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    #創作大賞2024 応募作

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【完結】【創作大賞2024 ミステリー部門】『ノイズキャンセラー』あらすじ&目次 

あらすじ 宮崎琢磨は、高校最後の夏休みに通り魔事件に巻き込まれ引きこもりになった。悶々とした日々を過ごす中、いつしか自分も大きな事件を起こしてやろうと思うようになっていた。  佐藤亜沙美は勤め先の客からストーカー被害に遭い仕事を辞めた。隣県に移り住み、コールセンターの仕事を見つけ、働きながら立ち直ろうとしていた。  新山和哉は銀行から保険会社に転職し、思うように成果を上げられずにいた。後悔しようが銀行に戻れるわけもなく、なんとか保険の営業で成功しようと、もがいていた。  そ

    • ノイズキャンセラー エピローグ

      第一章はこちら エピローグ  警察から、琴美を誘導し亜沙美を監禁させた人物を逮捕したと連絡があった。 『オーバーナイト』を名乗っていたのは、宮崎琢磨だったことがわかった。忘れもしない、新宿の通り魔殺人事件に巻き込まれて、それきり学校へ来られなくなった同級生だ。  同じクラスだった頃、宮崎琢磨から嫌な印象は受けなかった。きっと、通り魔事件のせいで歪んでしまったのだろう。  ひとまず、相手が誰かわからずにおびえる必要はなくなった。『教唆犯』がどのくらいの罪になるのか、亜沙美に

      • ノイズキャンセラー 第十七章

        第一章はこちら 第十七章  新山が殺した女性は『村田琴美』という名前だった。芹沢の同僚だったようだ。ワイドショーや週刊誌の記事を新山はさりげなくチェックしていた。  警察は芹沢の行方を追っているらしい。  もし仮に、芹沢が駅の防犯カメラに映っていたとして、旅行先が舞鶴だったことはなかなか特定できないだろう。たとえ舞鶴だとわかっても、新山の家に来ることが目的だったとは誰も思わない。それだけ、芹沢の取った行動が常識を外れていた。  芹沢の衣服と持ち物を処分したが、携帯電話は持

        • ノイズキャンセラー 第十六章

          第一章はこちら 第十六章  芹沢の夢を見た。  目覚めた直後に、亜沙美は確かにそう思った。  最初に目に入った天井が真っ白で、亜沙美は自分がどこにいるかわからなかった。 「どこ?」と、天井に疑問を投げかけた。 「亜沙美!」  母親から、名前を呼ばれ、顔を覗きこまれた。 「お母さん……」  なぜ母親が目の前にいるのかがわからず、亜沙美は余計に混乱した。母親の涙が、亜沙美の頬に落ちてきた。 「良かった。看護師さんを呼んでくるからね」  自分が病院にいることがわかり、亜沙美は、

        【完結】【創作大賞2024 ミステリー部門】『ノイズキャンセラー』あらすじ&目次 

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          ノイズキャンセラー 第十五章

          第一章はこちら 第十五章  ベガとのやり取りが途切れて、一週間以上が経つ。  最後にメッセージをもらった日に、ベガが、本当に佐藤亜沙美を監禁したのがわかった。  佐藤亜沙美が拘束された状態の写真が送られてきた。セーターをまくり上げられて、下着が見えていた。  自分の思い描いた通りにことが進んでいる。  琢磨は、そのうち、佐藤亜沙美の『ハメ撮り』も手に入るに違いないと、異様な達成感を味わった。  あの時、ベガが、佐藤亜沙美が琢磨の性器を見たがっていると言ってきた。そんなはず

          ノイズキャンセラー 第十五章

          ノイズキャンセラー 第十四章

          第一章はこちら 第十四章  三時近くなり、新山は芹沢の遺体処理をいったん中断した。その頃には新山の感覚はかなり麻痺していた。遺体のある浴室で、自分の汗や、跳ねて体についた芹沢の体液を洗い流すことにした。  新山は、脱衣所に出た。服を脱ぎながら、腕に浅い切り傷があることに気づいた。すでに血は止まっていて、傷のまわりには乾いた血液がはりついていた。爪でこするとポロポロと剥がれ落ちた。  新山は、とにかく疲れていた。少しは寝ないと明日、仕事へ出られなくなる。  裸で、浴室に戻る

          ノイズキャンセラー 第十四章

          ノイズキャンセラー 第十三章

          第一章はこちら 第十三章  亜沙美は、フォローアップ期間が終わった後のことを随分心配はしていたが、実際、ひとり立ちをしてみると、とくに問題も起こらず一週間が終わった。釣りの仕掛けが届かなかった新山という客が細かな質問をしてくれたおかげで、曖昧だったことが明確になっていたのもある。新山は、声を荒げることはなかった。対応中は辛かったが、思い返せば、あれは『苦言』というものだ。  芹沢が隣にいてくれたことで、甘えがいくらかあったのかもしれない。これからは、ひとりでしっかり対応し

          ノイズキャンセラー 第十三章

          ノイズキャンセラー 第十二章

          第一章はこちら 十二章  新山は、里村の家にいた。また、マリアのティールームに通された。里村が紅茶を用意するのを待つ間、前回より、かなり冷めた目でマリアをみつめていた。マリアは違う服を着せられている。ワイン色のビロードのワンピースで、白い肌が一層際立って見える。この服も里村の自作なのだろう。  牧野から『遠慮がち』と言われる新山でも、銀行に成果を渡す気はなかった。念のために、自社の変額保険のパンフレットと設計書も持って来てある。契約した保険の予定利率は変わらなかった。契約

