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CAオサスナ 19-20前半戦の選手振り返り①GK・DF編

 エル・サダルでは時折不思議な事が起きる。アウェイのチームが出したパスがことごとくオサスナの選手に拾われ、オサスナの選手がパスを出せば必ずチャンスに繋がり、よく見ればオサスナよりも予算規模がはるか上であるはずの相手チームは陣形もいつの間にかボロボロに崩れて、それを見たオサスナのファンが腹の底から歓声を上げ続ける、そんな魔法にかけられたような光景。私はそれを見ると感情の高まりがどうにも抑えられなくなり、我を忘れて芝生の上の出来事に熱中してしまう。あれは何だ?アビラが執拗にボールを追い回し、ダブルボランチは果敢に前へ出てプレスをかけ、サイドハーフやサイドバックはインターセプト、センターバックがロングボールを永遠に跳ね返し続け、それでも防ぎきれなかったとしてもGKが絶対に通さない。その姿勢こそが魔法の正体か?それとも監督ジャゴバ・アラサテが齎したチームの一体感か?いや、どうもそうではないらしい。というのもオサスナはこの魔法が何によるものか、実は半年も前に答えているのだ。曰く、“ LA MAGIA ERES TÚ “。どうやらデバイスの前で独り熱を浮かせている私も画面越しに見る不思議な出来事と何らかの繋がりがあるようだが、それはきっと赤いシャツの男達に魅了されて火照った身体の事だろうか。それを毎週繰り返して、私達は他のどこでも体感出来ない魔法を求めて次の試合を待ちきれなくなる。


GK ゴールキーパー


13 Rubén Martinez ルベン・マルティネス (35)

 プリメーラのゴールを守る他チームの神共に全く引けを取らないセービングでチームを危機から救い続けた人類最強GK。今シーズンも人間に止められる範疇のシュートはほぼ全て止め続け、怪我で離脱するまではチームの驚異的な負けの少なさと異常な数の引き分けに貢献した。もちろん勝ちにも。

 守備範囲も身体能力も足元の技術も飛び抜けて高くはないが、「人事を尽くすまでは絶対に天命を待たない」芯の強さと忍耐力で、ギリギリまで溜めておいた判断とそれによって研ぎ澄まされた反射神経はプリメーラの舞台でも十分に通用していて、なんだかんだこの人がゴール前にいると1番安心するので、無事に復帰して下さいね。


1 Sergio Herrera セルヒオ・エレーラ(26)

 今シーズンも2ndキーパーとしてベンチを温めている事が多かったが、ルベン・マルティネスの怪我で出場機会が回ってきた飛び出しの王。身体能力が高く人類には止められないタイプのシュートも時に止めてしまうYouTube向きの才能を持ち合わせており、守備範囲も広くてパスの精度もそこそこ良いのだが、如何せん判断を最後まで待てないというか、1 vs 1の場面で簡単に運を天に任せたタックルを敢行してしまうギャンブル癖が災いして、本来の才能から鑑みると止められそうなシュートも決められてしまう場面が今シーズンも幾つか見られてお前はルベン・マルティネスの何を見ていたんだと思わされたが、前半戦最終盤となったアトレティコ戦とソシエダ戦ではシュートの雨霰を幾度も止めて、完全にぶっ壊れた守備を何とかカバーし試合の体裁を成す事に尽力した(※もちろん負けた)。酷い事考えちゃってごめんね。

この2試合では飛び出しもほぼ全て当たっており、そもそも判断自体が非常に的確でちょっとビビった。ソシエダ戦なんかは特にとんでもない精度のロングパスを何度か通しており、ようやく神の世界へ足を踏み入れかけているのかもしれない。いいからはよ行け。


26 Juan Pérez ファン・ペレス(23)

 ルベン・マルティネスとセルヒオ・エレーラが同時に怪我したので急遽プリメーラのゴールマウスに立った生え抜きの第3GK。セルヒオ・エレーラより落ち着いた判断、セルヒオ・エレーラより安定したキックの精度で出場した2試合は1勝1敗と幸先の良いプリメーラデビューと相成って、SDのブラウリオ・バスケスが「俺が第3GKまでちゃんと揃えてた意味がわかった?(※悪意のある訳)」と得意げな表情で語ったインタビュー記事が地元の新聞Diario de Navarraにて掲載された。そうだね凄いねお前が世界でNO.1のSDだよ。正確な役職名の略称はDDだけど。DDおじさん。

偉いおじさんの話はさておき、ファン・ペレスはオサスナとの契約を2022年まで延長。いつか正GKの座を勝ち取る日が来るのか。現在は怪我で離脱中なので、とりあえずは何事もなく戻ってきて下さい。




