第二回笹井宏之賞応募作品「プレイリスト」
2020年2月1日発売『ねむらない樹』vol.4にて、最終候補作品として10首掲載いただきました。ありがとうございました。
プレイリスト 御殿山みなみ
イントロに反応したらちがってて翌日にそっちを口ずさむ
うきうきの露出をしても歩道にはうきうき罪ということば、ない
残念賞が一万円のくじ引きを考えついてからの寄り道
噛む子ではないといわれている犬に睨まれる 目線もついてくる
垂れ幕のなに部か読めなかったけどここは全国五位がいる街
トンネルを無害なうちに通り抜けしこたまスキップをしています
路地裏にくしゃみをすれば顔じゅうにわたしの捕手が投げかえす風
程々のうしろのほうのほどになりかんたんな調理で胸をはる
ナス苦手だったんですと上向く箸のとてもよかった逆じゃなくって
どれだけの天然芝がいっせいに萌えるとこからあなたはきたの
つぎに会う日を決めたとたんにさよならは駆けてくる着ぐるみで駆けてくる
喜怒哀楽ルーレットに棘を放って、はずしたそこも楽だったのよ
うれしくて夢にまでみた昨晩を詠めば詠むほどふえてゆく色
テレビから厳しい自然 明日から本気を出したことがあったな
労働を海でたとえるときまたも転がってくるビーチボールの
ゴミ出しのあとに出てきやがるガムのひとつぶだけ残ってくれている
悩みつつあごに触れれば上顎には触れてないからもうそればかり
シャチハタがそっちを向いてとれたのは平気なふりのうちふりのほう
カメムシに詳しい? って唐突に うしろで雲はじわじわ右に
裏声をわらわれながらカラオケのこんなにも創英角ポップ体
掃除機がほそいノズルになるようにみんなそのせりふをおぼえてた
絶景にかぎって撮ってないことを死ぬまで困りなおすんだろな
すごい幹事が帰ってからの二次会の枝豆がそのままわたしたち
颯爽と新幹線が去ってゆくようで意外とながいんだねえ
アルバムで聴けばつながってた曲の、降ってくる幸せもあること
クーラーのそばできもちのいい汗の定義をさぐることだね 夏とは
買い出しのさなか駄洒落の才能があふれてしまうから聞いてくれ
きりのいいおつりになってないレジの暗算をあなたに聞かせたい
なんとなく羽根つき餃子にしたことがよかったなあが二回目ですな
信号が変われば散ってしまうけどひとまず同じうちわの奴隷
燃えるように暑いね だけど燃えてないわたしになんとアイスもあるよ
ついたちにあららとめくるカレンダーのついたちに絆をかんじてる
空耳の、おさないころに炊飯のボタンを押せば会えた音楽
スパイ映画の極秘情報かのごとくきのうの晩ごはんをおもいだす
すれちがう通路のどうもくせになるどうせ裏目に出る頭脳戦
リフレインのただきもちいい 病院で早口言葉を急がず読めば
字幕には変えてなかった吹き替えのそんなことわざではないでしょう
でも超合金だもん、ってそのへんの子どもがさけぶ そのとおりだよ
となりの市まで乗られた傘を受け取ってお侍さんみたいに帰る
これからもしらない花のなぜか揺れ悟りをひらいたらほとけさま
図々しいお願いがまあ図々しくてだけどいっしょに取り組むやつで
おもいだしわらいこぼれて練習がいちばんきれいだった三つ折り
天丼を頼めばあなたが同じのと言ってわたしもそれがよかった
周辺で動画を撮っているひとに持ち帰らせてしまう「花火やべー」
銭湯を出れば夜だとわかってて驚いてみせたら星ですね
生きていてほしい街だよひとつずつ(たまに同時に)灯りの落ちて
しっかりとおぼえるつもり この皿がじつはなんとか焼だったこと
夢だぞとふしぎとわかるお布団で買ってない宝くじに当たる
ただひとつ謎が残るとすればいま燕はいない季節なんだよ
アウトロは小さくなってゆきふいにわたしに告げられる次の駅
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