          ノイズキャンセラー 第十二章

          ノイズキャンセラー 第十一章

          第一章はこちら 第十一章  芹沢とは業務以外の交流もなく、フォローアップ期間の最終日になった。  来週からは席も離れる。芹沢は次の期間はブラザーをせず、ヘルプラインに入るらしい。ヘルプラインは、全担当者が、わからないことを訊ねるチームだ。権限を超えるクーポンを発行する時にも連絡を入れる。 「ヘルプラインは人数が少ないから、僕につながるかもよ」  フォローアップ期間が終わるのは寂しかったが、同じ会社にいればまた顔を合わす機会はある。亜沙美は、独り立ちした後も続けられるように

          ノイズキャンセラー 第十一章

          ノイズキャンセラー 第十章

          第一章はこちら 第十章  ベガはどうやら、佐藤亜沙美の部屋への侵入に成功したらしい。  箪笥の引き出しの中に並ぶ下着の写真があがった。パステルカラーのブラが五つほど映っている。画像を拡大して柄をチェックする。花の刺繡がしてある。佐藤亜沙美のイメージそのままの下着だ。つけているところを想像しやすいので、琢磨は満足した。  クローゼットにかけてある服の写真もある。前に、本人が着ていたベージュの上着と同じものがかかっている。佐藤亜沙美のもので間違いなさそうだ。  他人の家にばれ

          ノイズキャンセラー 第十章

          ノイズキャンセラー 第九章

          第一章はこちら 第九章  新山は、月曜日の定例ミーティングの後、牧野に時間をもらっていた。  牧野からの提案で、別階にある会議室で話をすることになった。数十人ほどの小規模なセミナーなら、この部屋で開いている。  里村は午前中に銀行に行くと言っていた。今日の適用レートは十時過ぎには決まる。今のところ、金曜のレートから数十銭しか動いていない。里村の契約で今月はいったん乗り切れる。新山は今、保障性の保険の見込みが乏しかった。しかし、来月も再来月も成果をあげていかなければ、次の査

          ノイズキャンセラー 第九章

          ノイズキャンセラー 第八章

          第一章はこちら 第八章  エレベーターを降りたところで芹沢と別れた。休み時間は残り少ない。  休憩室に入ってすぐに琴美を見つけた。琴美は口を尖らせながら、「もう、休憩終わるでしょう? 帰りにお茶に付き合ってよ」と、言った。  亜沙美が「お茶ね、わかった」と返すと、満足げに笑った。機嫌を直してくれたようなので、亜沙美は私物をロッカーにしまいに行き、コール室に戻った。  午後、亜沙美は芹沢から、習熟度の確認を兼ねた講義を受けることになっていた。ミーティングルームにノートパソコ

          ノイズキャンセラー 第八章

          ノイズキャンセラー 第七章

          第一章はこちら 第七章  琢磨のSNSのアカウント名は『オーバーナイト』だ。榊原夜斗を超えるという意味をもたせている。  琢磨はSNSのダイレクトメッセージ機能をつかって佐藤亜沙美のストーカー『ベガ』に接触した。更新を楽しみにしていることを伝えた後、『あさみんって、佐藤亜沙美さんですよね』と、付け加えた。  メッセージに既読はついたが、その日は返信はなかった。その代わりに、ブログの記事がすべて非公開にされた。琢磨は焦った。刺激したことでベガがブログをやめてしまうと、佐藤亜

          ノイズキャンセラー 第七章

          ノイズキャンセラー 第六章

          第一章はこちら 第六章  新山の勤めている外資系の保険会社では、『商談のロールプレイング』が頻繁に行われる。新山は、ロープレが好きではなかった。牧野から、毎日、一回はするように言われている。それも、できるだけ『オンカメ』でと。『オンカメ』とは、ビデオ撮影をしながらのロープレのことを指す。  今日新山は、先月デビューした新人の北見に、ニーズ喚起の話法をみせることになっていた。  別の班だったが、牧野から頼まれた。北見と同じ班のベテランの須藤までが来ていた。須藤は個性的な色の

          ノイズキャンセラー 第六章

          ノイズキャンセラー 第五章

          第一話はこちら 第五章  芹沢の指導のもと、亜沙美は一段階上のカテゴリーを案内するトレーニング期間に入った。  今までは注文前と発送前の問い合わせのみを受けていたが、追加で配送に関する問い合わせを受けるようになった。配送中にできることは少ない。  大手の宅配業者の荷物の追跡サイトを使って、現状を案内することがほとんどだった。  送り先の住所を間違えたという連絡は、対応してくれない業者が多いので、配送停止を依頼し、顧客へは正しい住所あての再注文を依頼する。  亜沙美の勤める

          ノイズキャンセラー 第五章

          ノイズキャンセラー 第四章

          第一話はこちら 第四章  琢磨は、雨戸をしめきり換気もほとんでしない部屋で生活していた。蛍光灯がちらつき始めた時から電気はつけていない。パソコンのディスプレイが唯一の光源だ。ディスプレイは二台置いてあるが、机の周辺がぼんやりと照らされる程度だ。琢磨のパソコンは、ネットサーフィンをして過ごすには過剰なスペックだった。二年ほど前に、琢磨は少し前向きになり、自宅で動画編集の仕事をしたいと言いだしたことがあった。高校を中退していても、引きこもりでも、インターネットの仕事ならできる

          ノイズキャンセラー 第四章