37 Iñaki Álvarez イニャキ・アルバレス(22)

 トップチームのGKが一気に2人も離脱したので急遽駆り出されたオサスナ・プロメサス(Bチーム)の正GK。今のところトップチームでの出番はまだ無さそうではあるが、GKのクライシス状況が続けばチャンスがあるかもしれない。頑張れ。


CB センターバック  


5 David garcia ダビ・ガルシア(25)

 CBの中では1番たくさん試合に出た人。特に高いジャンプ力を活かしたロングボールの競り合いで強さを発揮、そこそこ正確なロングキックは今年もサイドチェンジで活き、まあそこそこチームの武器にもなった。それ以外の能力はリーガで特別優れているわけでもないが、特別劣っている部分も無いため、組織さえ大崩れしなければきちんと機能するのでプリメーラでも重宝されている。そのため地上戦最強CBのウナイ・ガルシアが完全復帰した後もこの人が今シーズン中にポジションを奪われる未来はあんまり想像出来ないくらいチームへの貢献度は高いのだが、なんというか全体的にもう少し能力値が上がったらいいのになと思われるタイプの選手ではある。もっと壁みたいに分厚くならないかなー。


23 Aridane Hernández アリダネ・エルナンデス(30)

 今シーズン前半戦でオサスナファンを1番ビックリさせた進化系アフロ。シーズン初めのまとめにも書いたが、とにかくポジショニングと判断の改善が著しく、能力的な意味でも機会・状況にそぐわないという意味でも出来ない事は一切やらなくなり、残ったのは強靭な肉体を活かした圧の強いマーキングとなんだかんだ鋭いグラウンダーのパス。この人の所から発生した失点というのは殆ど無いのでは、というくらいハイパーな活躍で前半戦の好成績に大貢献、現状オサスナで最も頼れるCBと言えるレベルまで成長を遂げてしまった。アリダネが怪我で何試合か欠場していた時の不安感とか半端なかったからね。しかも復帰したらしたでセットプレーからヘディングで点まで取って来て、「知る人ぞ知るリーガの名CB」という言葉が頭を離れない。30歳にしてサッカー界のスーパーアフロマン列伝に名を連ねられようとしている。最終ラインで酔っ払ったみたいにフラフラしてた頃のアリダネちゃんはもういません。


3 Raul Navas ラウール・ナバス(31)

 足がマジで遅いので出場機会は多い方では無いが、特に大きなやらかしをする事も無いのでCBの3番手として十二分にベンチの層を厚くしてくれている。後ろ向きに走ってる時以外の身のこなしはなんというか「高貴」で、3バックの真ん中とかに取り敢えず置いてみたい衝動に駆られるが、多分その機会は無い。足元も配給もわりと上手い方ではあり、本当に走るスピードの遅い事だけが短所というわかりやすさが逆にファンとしてはノーストレス。後半戦はウナイ・ガルシアとどっちが多く起用されるか期待。


16 Facundo Roncaglia  ファクンド・ロンカリア(32)

 どちらかというと本職のCBというよりは右サイドバックの控えとして起用されていた。スピードもボールの扱いも十分現代のサイドバックの水準に達しており、CBの選手らしい対人守備や被カウンター時にゴール前を埋める献身性で貢献したが、とにかくいらん事で何回も退場してしまうのでファンとしてはあんまり信用できない選手という印象が残ってしまった。基本的に控え選手なのに前半戦で退場2回はちょっと多すぎるのではないか。

 CBは昨シーズンの主力ウナイ・ガルシアが復帰、右サイドバックは左サイドバックだが右もできるらしいトニ・ラトが加入、さらにモンカジョラもこのポジションで持ち味を発揮できることが判明し、後半戦はどれだけ起用されるかわからなくなっているが、どうやらリケルメが監督を務めている祖国アルゼンチンのボカ・ジュニオルスから声がかかっているらしく、先行きが不透明。退場さえしなければ……。


4 Unai Garcia ウナイ・ガルシア (27)

 昨年11月に前十字靭帯の故障から復帰した地上戦最強CBは今シーズンにリーガで1試合に交代出場とコパにフル出場、いずれも右サイドバックを務めていた。リーガでは地上戦、空中戦いずれも完璧な対応を見せ、コパでは軽く引くほど精度の高いサイドチェンジで決定機を演出、復帰早々ヤバイくらいプレーの質が高い。まだプリメーラにはベンチに入ったり入らなかったりを繰り返しているが、ファンとしてはこの人がプリメーラでCBとして活躍する姿を早く見たくて堪らない。とはいえ現状はダビガルとアリダネのコンビが非常に安定しているので、ウナイ・ガルシアでもそこに割って入るのは中々容易ではなさそう。守備陣はマジで層が厚くていいよね……。


