うちの妹

ろきちゃんには、学年で言うと2個下の妹がいる。まぁろきちゃんが浪人したせいで学年で言えば1個下になってしまったのだが。妹はそのことが少し嬉しかったらしい。結果的に、小中高が一緒だったので、特に高校では妹はろきちゃんが入部していた野球部にマネージャーとして入部してきたので、兄妹にしては割と一緒にいることが多かった気がする。良いのか悪いのか。でも、炭治郎と禰󠄀豆子のような兄妹愛はない。

妹がいるということで恩恵を受けることもあった。妹が1年生として入学してくると、え?あれ、ろきちゃんの妹?となって普段喋らない女子とかにも、うわー似てるー可愛いーとか話しかけられる。もちろん、妹も妹で恩恵を受けている。ろきちゃんの妹って事で、よほど変じゃない限りは、可愛がられる。妹は、その学校に兄ちゃんがいるという、天の利、地の利を存分に生かしてろきちゃんの同級生達に可愛がられていた。そう考えると、中学生、高校生の頃のろきちゃんもまあまあ人気ものだったのかもしれない。だって、イマイチな兄貴の妹には、いくらなんでも話しかけないはずだ。

高校生になり、妹も野球部に入部するとなると、いよいよ奴は可愛がられる才能の本領を発揮し出す。妹は、兄であるろきちゃんが言うのも憚れるが、これの妹の割には整った顔をしている。それに、妙に礼儀正しく、抜けていて、他人からすれば可愛がられるのもそれなりに納得できる気がする。(まぁ妹が高校野球に興味を持ったせいで、当のろきちゃんは、妹の目の前で三振をする、エラーをする。妹の目の前で背番号を貰えない。年端も行かない当時のろきちゃんからしてみたら、まさに青天の霹靂だった。)

どう考えても、ろきちゃんよりも生きるセンスのある妹に兄妹特有の嫉妬をしていたのかもしれない。高校時代は、まともに話をしないどころか、妹が勉強をしていないとかダラダラしてるとかに腹が立って余計なことを言って、よく喧嘩していた。でも、ろきちゃんが実家を離れて、家族となかなかコミュニケーションを取る機会が無くなってから、妹とはよく喋るようになった。去年のろきちゃんの誕生日には、猫のLINEスタンプをプレゼントしてくれた。初めて妹から誕生日プレゼントを貰った。

そんな妹だけど、ちょっとろきちゃんの理解の範疇を超えている。まだ覚えている。ろきちゃんが中学生になるかならないかぐらいの時、妹がバリバリに小学生の時、言われた。
「兄ちゃんは私がお母さんに怒られてる時どう思う?」
「え?いや、気分は良くないよ」
そう返したら
「私は兄ちゃん怒られてると嬉しい!!」
と言われた。ビックリした。小学生の妹から「君が怒られてるの嬉しい」と言われるとは思わなかった。最近、車の中から横断歩道を渡っている人に手を振ったり、危ない歩行をしている人に「轢かれないと思うなよ!」と言ったりしていて、ビックリしたのだが、その片鱗は確実に大昔からあった。

年だけ、着実に重ね、ついに妹も絶賛就活中だ。妹は、大学入試の時、Fランクと呼ばれる滑り止めの大学に落ちた。結構勉強苦手なんだ、こりゃ浪人なりすることなるなーと気を遣っていたら、それなりに名のある国立大学には合格していた。何だよそれ。あの大学に落ちてそこ受かるやつ聞いたことないよ。うちの妹は奇跡みたいな子だ。この前妹から
「いつまで親のスネかじってるんだ」
と言われた。そのうち、奇跡の妹からお年玉でも貰うようになるかもしれない。

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