【会話劇】適当ノート【滴燈堂は暇すぎる】

【簡易設定資料】

滴燈堂
都内某所にある喫茶店。客が来るのが一つの奇跡

塚越四可(つかごしよつか)
滴燈堂の店長。彼女もまた変わり者

川中六巳(かわなかむつみ)
滴燈堂の店員。根は割と普通の女の子

???
ここでは詳しく語れない人。ただし秒でバレる


「店長。倉庫の整理してたら
   こんなの出てきたんですけど………」
「あら懐かしい。
   先代が暇潰しに使ってたノートじゃない」
「先代……それって店長が
   まだバイトしてた時の?」
「そうそう。お客様がいない時に
   適当に思いついた言葉をそのノートに
   書いてたのよ」
「いない時って……それいつもですよね?」
「まぁそうなんだけれど」
「……店長。このノートって
   中見ても大丈夫ですか?」
「大丈夫よ。さっきも言った通り
   先代が思い付いた言葉を適当に
   書いてただけだから」
「どれどれ……」


ペラッ


貴方のクマはどこから?私は登別から!


「……なんですかこれ?」
「だから言ったでしょ?
   その時に思い付いたのを
   ただ書き散らしてるだけなのよ」
「本当に脈絡なく色んなこと書いてますね……」


ペラッ


「あれ?これって………」


勉強とは知識を得るためにするモノ
知識とは人生を豊かにするモノ


「先代ってこういう言葉も
   書き残してるんですね」
「私が言うのもなんだけど、
   すごく変わった人だったわね。
   基本いい加減なのに変なところで
   真面目になったり。
   実は結構博識で色んな面白い話を
   してくれたりしたのよ」
「へぇー。私も会ってみたかったなぁ……」
「あら。貴方も1回見かけてはいるわよ?
   ほら、面接で来た時にお客様が
   おひとり居たでしょ?あの人」
「えっ……ウソ、本当に?
   あのお爺さん先代の店長だったの!?」
「そうそう。私に店を継がせてから
   しばらく音沙汰無かったんだけど
   あの日は何故か急にお店に来てね。
   面接が終わってみっちゃんが帰った後……」




『また素敵な子が入ってきたな。
   これでお前も寂しくなかろう……』




「……て言ってたわね」
「まってごめんなさい……少し泣きそう……」
「えっ……ちょっとどうしたのよいきなり」
「だって店長……
   前にも少し言ってたじゃないですか。
   このお店を継いでから私が来るまでは
   ずっと一人でお店を開けてたって……」
「あぁー……たしかにその通りね。
   ここって本当にお客様が来なくて
   他に店員もいないから
   一人の時間が沢山あって……
   寂しくなかったと言えば嘘になるけど」
「グスッ」
「あーもうほら本格的に泣かないの。
   ほら、今もしもお客様が来たら
   ビックリしちゃうでしょ?」
「来ないから大丈夫です……グスッ」
「泣きながらとんでもないこと言うわね。
   まぁ事実だけど……
   ほら、ココア用意してあげるから
   それ飲んで元気出しなさい」
「分かりました………」


ー終わりー