SB サイドバック


2 Nacho Vidal ナチョ・ビダル(24)

 前半戦終盤は怪我に泣かされたものの、サッカーが上手すぎるので出た試合では攻撃の出発点、中継点、終点どこでも大活躍。右サイドバックなのに10番みたいな攻撃能力でチームの遅攻を引っ張った。反面、空中戦が強くなかったり、スピードやフィジカルの強さはそこまで凄くないので人外系のセンターFWやウイングと対峙すると弱みを見せてしまったが、それでも守備センスが低いわけでは無いので狭いスペースの地上戦なら化け物ウイングとも渡り合えなくも無いので、まあ収支は黒字なのではないか。そもそもリーガに化け物ウイングそんなにいないし。なので後半戦もお願いします。


16 Lillo Castellano リージョ・カステジャノ(30)

 特に悪い事してないのにびっくりするぐらい干された。ナチョ・ビダルが怪我してても平気でベンチ外、コパですらもベンチ外、全然試合に出られなかった。まあ攻撃でもロングパスを前に放るだけ、守備も特段強いわけではなく、純粋に右サイドバックの戦力としてロンカリアやモンカジョラに劣ると判断されたからだと思うが。状況からしてもうアラサテの構想外なのかもしれないので、冬に出ていく可能性大。いちおう17-18はレギュラーだっただけにこの状況は見てる側にもつらいものがあるが、とにかく幸せになってほしい。


30 Pervis Estupinan ペルビス・エストゥピニャン(21)

 この人の評価はかなり難しい。加入直後は、足がめちゃくちゃ速くて当たりもそこそこ強いしボールタッチもキックもセンスがあるけど守備でもビルドアップでもポジショニングや身体の向きが壊滅的で、背が高い割に空中戦も競れない、アーリークロスも蹴れないっぽい素材の味そのままの超ピーキーな子だったのが、試合を経るごとに同サイドでの守備対応は洗練されてエイバル戦はオレジャナをほぼ完封、どんな試合でもインターセプトを山ほど生み出し、ビルドアップもちょっとずつだがスムーズに行えるようになったお陰でついでにドリブルも上達、クロスも球種が豊富になって既に今シーズン2アシストを記録、そして遂にエクアドル代表のAチームに招集された。ついでに写真映りがめちゃくちゃかわいい。

 ここまで見ると順調に成長を遂げているように見えるが、シーズンが進むにつれて、逆サイドからの被カウンター時に相手のマークを簡単に外したり、最終ラインをそろえるのを忘れて本来オフサイドに出来たシーンで失点に繋げてしまったり、DFラインの一員としてはまだまだ未完成にも程がある。12月はその辺が相手にバレて弱点を突かれまくってちょっと可哀想だったが、この辺りは能力的にエストゥピニャンの性質と合ってない気がするので、改善は容易じゃないかも。

 とは言え、この人の異常なまでのスピードはオサスナの攻撃において既に中心的な武器になっているため簡単に変えようが無い、というかそもそも十分に信頼できる替えがマジでいなかったので、この人の存在は「オサスナの可能性と限界」そのものであり、エストゥピニャンの成長度合いにオサスナの前半戦の成績がかかっていたと言っても過言では無いのではないか。そんな中で前半戦を全試合ほぼフル出場し続けた偉業はちゃんと褒められるべき。なでなでしてあげたい。


29 Endika Irigoien エンディカ・イリゴイエン(22)

 左サイドバックでエストゥピニャンがトップチームで全試合フル出場し続けたため、プロメサス(Bチーム)でセグンダBにキャプテンとして出ていた。エストゥピニャンよりは確実に安定したプレー振りを見せてくれる様子をちょこちょこ見せてくれるが、トニ・ラトも加入したので今シーズンはトップチームでの出番がほぼ無くなりそう。頑張れ。


15 Toni Lato トニ・ラト (22)

 冬にバレンシアからローンでやってきた攻撃的な左サイドバック。今シーズン前半はPSVに貸し出されいたがあんまり出番が無かったみたい。ドリブルが上手くてクロスが正確、ビルドアップも結構できるっぽく、一部では昨シーズンの主力であったカルロス・クレルク(現レバンテ)っぽいと専らの噂。右サイドバックも出来るらしく、エストゥピニャンと左サイドバックを争うのか、左も右も出来る万能の控えに収まるのか今後に期待。

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