに突っ込んでいくときの気持ちで /同
ひとがみな竹輪と化したあの冬の朝焼けとなり眠るのでした /大橋弘『今、夢想することの手堅さと引き換えに』
「あの」冬が強い。限定することで竹輪になった人間という夢想に妙なリアルが加わる。画一的群像の喩ともとれた。とにかくそれは終わったことで、さらに主体はそれを振り返り朝焼けという竹輪を覆えるものになるという。奔放な景にくらくらした。
題に夢想とあるように、なにかがなにかに変形しまくる。その必然性まで読み切るのはむずかしいが、提示された変形からその物体の性質になぞらえた読みを引き出せるようにはなっている。しかして題からすればこういう夢想は「手堅さ」があるようだ。そういう意味では飛躍の強い変形も、その奥にあるもっと形にできない心情の定着化なのかもしれない。
僕たちの綿のからだを包みこむ檸檬の皮で作られた、酒 /同
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