【モノガケラ】スポーツ漫画でよくあるシーン【掌編】

これはとある物語の小さな欠片

この一小節のお話は、

どこから始まりどこに行き着くのか

それは貴方の想像次第……?




「これで菅高は予選Aブロック突破、
   全国行き決定か……いいねぇ。
   本戦で当たるのが楽しみだ」

全国大会予選Aブロック決勝。

接戦を制し初めて全国への切符を手にした
白いユニフォームの選手達が勝利に乱舞する。
客席にはそんな選手たちを見つめる
二人の男子生徒の姿があった。

「まるで我々がすでに全国行きを
   決めたかのような物言いですね。
   Bブロックの決勝は午後からなのですけど」

暗めの紅色を基調とした
ブレザーの制服を着ている二人。
明るい金髪の男子に対し
黒髪メガネの男子が釘を刺す。

「もう何言ってるのメガっち。……
  すでに勝ち確だよ。相手がどことか関係なし。
   黒帝に負けはないよ」
「この世には『窮鼠猫を噛む』
   という言葉があります。
   たとえ格下が相手でも油断は禁物です」

金髪の男子が言葉と瞳に王者の獰猛さを宿す。
一方、メガネの男子は変わらず冷静沈着に、
しかし慇懃無礼さを持ちつつ返す。

「ホントまじめだねぇメガっちは。
   で、そんなメガっちから見てどう?
   菅高の子たちは」

突然の問いに、メガネの男子はレンズ越しに
なおも喜びを分かちあっている選手達を
見つめながら答え始める。

「組織力という点においてはまだまだですね。
   あれでは本戦の初戦から厳しいでしょう。
   ですが、個々のポテンシャルと
   そこから生じる爆発力は侮れません。
   あちらも自覚はあるでしょうから、
   本戦までにパスワークなどの
   連携を強化してきたとしたら……」
「可能性はあるか……いいねぇ。
   このボクが目をつけたんだ。
   そうこないと面白くない」

フィールドを見つめて
ニヤリとほくそ笑む金髪の男子。
その表情は獲物を前に
舌なめずりする獅子のようだった。

「佐藤に長谷部、ここにいたのか。
   キャプテンが呼んでるぞ」

通路から会場へ出たところで
坊主頭の男子が二人に声を掛ける。
彼もまた暗い紅色のブレザーを着ていた。

「分かりました。では行きましょうか」
「ハイハイ」

席を立ち会場を後にする。
その最中、金髪の男子は
改めてフィールドにいる選手たちを一瞥した。

(ボクたち相手にどれだけ抗えるのか……
   楽しみにしてるよ。菅高のカラス君たち)