隣のクラスの女子にビンタされた話

バレンタインの思い出を書いたら思い出した話。


中学の時、教室の掃除を数名でしていたら隣のクラスの女の子が無言で我がクラスに入ってきて、こちらを睨み付けながら僕の目の前に来た。
話したことの無い女子だったので驚いていると
「バシッ!」
いきなり強烈なビンタが僕の頬にヒットした。
「ふざけないでよ!」
????
彼女は手にした小さなメモを床に叩きつけて教室を出て行った。

静まり返る教室。
唖然とする僕。
とにかく頬が強烈に痛かった。

誰かが床に落ちたメモを拾い僕にくれた。
小さなメモを広げるとそこには、
「○○さん あなたはバラの様に美しい。あなたが好きです。 B組 ××」
と書かれていた。

××は勿論僕の名前。
「えええええーー!」
全く心当たりがない。
誰かのいたずらラブレター。

それで僕はビンタされた訳か。
…………。
でもさ、ラブレター貰ってビンタする?
あの子もなかなか強烈だ。
結局その事件はそのまま終わったのだが……



1年以上が過ぎて、たまたま委員会でその子と同じになり、何故か当番も一緒になり放課後何回か一緒に作業する事があった。

そして二人きりのタイミングで遂に言ってみた。
「去年のラブレターだけど、あれ俺書いてないから。」
「…………………………。」
無言かよ!
「いや、本当に書いてないのよ。あの時○○さんの事知らないし、だって」
「わかった。」
ボソリと一言。

何か信じてなさそう再チャレンジ
「いや、本当にぼ」
「もう一回ひっぱたくよ。」
え!
はりつめる緊張感。
恐すぎる、そこからは無言で作業を進めた。
と、とにかくこの人、恐すぎる。
出来るだけ近づかないでいよう。
その後の委員会は黙々と過ぎていった。


そして卒業間近のバレンタイン。

意外な人からチョコをもらうのだが、その1人が彼女だった。
「叩いてごめん。」
まさかの『わびチョコ』だった。
どこかでラブレターがいたずらだったと気づいてくれたみたい。
卒業前にモヤモヤが晴れて良かった。

で、そのまま卒業。
たぶん人生最初で最後の、いきなりビンタの話。



それで物語は終了だと思っていた。
が、わりと最近意外な事実が判明。
当時の友人達と久しぶりに飲みに行ったのだが、その最後の方で親友からまさかの告白。

「昔、いきなりビンタされた事あっただろ」
当時クラスメートで1番仲のよかったCくん。
彼は仲間うちでも有名な最もクレイジーな、Mr.トラブルメーカー。

「あの犯人俺だよ。」
「は??」
一瞬なんの事かわからなかった。

「あのラブレター、俺が書いた。」
「えええ!」
なんでそんな事!

否、こいつならする。そんな奴だった。
『20年目の告白』そんな様なタイトルの映画あったな、なんで20年以上経ってから突然……

「あの時お前の事嫌いだったのよ~。」
そうそう、お前はそんな奴。
理不尽に自分以外の世界を1度は嫌う奴。
それがC。

百歩譲って1番仲良さそうにしてた親友を嫌うのは理解する。
「なんで○○さんなんだよ。」
そっちが本当に謎。
縁もゆかりもない女子をなぜターゲットに?

「小学校が同じクラスで振られた事あるから。」
あ~。怨みに思うタイプね。
嫌いな奴の足し算ね。
危険人物と再確認しました。

「ほかにも向日葵のパターンとか、桜のパターンとか花シリーズでラブレター送ったのよ。」

なるほどね。
しつこく送り続けたので、あのビンタに繋がるのか……。しかし花シリーズって何だよ、センス無さすぎじゃねーか!

「△△さん あなたは向日葵の様にいつも輝いてますね。好きです!、とかな。」
「………………。」
まて。
本当に待て。
本気で待ってくれ!
コイツのクレイジーは予想をはるかに上回る。

「花シリーズ。それは、○○さんだけに送ったのではなく、多数の女子に送ったの?」
「そうだよ。当時ムカついてた女子に。4、5人かな。全部お前の名前で送っといた。」
「…………。」
神様!
Cに天罰を!

ここからは推察。
○○さんは別の誰かにもラブレターを書いているのを知ってしまったのかと。
同時に複数の女の子にラブレターを送る変質者の僕に鉄拳制裁したのかなと。

謎が解けてスッキリするどころか、ゾッとした。
知らないところで僕は嫌われてたか、変に意識されてた可能性あるわけね。
こわ!

そんな、損なビンタの話。

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