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あの日からわたしはずっとどこかが狂っている。いろんな言葉をぶつけたと思うしぶつけられたと思うけれど、その辺の記憶はもやがかっていて不明瞭だ。「ああ、今わたしは傷ついたな」とそのとき強く思った台詞だけが、心の中にずっと残っていて未だにわたしを「被害者」らしく仕立て上げる。その度にわたしは思う、傷つけたのも傷ついたのもお互い同じはずなのにどうしてわたしは被害者の顔をしようとするのだろうか。けれど、間違いなくわたしの心はずたぼろになって、ずっと濁ったままだから、わたしは被害者であることには間違いないのだ。そうしてきっと、確かめてはないけれど相手もぼろぼろになっただろうから、わたしは加害者でもある。人間がそれぞれ向き合って涙を流しながら、気持ちの問題について叫んだり謝ったりしているときなんて、両者が加害者になって被害者になるものなのだ。でもわたしはいつも、自分の傷や悲しみにを見ることばかりをしてしまうから自分が加害者であったことを受け入れているようで受け入れられていない。

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