羽子田チカさんと手を繋いで『落日』を見てるのは誰かを考えてたら日が昇った。

 寝れないところに羽子田チカさんが突然イトイさん(ピアノが得意なV)の伴奏にセッションしたのを投げてきて完全に目が冴えてしまったので感想も交えて色々書き連ねてみることとする。

 落日、と聞くと寂寥や哀愁と言ったワードが浮かぴ、他のVtuberが突然深夜に投稿した日には『大切なお知らせ』よりも正体をなくしてしまうファンもいるかもしれない。

しかし、羽子田チカさんに限ってそういうことはない。と言っても羽子田チカさんの曲を『モッツァレラ・トライ・クッキング(通称MTC)』しか知らない人は酷く驚いたかもしれない。しかし、『メイム』や『落日』同様に深夜の2時間DTMでつくられた『心音』を聴いていればいくらか鼓動を落ち着かせられたことだろう。

というのも『メイム』はまだ1番しか公開されていないためはっきりとは言えないが、『心音』に関しては「日が沈む」とか生易しいものではなく「日が出ていようがなかろうが光が差し込むことは無い」くらいの印象を抱くくらいには重い曲なのだ。

そのため『落日』は寂寥感こそ感じるものの「羽子田チカという物語の終わり」を感じさせる様なものではなく、本当にただ「羽子田チカが忘れていない欠片のひとつ」であるように思える。

さて、羽子田チカ作品の中での位置づけ、温度感の確認はできたとして、気になるタイトルの件について考える、もとい妄想していくことにする。

まず、イラストについて注目したい。果たしてこの手を繋いでいる2人はいったい誰なのだろうか?一人は羽子田チカ本人としてその相手は?その手の繋ぎ方から察するに相当に関係が深い間柄と見える。

前提として注意すべき点が1つあると個人的に思っているので述べておく。羽子田チカさんが『羽子田チカの物語』としてコンテンツを出した時にそこに男女が描かれていたからといって『男女の恋愛』だと考えるのは早計である、ということだ。(これについては羽子田チカさんに限った話ではないと考えているが)

結局のところは受け取り手の判断にお任せする他ないのだが、ここはひとつここまで読んだついでにわたしの講釈に耳を傾けて欲しい。

そもそも羽子田チカが『男女』を描くことは稀である。さらに生物学的に「男女」を描いた際には、『お友達を描きました』などの断りがあることがほとんどである。また、初ライブ以降、親交のあるあくまのゴートさんとのやりとりを見たリスナーから2人を『男女』として見ているニュアンスのマシュマロがあった時には羽子田チカさんが自らそういう見方は本意ではない旨を述べている。


 前提の確認が終わったところで本題に戻ろう。チカさんと手を繋いでいるのは誰か。実は考えられるのは『狛犬なつく』以外考えられない。狛犬なつくさんについて詳しくない方はTwitterで検索したあとに、『ガーネット』や『きみとメモリー』を聴くと合点が行くはずだ。わたしが羽子田チカさんについて書いたnoteもあるので助けになれば幸いだ。

 もちろん親愛度で言えばライザ・フォン・ガルファンゼール16世、花園メアリさんなんかも入ってくるかもしれないがこの2人に関して何故対象にならないかの根拠を挙げると『羽子田チカの物語』では語られない、もしくはまだ語られていない箇所に該当する(と思うので)割愛することにする。

いずれにせよ、手を握っているのが『狛犬なつく』であることが不自然ではないことは『ガーネット』に登場する様子を見てもらえば納得出来ると思う。

しかし、ここからは完全に根拠もへったくれもないわたしの妄想なのだが、『ではなぜ今更隠す必要もない狛犬なつくという存在をあえて見えないようにして作品を投稿したか』が引っかかってくる。

 上に引用したツイートは『落日』のイラストを別に呟いたものに吊り下げられたものだがそこにも『狛犬なつく』の文字はない。イラストについてもあたりはつけてみたものの『狛犬なつく』である確証はない。

 前提で確認した通り羽子田チカさんは男女を書く際には『お友達の』と断りを入れることが多い。しかし、今回は俗に言う恋人繋ぎをしている場面のクローズアップ1枚のみ。これは実にスッキリしない。本人の口から詳細な説明が期待できない時には最もらしい推測を立てて1人で折り合いをつけるに限る。もちろんこの手の結び方を『恋人繋ぎ』として見てしまう穿った見方そのものが間違っていることを視野に入れる。

 ひとまず『どうして?』には目をつぶり、歌詞を見ていこう。と言っても『心音』同様に材料となるものが少ないのでこちらもはっきりしたことは何も言えない。

まず、『ひらひらと』というフレーズについてだが、これまでの話とは一切関係ないが『ダメニンゲンぱれーど』の「ぞろぞろと」というフレーズに似てるなと感じた。こういう音が好きなんだろうかと思うがここら辺は本人に聞いてみるのが早いかもしれない。

