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雜記

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思考以上言明未満のものたち
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2021年4月の記事一覧

有り体に言えば空白だった

 必要なものがあった。それは考える時間のような忍耐強い空白だった。雨が降っていればなお良かった。雨は時間とか思考とかいったものを押し流してしまう。  世界が刻々と変化している、という感覚があった。それは、自分だけが変わらず置き去りにされている、という感覚でもあった。どこにも行けない、何もできないという閉塞と停滞は、物理的ではない重さをもってぼくを圧した。  悲しくはない。怒りもない。いま僕に在るのは有り体に言えば空白だった。感情の隙間にあるどうしようもない空白は、人生みた

エピタフ

 孤独は、過去の影の上に立つ。今、ひとりでいることはそんなに問題じゃない。問題なのは、過去にひとりではなかったという事実だ。あなたが過去に、何を知っているかによって、あなたは欠乏し、欲望することになる。あなたがもし、親に愛されたなら、それが欠けた瞬間に、その欲望が可視化される。あなたがもし、恋人と愛し合うことを知っていたなら、恋人の不在は愛の不在になる。  孤独は、過去の影の上に立つ。あなたが今孤独であると感じるなら、あなたをひとりにしたものは何か。不在と分断の中から湧き上