見出し画像

はるかカーテンコールまでデジタル栞文-番外編-

 『はるかカーテンコールまで』デジタル栞文2回目のはずでしたが、担当割り振りのときに間違えて10月6日を抜かしてしまったので著者が出張って番外編をします。あ、笠木です。
 とはいえ何を書いても野暮になるな、と思って、この間大森靖子(同い年!)がライブでやってた「私の天国へようこそ。『流星ヘブン』」っていう曲紹介がかっこよかったので、真似します。

---
番外編:本をひらく前のMC

 ここまで生き延びるとは思ってなかった。
 だけどずっと、死ぬまで短歌をやめない確信はあって、そう考えるときの「死ぬまで」はちゃんと遠くの死だった。したくてする夭折ほどダサいものはない。
 歌集に入れなかった歌も、誰にも見せていない歌も、おどろくほど折にふれて思い出される。ある友だちが「わたしは全部ちゃんと連れて行きたいんだよ」と言っていたことを思い出す。そういう甘い烙印が全身にある。
 反故になった約束も、最後だと思わないまま交わした声も、別れてしまった人も、あんなに心を焼き尽くした醜い気持ちも、時間は残酷に潔癖に置き去りにしていく。だけど。
 いつかずっと先の明日、まばゆい照明の下にまた集まって、同じ舞台の上に並び立つような気がしてならないのだった。楽観でも諦めでもなく、信じている。
 何度も忘れて、何度でも別れて、けれど全部ちゃんと連れて行こう。あなたも。僕も。
 そのときまで、またね。
『はるかカーテンコールまで』。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?