 それで何が『ひらひらと』したのだろうか?考えてみよう。まず、思い着いたのは蝶々だ。これは完全に音からの閃きで「あぜ道」というのにも合っていたが肝心の『落日』とはしっくり来ない。もうひとつはやはり桜の花びらだろう。こちらであればあぜ道にも合うし、落日の「落ちる」というイメージにもピタリとハマる。

 ここであぜ道に桜が咲いていることを念頭に置いて1フレーズ目を通して見てみれば、『落日の匂い』というのも確かにそんな匂いがしそうである。落日という情景だけでなく散る桜の匂いまで盛り込んだ「寂寥感」である。すごいと思う他ない。重ねて言うがここら辺はわたしの妄想なので話半分に聞いて欲しい。

 では次だ。

『ひとときの産声』、前の『ひらひらと』に調子を合わせているのは分かるが何を指しているかは先程よりも随分取っ掛りが少ない。取り敢えず前が桜ならば何か春に関するものではないかと考えてみた。すると、特定の何かを当てはめなくてもいい気がしてきた。

 というのもこのフレーズで大事なのはあくまで後ろの『君は此処にいないのに』であるからだ。本来ならばもっと早い段階で「おや?」と思わなければいけないところだったが恋人繋ぎに目がいって重要事項を見逃していた。つまり、絵に描いてある時間と歌詞にある時間は違う、という点だ。

 ここを意識すれば「ひとときの産声」というのは「もの」と言うよりかは「時間」を指している言葉であるように思う。つまりは「ひとときの産声」が指すのは今、この春に産まれた命のことを指すと同時に、記憶にあるきみといた春のひとときを指すのではないだろうか。しかし、あの時に手を握り隣を歩いていた君はいない。というような感じではなかろうか。

 最後の『ひとときの産声』は絵との合わせ技なのでかなり捻りが入っているが先程引用したツイートとも合わせるとなるほどしっくりくる(ような気がする)。

 と、「君は此処にいないのに」をしっかり考えてみるとやはり『狛犬なつく』以外に『羽子田チカ』の手を握れるものはいないように思う。似たようなフレーズは『きみとメモリー』にもあるので恐らくはそうだろう。

 ではなぜ、確信を持たせなかったのか。これはもう色々と良いように、かつ羽子田チカさんらしい理由を想像する他ないのだが2通り考えてみた。

 ひとつはこれはひとつの『羽子田チカの物語』ではあるけれども、それとは別の所で音楽的な試みをしたかった、というものである。そもそもとしてメロディはイトイさんのものであることからも「羽子田チカ」や『狛犬なつく』などのキャラクター的、符号的な要素をとっぱらって純粋に音楽を聴いて欲しかったのでは?とも考えられる。しかし、こちらはあったとしても本筋の意図ではないようにに思う。なぜなら#チカのかけら のハッシュタグがしっかりとつけられているからである。

 2つ目は、正しくこうやってリスナー、というか『羽子田チカの物語』読者に色々と思案を巡らしてもらうのが狙いではないかと思う。思い上がりも甚だしいと鼻で笑われるかもしれなが、それにしたって色々考えてみるとやっぱり意図的に『狛犬なつく』の名前を挙げていないように見える。 

 『狛犬なつく』を知らない人でも一体この手は誰のものなのだろうと不思議に思うだろう。誰かはマシュマロなり、リプなりで尋ねるかもしれない。そこで初めて『なつくは羽子田の北海道時代からのお友達です』と答えればなるほど『狛犬なつく』というのは羽子田さんにとって大事なんだな、とこうなるわけだ。

 もちろん、過去の動画やツイートをさかのぼれば自ずと答えは得られるし、羽子田さん自身が『狛犬なつくというのは私の友達なんだけど今は側に居なくて寂しい』とツイートしても情報は伝わるだろう。しかし、それではどれだけ大事か、どれだけ寂しいかを伝えるには足りないと考えたのではないか。そして何よりも、文字数や様式に縛られた言葉では伝えられない胸にある想いを届けられないもどかしさはこの文章を読んでくれている諸兄には想像に難くないだろう。そのために羽子田さんがひとつ自分の作品を書いたのではないかと考えるのは少し考えすぎだろうか。

 長くなったが以上で『落日』の感想と妄想を終わりしたいと思う。一応まとめておくと

羽子田チカの手を握って落日を見たのは『狛犬なつく』

ということになる。これだけ言うのに良くもまぁこれだけ書いたもんだと呆れるが、飽きずに最後まで読んでくれた人がいたら感謝すべきだろう。ありがとうございます。

最後になりますが素敵な音楽を届けてくれた羽子田チカさん、宮橋さん、イトイさんに向けて。眠れない夜ほど辛いものはありませんが、寝たくないと思う夜ほど楽しいものもありません。ありがとうございます。タイトルの通り、もうそろそろ朝日が昇る時分ですが実に愉快でした。御三方の作品、これからも楽しみにしております。

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