2月27日

 日記の訓読は、「日ヲ書ク」ではなく、「日ニ書ク」と考えなければ、継続は難しい。一日を描写するのではなく、一日について、何でもいいから書くのだ。なぜなら、一日に描写すべきことなど、そう毎日あるものではないからだ。日記のスタンスは人に依るけれども、私はとりあえずなんか書く、一行でもいい、と仮に決めている。

 ジュンパ・ラヒリ「停電の夜に」(新潮文庫)を読む。停電の一時間に語られる夫婦の記憶。冷え切った関係、塞ぎ切った日常がふとしたきっかけで動き出していくのがよい。料理、というディテールが随所に挿入されるのも印象的だった。具体名を出されても想像もつかないインドの郷土料理が、翻訳文としての妙味を添える。静かな夜にぴったりの作品である。