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『平凡パンチの時代』 第四章 野坂昭如と三島由紀夫


本書の前身にあたるマガジンハウス編の『平凡パンチの時代』が出版されたのは平成8(1996)年の12月のことである。実は、あの本はわたしがひとりで企画を立て、取材し、編集・執筆したものだ。もちろん、わたしはそのころ、マガジンハウスの社員編集者だった。
この『平凡パンチの時代』という名前の本を作ろうという話が持ち上がったのは、正確に記憶しているわけではないが、平成6年の暮のことだったと思う。最初、「来年はマガジンハウスも創立五十周年だから、ちょっとぐらいそれらしいことをやろうよ」というような話だった。せっかくだから昔話を社の正式な記録として残しておこう、ということから始まった企画だった。
それまでも、創立35年、40年などの節目でマガジンハウス(平凡出版)はそういうものを作ってきていたのである。そのとき、わたしは書籍編集部に籍をおく編集者だったのだが、少なくとも、わたしは上司からそういうふうにいわれて、この本の編集・執筆を担当した。当時の書籍の担当局長は『ダカーポ』の編集長を長く務めた棚橋芳夫だった。棚橋からは「男っぽい話をいっぱい集めて、面白い本を作ってくれよ」といわれた。同席していた林部長が「そうだよ、塩チャン、やろうぜ」と相槌を打ったのである。

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