評bot 11
今回も始めます。趣旨は下のツイートをご参照ください。なお、ご利用者様は敬称略にて失礼いたします。
ちなみに評botは本日から8月12日(木)まで、夏季休暇をいただきます。期間中のご利用は大歓迎ですが、お返事は13日以降となりますことご了承くださいませ。
喜寿の「喜」を七七七と書き祖母は今日も隣でドル箱を積む /梅鶏
「㐂」で書くってことですね。要するにスリーセブンのことで、ドル箱というとパチンコ玉のあれでしょうから、それを「積む」となるといかにもスロットの強そうなおばあちゃんだなと思います。この「おばあちゃん」、すごく面白いですよね。喜寿なのかはともかくスリーセブンの漢字を当てて、バリバリやってる感じ。考えるだけで笑っちゃいます。
と同時に、この面白さは「おばあちゃん」の面白さであって、主体の手柄でもなんでもない、ということはあります。手厳しいかもしれませんが、この歌はエピソードの紹介の範囲にとどまってしまっており、これだけでも短歌になるとは思いますが、この歌が歌として成り立つのは歌の中の「祖母」のおかげです。
個人的には「隣で」をもっと掘り下げてほしいなあという感じです。主体も隣で一緒にやってるんでしょうか? そういう位置で「祖母」を見ているからこそのもう一つが、この歌を主体の短歌にするのではないかと思います。初句二句も「㐂寿と書く祖母は」と省略可能と言えば可能なので・・・もちろん、「祖母」をしっかり立たせるという意味ではこのままでも全く問題ありません。
ご利用ありがとうございました。
マスターが星を溶かしたカクテルのそれは炭酸 換えときますね /袴田朱夏
こう、わかるようで、いまいち掴み切れないところがあります。「それ」というのは「星」のことなんでしょうか。カクテルそのものの性質? 「換えときますね」は、何を換えておくのでしょうか。グラス?
読みとしての想像はつくのですが、はっきりとした景の立ち上がりが難しいなと思います。ここを迷うのは、作者にとっての「星」の位置づけはどこなんだろうと思うからです。「星」は比喩として、それを比喩のまま進めたいのか、「炭酸」として種明かししたいのか、そこに迷ってしまうとどう読もうかなあと困る感じです。
こういう場所ってそれなりに酩酊もしているでしょうから、こんな感じのふわふわした言葉の連結になること自体は良いと思いました。何を言われているのかわからない、というのも一つだろうと思います。ふわっとつかめはするものの、そこで止まってしまうので、それ以上の効果を意図されているのであれば、申し訳ありませんが私には想起することが難しかったです。
ご利用ありがとうございました。
撓んでくL型レンチ噛み合う鉄が動かなくなるまで擦れる /千吉
「L型レンチ」を思ったときに、これが「変形する」ということはよくわかったうえで、「撓む」なのかどうかはちょっと引っかかりました。ただ、レンチで締めているものが限界まで達してもレンチに力を加えているということで、そこには「撓み」があるのかもなと納得はしました。
なんの「鉄」かはわからないですが、レンチで締める過程だけを着目して描き切ったという意味では、軋んでいる景がたちのぼってきてよいと思います。ただ、動詞がちょっと多いです。なにがどうなっているのかがぼやけるので、ここは別の表現で言い換えるなどして、どこにピンポイントに動詞を使うかを検討したほうがいい歌になるような気がします。
韻律につきましても、31音ではあるのですが、三句と四句の間を無理に跨らせると韻律がきしみます。「かみあうて/つがうごかなく」はやっぱり不自然なところがありますので、着目されているところはすごく短歌的でよいところだと思いますから、全体的に整えていただければいいんじゃないのかなあとは感じております。
ご利用ありがとうございました。
今回は以上です。
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