歌舞伎NEXT 朧の森に棲む鬼 2024/11/30昼夜・12/5夜・12/8昼夜
2024年2月だったか、歌舞伎NEXTとして【朧の森に棲む鬼】が上演されると発表になった時から、約1年間、この年末を楽しみに駆け抜けてきたような1年だった。
TOP画は、今年の2月に人間豹を観に博多座に行った時の千穐楽。
博多座さんの粋な計らいに、これは来年の2月も戻ってこなければかな・・・となり、まんまと2025年2月も博多座に戻りますw
遠慮なく書いているのと、普通にセリフにも触れているので、ネタバレを避けたい方は、観劇前は読まない方がよろしいかと存じますmm
幸ライと松ライ
初日から、幸ライ3回、松ライ2回観た、中日の私の感想、2人のライについて。
幸ライは、純度1000%の悪。圧倒的な悪の美。
磨かれて煌めくブラックダイヤモンドの結晶のような。
スケールも迫力も、この人はダークヒーローを演じるために存在する、と言っても過言ではない、と思う。
松ライは、もう少し人間。ある人間が、気づけばコントロール不能な悪に転がり落ちていく、破滅に向かう人間はこういうものなのだろうか・・・そんなライ。
どちらも、中日すぎて、後半になったらまた変わるところもありそうだけど、幸ライはある程度完成されていて、今の形から大きく変わることはなさそう。
ただ、悪がどんどん研ぎ澄まされていきそう。千穐楽はどれだけの悪を浴びることになるのか、ドキドキする。
松ライは、これからもまだまだ変化する、多分。初日と2回目でも、変化してたので、そういう意味でワクワクする。
ちょっと幸四郎さんに傾いちゃってたのだ、初日。ただ、2回目に観た時は、すでに松也らしさ、というものがあったので、面白いぞ〜!と思った!
2人のライの違いは、もちろん解釈や役作りの違いにもあると思うけど、ご本人たちの来し方も反映されている、と思う。
幸四郎さんは、ある意味、生まれた時から王だ。
王として、王としての環境で生きてきた、と思う。
なので、最初に朧の森でオボロたちに出会うシーンで「王!?俺がか!?」というセリフが、すでに王なんだよな・・・と感じられた。中身の詰まったセリフの圧があって、私は勝手にそう感じていた。
実は自分でも、王になることを一度くらいは空想していて、言い当てられて本当にドキッとした、というような。
もしくは、オボロたちに言われたことで、確信に変わったような、そんな感じ。
松也は、王ではなかったが、実力で上に上がってきた人だ。
常に周りの人を見て、自分の動き方などを、賢く考えてきた人、だと思う。
出し抜くとかそういう意味じゃなくて、全員が円滑に進むためには、などの視点で。
同じく「王!?俺がか!?」のセリフは、こちらのライはシンプルに驚いていると思う。
考えたことはない、けど、心のうちにある欲を、オボロたちによって具体的な”王”というイメージにされたことで、なるほど、それを望んでも良いんだな、と思い始めてしまったのが、破滅の始まり・・・みたいな。
それをなんとなく思ったのは、運良く当選した制作発表の記者会見でのこと。
常にそれが当たり前である、というように中央にいる人として存在する幸四郎さんと、私たちただのファンに対しても、写真撮影の後で、近くの人たちにだけだったけど、順番に一人一人に目を合わせて「ありがとうございました」、と笑顔で声をかけてくれた松也と。
どっちが良い悪いの話ではなく、純粋に「そういう違いが」と感じた話。
やっぱりそれが同じ役をやっても、反映されているように、私は感じる、という話。
幸ライはあっという間に、人から人ではないナニカに駆け上がっていく。現実にはありえない、破滅的な悪の大輪が狂い咲いている。それが美しい、と感じさせるのが、この人ならでは、なんじゃないかと思う。
松ライは、最後まで人の範疇にはいる、と思う。どこまでが自分の意思だったのか、どこからは自分の意思を離れて、もう引き返せなくなってしまった哀れな人。悲しくて切ないライ。
どちらもキンタがあってのことで、それはまた別のnoteで書きたいけど、とにかく、1つの同じ脚本で、主役を演じる役者が違うだけで、観終わった後の気分が変わる不思議。
ダブルキャストだったからこそ、朧の森に棲む鬼というお芝居が、見え方変わるんだ、と気づけて、より一層深みが増した、というか。
新感染に狂っていた人間なので、やはり新感線と現・幸四郎さんの組み合わせが至高なのだけど、そればっかりじゃない、脚本の可能性は役者で変わるんだ、と思ったりして、それはそれでとっても悩ましい。
だっていろいろ観たくなっちゃうから・・・
売り方はわからないけど、円盤が出たら、そりゃどっちも買うわ!!!
ダブル主演のプレッシャーは、ご自身でも仰っていたけど、でも引き受けてライを演じてくれてありがとう、松也!!!
幸四郎さんとのダブル主演が、あなたでよかった、と本当に思います。