寂しい、と孤独は、それぞれ心のほかの場所にあって

寂しいと思う気持ちと、孤独というのは別の感情だと思っている。
寂しさも孤独もなくなることはないが、寂しさを紛らわすことは可能だ。
誰かに会う、買い物をする、趣味に没頭する。
方法は人それぞれ違うが、その時だけ寂しさは紛れる。
「寂しくしている自分」を忘れることができる。
さびしさ、というのは物や人や欲望など、ある対象物を志向する。
寂しくしている自分は、何かを志向することで寂しさを紛らわしたり打ち消したり（それは「楽しくなるから」であって「ひとりでなくなるから」ではない）して、その時間をやり過ごす。寂しさをなんとかしようとするということは、外へ向かって関係性を作ろうとする行為でもある。
寂しさ、は他者と密接に関わる感情だ。

孤独、というのは少し違う。
友達と話している時でも、恋人といる時でも、家族といる時でも孤独というのは消えない。寂しい、恋しい、みたいな感情とも少し違う。
むしろ孤独でいることが心地よいこともある。こんなにもたくさんの事象に囲まれていながら、どこまでも自分はひとつの自分でしかない。時にそれを嫌悪し、ときにそれを誇らしく思う。自分が他の誰とも違う自分であること、世界に一つしかおらず、死ぬまでそれは変わらないということ。
孤独、というのはどこまでも自分であって、他者の介在を許さない感情だ。
寂しさが暗闇から必死に伸ばす手だとすると、孤独は暖かい闇の中で眠る自分自身だ。

似ているようで大きくそれは異なる。