除草は続くよどこまでも
1. なぜ田んぼの除草が必要か
5月末の田植えから1週間ほど経ち、毎年恒例の除草期間が始まりました。
そもそも田んぼって水が張ってるのになんで除草が必要なんですかね?
上の写真を見ても、稲以外の草は特に生えてなさそうに見えるのですが・・・
でも、除草後の水面の浮遊物をよく見ると・・・
こういうのが実は水面下にいっぱい潜んでで、除草をしないとこいつらがすくすくと成長して・・・
こんなになったり、サイアクなのは、
こんな状態になったりします。ちなみにすぐ上の写真で解説すると、下の赤く囲った株が稲ではなく、稗(ひえ)という同じイネ科の草です。
というわけで、なぜ田んぼの除草が必要かといえば、稲以外の草が繁茂してしまうと、稲の成長が妨げられ、収量(お米の量)が減ってしまうからです。
なので、田植えから1週間後、約1ヶ月間掛けて、毎週のように人手を掛けて除草をする必要があります。
除草が必要なことは分かってもらえたと思いますが、次の疑問。
お米を作っている農家さんがみんなこんなことやってるの?!
答えは「NO」です。
正確なデータはないのですが、農水省のHPなどから推しはかると作付面積の90%以上では除草剤を用い、田植え後にそもそも草が生えないようにしているようです。
そりゃそうですよね。担い手が減って、ただでさえ忙しい農家さんが、田んぼの除草にそんなに手間を掛けていられないですよね。
手間を掛けた分を価格に転嫁できるならまだしも、お米の値段って全体傾向としては低減気味なので、掛けなくて済む手間は掛けないのが道理。
2. なぜ除草剤を使わないのか
ではなぜ私たちがやっている田んぼでは除草剤を使わないのか?理由は3つあります。
田んぼに集まる生き物の多様性を守りたい
外から異質なものをなるべく田んぼに持ち込まない
内省の時間を大切にしたい
理由の一つ目は、4年前から耕作している農業復業化プロジェクトの田んぼである程度実証されつつあるのですが、除草剤を使わずに田んぼを維持することにより、近年普通の田んぼでは見かけることが少なくなってきた希少水生昆虫が多く生息する環境になるということ。
人間が口にする稲には除草剤の薬害の影響はないと一般的には言われていますが、水生昆虫にとっては棲みづらい環境なようです。
理由の二つ目は一つ目と関連しますが、労力はかかっても、代替手段(手除草)があるのであれば、その場所にあるものを中心に田んぼを維持したいという思いがあります。なるべくシンプルな農ライフにしたいということです。
ちなみに除草剤を使わない除草は、有機栽培では一般的に行われていますが、我々のように手で除草する手段以外にも色々テクノロジーは発達してきています。
例えば下の写真。某農機メーカーが出している乗用の除草機です。これだと条間(稲が植っている縦の列の間)と株間(稲が植っている列の稲と稲の間)を両方同時に除草することができます。お値段は3桁万円!
次に紹介するのがエンジン式で手押しする除草機。この方が手でゴシゴシするよりは確かに早いのですが、条間は除草できても株間はできません。
他にも最近では「アイガモロボ」や「ミズニゴール」といった、GPSを内蔵し、人が操作しなくてもある程度の除草・抑草効果をもたらす商品も数多く出てきています。でもまだまだ開発段階にあるようで、費用対効果がどこまであるか?は諸説あるようです。
というわけで、除草ができる農機具は色々あるものの、我々がやってる面積のレベルであれば、手でやっちゃったほうが早いんじゃない?!ということで、ひとまず今年は手で除草しております。
最後はちょっと回りくどいんですが(苦笑)、除草してる時って、黙々と作業するんですが、単純作業でもあるので、割と頭の中は色々な考え事をするんですよね。最近起きた出来事とか、なんかモヤモヤしてることとか、少し前に思いついて忘れてたアイデアがムクムクと蘇ってきたりとか・・・
これ、いわゆる「内省の時間」だな、と。里山の自然の中で、田んぼの中に足を突っ込んで、ゴシゴシと草を取り、達成感を得つつ内省ができる時間って、結構貴重だな〜と。
3. 田んぼの除草は究極の農コワーキング
色々と手で除草することの意義を書き連ねましたが、本音を言えば、やっぱり除草って大変です。
今年新たに仲間3人で借りた2反(約2,000平米)ほどの田んぼで表現すると、片道50mの条間と株間2列分(50m x 2 x 2 = 200m)を除草するのに、大体1時間掛かります。条間は大体150列くらいあるので、1回の除草に必要な時間はなんと、75時間!!
これを田んぼを借りた3人だけでやると、一人25時間。まる1日やって3日掛かります。除草は田植え後から約1ヶ月間、毎週やるのがベストだとすると、1週間ほとんど除草だけしなければならないことに・・・(涙)
そこで「農コワーキング」です。要はご縁のある様々な人にお手伝いしてもらうのです。今回新しく借りた田んぼは、借主の3人以外に20名ほどのお手伝いを経て、なんとか最低限の除草を終えることができそうです。ありがとうございました!
かつて機械がなかった時代には、家族ごとの田んぼであっても、地域のみんな総出で手分けして除草をしてきたんだろうな、と推察します。
農業の担い手が更に減ると予想され、そんな状況下で上述のようなテクノロジーをフル活用することにより、効率的な除草がなされることがマクロ的には重要ですが、ミクロで見ると、一つ一つの田んぼを、地域を超えて、今まで田んぼに入ったことがない人、除草なんてしたことがないという都市から来た人たちも加わり、これも何かもご縁ということで一緒に守っていくというのも、それはそれで大事なことなのかな〜と思う今日この頃です。
最近内省が足りてないな〜という方は是非、田んぼの手除草をお勧めします(笑)。
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