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“Regenerative Farm” でいろんなものを「再生」する

このところ田んぼの除草作業が一段落し、目下夏野菜の手入れ・収穫に追われる日々です。
今回は X-Base佐久平の副題でもある、”Regenerative Farm” について少し掘り下げてみたいと思います。

“Regenerative” という言葉は近年様々なところで目にすると思います。
農業分野で言うと「環境再生型農業」を指すことが多いです。
雑誌 WIRED では、”Regenerative” を

持続可能を目指した「サステナブル」に対し、「リジェネラティブ」は自然環境が本来もつ生成力を取り戻すことで、再生につなげていく概念

と位置付けています(https://wired.jp/article/the-regenerative-company/)。
加えて同誌では “Regenerative Company” という定義で、経済活動を通じて人々のつながり、社会、生態系、経済システムを再生する企業やムーブメントに注目しています。

X-Base佐久平では “Regenerative” を、

農的な営みを起点に、いろんなものを「再生」すること

と位置付けています。
それを実践する場がX-Base佐久平であり、”Regenerative Farm” であると考えています。ではどんなことを「再生」するのか。大きく3つあると考えています。

1. キレイゴトをジブンゴトへ〜生産者と消費者の関係の再生

まずは、生産者と消費者の関係性を「再生」したいと思っています。

・生産者に対し正当な対価を支払う
・担い手が減っている農業を支援する
・食料自給率を上げる、食料安全保障を考える

昨今こんな主張が書籍やウェブ記事で散見されますが、これってみんな理屈では理解できるけど、絵に描いた餅、「キレイゴト」じゃないの?って思ってませんか?なんかリアリティーがないというか、「ジブンゴト」にならないというか・・・

それはなぜでしょう?

私は、生産者と消費者が、あまりにも遠い関係になったからだと考えています。

日本の都市生活者は1950年代までは約5割でしたが、2022年時点で9割を超えました(https://population.un.org/wup/Country-Profiles/)。
また、日本の農業就業人口は2023年で116.4万人。人口の1%以下です。

農産物に関して言えば、99%が消費(のみをする)者であると言えます。
これでは消費者に生産者の気持ちを理解しろと言ってもしようがありませんし、逆に生産者も消費者との距離が遠くて歩み寄れません。

コロナ禍の影響もあり、産直ECが急速に伸びたり、二拠点生活で地方と都市を行き来する人が増えたり、都市部でも家庭菜園を始める人が急増しましたが、これらはあくまで「消費者起点」での変化であり、生産者と消費者という根本的な垣根を越えるムーブメントにまでは至っていないのではないでしょうか。

ではどうするか?

消費起点ではなく、より生産に近い地点で、生産者と消費者が交わることにより、消費者が農業生産の現場に近づき、生産物をいただき、生産者の思いを体感し、生産者を心と身体で応援するような関係性がつくれないか?

そのためには、生産者、そしてその生産者がいる地域に「ご縁」があれば、
生産者と消費者はもっと有機的・持続的に繋がれるはず。
その「ご縁」を、地縁・血縁・生産者と消費者という枠を超えて紡ぐ。これを生産者と消費者の関係性の再生と捉えています。

シグマクシスグループという企業のプラットフォームをベースに、グループ社員であり長野県佐久市に「ご縁」があり、自らも畑を耕し仲間と田んぼをやっている私がハブとなり、X-Base佐久平を生み出した背景がここにあります。

生産者と消費者がX-Base佐久平を通じて近づく

X-Base佐久平を立ち上げる前にも、私が佐久でやっている農的な取り組みが面白そうだ!ということで、シグマクシスグループの有志社員や私の友人が何度となく佐久を訪れ、共に農作業に励みました。
それはそれで友達の輪が広がって面白かったのですが、この輪をもっと広げられないか?と思いたち、企業を巻き込んだ取り組みにしてみました。

シグマクシスグループという企業が、X-Base佐久平というプラットフォームを形成したことにより、生産者や地域の事業者はより安心して地域外からの消費者を受け入れることができ、消費者は農への興味があれば、ツテがなくても生産者や地域の事業者と、単なる「消費」の枠を超えて交流し始めました。

生産者の畑を訪問するシグマクシス社員

X-Base佐久平に参加した社員からは以下のようなコメントが寄せられました。

  • こうやって食べ物は作られているという、忘れがちなことを気づく機会だった

  • 土と触れるのは、何か生と触れる経験だった

  • 農作業を経験することで食文化の理解が進んだ

  • 食べ物をつくる、交換する、調理する、シェアすると、食べ物を中心に地域がつながっていると理解できた

  • 日ごろ消費者として食べるだけの生活は全く当たり前ではないと、身体で知ることができた

2. 風景をつくる〜原風景の再生

二つ目は、農村にあった原風景を「再生」するという意味合いです。

現在日本に耕作放棄地(以前耕作していた土地で、過去1年以上作物を作付け(栽培)せず、この数年の間に 再び作付け(栽培)する意思のない土地)は42万ヘクタールあるそうです(農水省調べ、2020年時点)。どのくらいの面積かというと、福井県全体の面積と同じくらいです。

風景とは、地域に暮らす人たちの長年にわたる日々の営みの積み重ねでつくられてきたものです。
農地で言えば、生産者が自らの農業生産の傍ら、周辺道路や田畑の周りも含め、定期的に草を刈り、農村風景を維持してきました。

農業の担い手は減り続けており、そんな中で農業生産を継続している生産者の負担は増えるばかり。農作物を育てていなくても、農地を維持するために春と秋にトラクターで耕し、定期的に草刈りをする必要があります。自分で所有する農地が高齢のために草刈りができなくなると、地域のJAや民間の会社にお金を払って草刈りをしてもらわなければなりません。

せっかくご縁があって田畑をお借りするチャンスがあるのであれば、我々も農作物をつくって、元々あったような原風景を少しでも甦らせよう!

一昨年までのRegenerative Farm の「原風景」
再生から2年目のRegenerative Farm

私も自分で田畑を借りてみて痛感しましたが、梅雨時から夏場はひたすら草刈りをしています。お陰で野菜の栽培技術よりも草刈り機の操作技術が日々向上しています(苦笑)。

原風景を維持するのは一筋縄ではいきません。

3. 生きるチカラを身につける〜身体性の再生

3つ目は身体性の「再生」。

X-Base佐久平で農作業に参加した人々を見ていると、田植えや除草、種蒔きなど単純で辛い作業であっても、誰もが作業が終わった後は溌剌として、達成感を全面に出した顔つきをしています。

田んぼの除草をして満面の笑み?

これは、普段デスクワークがほとんどの弊社グループ社員にとって、屋外で、しかも自然環境に包まれて体を動かし、汗を流したことの結果だと思いますが、それだけではないように思います。

にんにくの植え付けは、実はスクワットの連続

You are what you eat : 食べることは生きること

農作業は「食べる」を生み出す仕事であり、そこに一時でも携わることにより、「食べる」前から自らに「生きる」チカラがみなぎり、心身ともに充実感が得られるのではないでしょうか。

X-Base佐久平の取り組みを通じ、以上3つの「再生」をしていきたいと考えています。


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